【75】計画(★)
目を覚ますと、先生が既に起きていて、私をまじまじと見ていた。
気恥ずかしくなったとき、煙草を渡された。
朝(?)の挨拶をし、お礼を言って受け取ると、また火をつけてくれた。
「胸の色が赤くなるか試してみる?」
「え、あ、はい!」
こうしてその日は、ずっと胸を弄られた。
おかしくなりそうだと思い始めた頃、指の動きが変わり、緩急をつけられた。
私は胸がこれほど感じるとは知らず、涙した。
それだけで濡れていた私を、今度は先生が舐め始めた。
耳の奥も、首も、気づくと様々なところを舐められて、太ももを舌でなぞられた時は、思わず悲鳴を上げた。
「うあああ」
そのまま、じっくりと蕾を舐められたのだが、なぜなのかイけない。
今まで知らないほどの刺激なのに、イけない。
腰が勝手に動くのが止まらない。
泣き叫びながらずっと焦らされ、ようやく入れてくれたと思ったら、動いてくれなかった。何度もお願いすると、やっと気が遠くなるほどの時間が経ってから、ゆっくりと動いてくれた。耐えられなくて涙をずっと零していた。激しくされているわけじゃないのに息が上がる。そうされては動くのを止められの繰り返しの後、一気に激しく突かれ、私は気づくと記憶が無かった。気持ち良かったことは覚えている。
起きると先生が水をくれた。
静かに飲み、そのあと煙草を吸った。
するともう一方の手を取られて、ペアリングをはずされ、代わりに昨日パンフで見た指輪をはめられた。
「実物は気に入った?」
「本当だったんですか!? だってこれ、すごく高かったのに!」
「日本じゃ給料三ヶ月分なんでしょう? 結婚指輪はもっとかかるから、とりあえず婚約指輪をそのくらいにしたんだ」
「へ!? だって、あれ、3000万円とか、いやもっと端数が!」
「手取り一億二千万円くらいだし」
「手取りで!?」
「副収入を入れると三億弱かな、毎年」
「お医者さんとか大学の先生が儲かるって言ってもそんなに?」
「他にも、政宗くんとかとベンチャー企業三つ作って飽きたから役員になって、別の人雇って押し付けてたりさぁ、研究所を二つ作って、飽きてほかの人に任せてるところの収入とかね。社長と所長もやってる。副収入は、教科書とその他の書籍、あとは土地を含めた不動産収入と、特許」
「どれか一個でも十分じゃ……? へぇ。まぁ確かにあきっぽいとは言えますけど、良い方向で羨ましいです!」
「あはは。計画性0でも無いからね。結婚してって言ってきた人はまず最初に収入聞いてきたんだけど、結婚することになったのに聞かれないから不思議だった」
「私も三ヶ月分で何か買った方が良いですか? 通帳にそんなに入ってたかな……」
「別に良いよ。そういうのは気にしないで。基本、おごるのが好きなんだ。だから俺のために」
「ありがとうございます!」
「そうだ、シャワー浴びる?」
「はい!」
先生は既に浴びた様子だ。私も浴びたあと、用意されていた(!)バスローブを着て、外へ出た。先生は、本当になんでもしてくれるようだ。また、夕食(?)があった。これも先生の手作りだ!
「美味しいです! わー!」
「そう? 手抜き感満載でごめんね」
「グラタンって手抜きなんですか!? 家で作れることを知りませんでした!」
「これはラザニアっていうんだよ。グラタンも作れるけど」
「ラザニア!? 初めて食べました。へぇ!」
「マカロニみたいな平べったいのがラザニアって言うんだよ。他は具材」
「勉強になります! 先生といると常識が身に付きそう! 今までも思ってたけど」
「じゃあずっと一緒にいたら良いよ。いっぱい新しいこと教えるし」
「やっぱりその時代によって違いますもんね」
「そうだね。そうだ、君のご実家、行く日が決まったよ」
「え!? いつですか!?」
「行く日に言う」
「は、はい。いやそうじゃなく、いつ決まったんですか?」
「今朝寝る前、君がシャワー浴びてる間。その時指輪も注文した」
「早っ! 先生、あ、紫さん、本当に早いです!」
「敬語じゃなくていいよ」
「は、はい……出ちゃうかも」
「その内慣れてね。そうだ、新婚旅行とか行きたい?」
「へ? う、うーん。熱いところ! 南国です。暑いっていうより熱い感じ!」
「意外。なんで寒いところじゃないの? そういえば」
「海より雪の方が好きですけど、常夏は――何も考えなくてよくなる感じが好きです」
「へぇ。そういえば、俺の実家がどこかの熱い島国に家持ってるから今度行ってみる? 他の家族は行かないし。みんな最初に行ってあきてた」
「あはは。へぇ、すごいですね!」
「お金持ちっぽい島だけどね。スポーツはしないんでしょ? 一応そう言うのもできるけど、もっと他に楽しいところあるから、そっちにいこう。カジノとか。多分君、大得意」
「行ってみたいです!」
「うん。だから新婚旅行は、行くなら、別の国にしよう」
「はい! どこかお勧めはあります?」
「んー、住んでた国も色々あるけど、若い頃暇な時、世界一周の旅っていうのをしてみたんだ――あ、これにも政宗くんいたな。んー、そうだなぁ、俺は日本が良い。一番楽。近場でなんでも揃うしさ、そこそこなんでも美味しいし」
「とすると、京都とかですかね?」
「あー、国内旅行か。考えてなかった。悪くないかも」
「どこ考えてたんですか?」
「親戚のいない国」
「あはは。なるほど、それは、良い考え方な気が。え、例えば?」
「ロシア込みで主要先進国とスイスと北欧とオーストラリアには、何人もいる。砂漠的な意味の暑さだと、エジプトにもいる。あと、国境なき医師団とやらで派遣されて出かけてみるやつが一定数いるから、いつどこにいるか分からない。紛争地域はね。治安悪いという意味でも、今回は除外。それと個人的に、アジアは韓国含めて二・三日いるとあきるから、あんまり行きたくない。日本が例外」
「地理が苦手なんですけど、ええと、あとは何が残ってますか?」
「上の方と下の方が全滅みたいな状況だからねぇ。そうだなぁ、ギリシャとか?」
「行ってみたいです!」
「じゃ、そうしようか」
「そういえば、私は先生のご両親とか御家族にご挨拶しなくていいんですか?」
「したい?」
「したくないですけど、結婚するんなら、したほうがいいと思うんです。きっとこれからもお会いすることがあるだろうし!」
「俺は会わせたかったから、そう言ってもらえると嬉しいけど。多分俺がお嫁さん連れて帰るとか言ったら面白いから全員即日予定を空けて集まると思うよ」
「何人いるんですか?」
「両親、それぞれの祖父母、曾祖父母、俺の兄弟姉妹が俺を抜いて六人、甥姪が今のところ十三人で、俺以外既婚だから、それぞれの配偶者、と、付いてきそうなそちらの親戚が五人、甥姪の子供が三人で五十四人が最低。絶対来る。増えることはあっても減らない。ほぼ全員が高IQのアレで、小さい子を除き、全員医師免許をいずれかの国で持ってる。全員日系で、時折配偶者が違うだけ。ただほとんどが日本人と結婚してるから、ほとんどが日本国籍取得可能だった。配偶者はアレじゃない場合がそこそこあるのに、なぜなのか子供はアレばっかりだから、おそらく君は君の父方遺伝でアレ頻出家系だし、俺たちの子供もアレだろう。あとねぇ、多分なんだけど文章っていうか言語の才能あるから、日本語もほとんどの人が話せるから、そばの奴が勝手に通訳する。分かんない人には」
「規模が違いますね……多い! それは、結婚式レベルじゃ……」
「式するとなったら、仕事関係者やら友人とやらをお互いに呼ぶので、何回かやるとしても、最低三百人は超えるよ。合計千人以上になるはず。式にしちゃっても良いよ。アメリカでやる形にして、君側は少数、俺側も仕事関係者はその都合で呼びませんでいく」
「なるほど!」
「けどまぁ、アメリカでやるっていったら、俺側の友人が来やすくなっちゃうから、やっぱり増えそう。多分ね、みんな君を見に来ると思う。誰一人として俺が結婚すると思ってないはず。上村でさえ想定外じゃない。少なくともこの話聞いたら、あの実験会場にいた奴ら爆笑すると思う」
「うう……」
「ちなみに広野くんは呼べるけど呼びたくないな」
「私も気まずい気がするので呼びたくないですけど、呼べるとは?」
「念のため外堀は埋めることにし、こうなる前にさ、医学的な意味で気まずくならないようにね、ちょっと仲良くなっておいたの。俺外面いいし、結構仲良しだと思われてる気がする。今じゃ相談受けるレベル。ちなみに君の従兄と奥田先生と、四人で呑み行ってきた」
「えー!」
「君の従兄までアレで吹いた」
「ええええ!」
「性格の方向性は違うけど、君よりは俺に近いよね、晶くん。世間を知ってる女好き」
「……」
「俺、すごい紳士なフリして、奥田先生に足を踏まれた」
「あはは」
「だから奥田先生は、俺に頼んでこなかったんだよね、多分。君の親御さんに連絡する前に、奥田先生に対策相談してみたの、結婚するって言って。そうしたら、そんな予感はしてたんだってボソっと言われてさ。なんでって聞いたら、君の話し合いで飲んだ時に、これ研究じゃなくて恋じゃないのって思ったんだって。言って欲しいよ、恥ずかしい」
「……」
「仲人さんは無難に高崎教授だな」
「なるほど……」
「君の地元でやる場合は、奥田先生でも良いけど」
「なんだか難しいですね」
「まぁ全部俺がやるから安心して」
その後、今度は激しく一回してから、再びシャワーを浴び、雑談した。