中にて



「あいつらは、一体何をしてるんだ?」

 呆れたような顔で、魔夜が窓から庭を見ているのを、正面のソファに座り、膝を組んで、凛は眺めていた。一人用のそのソファは、この部屋における凛の定位置だ。

「まぁ両想いになった直後っていうのは、何歳になっても嬉しいもんだろ?」
「ほう。凛もそうだったのか?」
「おう。魔夜を手に入れた瞬間は、いつだって歓喜に震えるぞ?」
「その表現は正確なのか?」
「ん?」
「俺の心はいつも、お前がどの生であっても、お前にあるんだぞ?」
「ああ、知ってる。確かにそうである以上、正確ではなかった、が――……ついこの間まで、俺が血縁……実の息子だと気にしていたのは誰だ?」
「事実だろ?」
「傷ついた」
「凛。俺はお前がそんなに軟弱で繊細な心の持ち主だとは知らなかったが?」
「冗談だからな」
「だろうな」

 窓から振り返り、魔夜が、凛の正面の席へと移動する。二人の間のテーブルの上には、アイスボックスクッキーと、チョコレートがある。

「しかし俺も甘くなったな。あいつらを輪廻の理から外してまで助けるなんて、な」
「うそをつけ。初めからそのつもりだったくせに。そしてあと二人――そうするくせに」「総視神様はお見通しだな」
「そうでなければ名が廃る」
「本当は他にもう一人、そばに置きたい者がいる」
「俺だろう?」
「ああ、そうだ。だが凛は、『今回』も、人として死ぬんだろ?」
「さぁ? どう思う?」
「期待を持たせるな」
「なぁ魔夜」
「なんだ?」
「今度こそ――今回こそ、もうお前を手放さん。ずっとそばにいてやるよ」
「!」
「だから、安心して、あいつらの事も祝福してやれ」
「べ、別に俺は、あいつらに嫉妬していたわけじゃ――……なくはない。そ、そうか。約束だからな?」
「おう。約束だ」

 ――なお。
 この約束は、守られる。