スイス天才教育総合機関【13】
こんな感じで日々を過ごし、僕達は無事に卒業して別れることになった。
アシェッドは僕と一緒に高認を受け、大学入学可能年齢までは、直接院で先に研究することになった。僕は家族にまず、東大に行きたい話と、原子力に関して専攻したいと伝えると、唯一の被爆国であることなどから、思っていたのとは逆に喜ばれて、OKが出た。僕は、そのため東大一年生となり、空き時間にはアシェッドと同じ東大の院の研究室に顔を出し、公務の日は、大学自体を休む生活になった。アシェッドは高二の年齢である。
一緒に帰国した春香ちゃんとレイちゃんは、お嬢様校として有名な高校に進学した。理由は、多くの生徒が習い事のため、放課後の時間が豊富にあるからで、彼女たちはその時間を用いて、やはり僕らが行く院の研究室に来る事になっていた。礼ちゃんと、これまでのカタカナとは違う感じで僕は呼ぶようになった。春香ちゃんは二次性徴なんか出会った時から終わっていたが、礼ちゃんは遅かったので、まだまだ子供らしさが残っているが、少し背が伸びた。春香ちゃんは最早文句なしの美女という方がふさわしい上理知的な外見だが、中身を知らなければ、礼ちゃんは、文句なしのお人形さんのような美少女というのがふさわしい。多分もう少しして成長しきったら、礼ちゃんは、美しすぎて近寄りがたい感じになりそうだ。そうなれば中身を知ることはあまりないパターンになるはずなので、きっと高嶺の花と呼ばれるだろう。春香ちゃんも高嶺の花だけど、もう僕は彼女と性別など気にしないほどの大親友的な苦労を分かち合ってきた友人になっているので、そうはいまさら思えない。礼ちゃんは、春香ちゃんの家に下宿するそうだ。
さて――男子の中でなんといっても大親友と呼べる仲になったのは、間違いなく紺だ。
そんな彼は、何処へ行くのか。彼もまた、十六歳。今年、十七歳だ。
別れの日、僕は聞いた。
「紺はどこに行くの?」
「ああ。イギリスに行く」
「へぇ。何しにどこに行くの?」
「弁護士免許を取りにハーバードに行く」
「ぶは」
「何年かイギリスで暮らした後、俺も日本に行く。その時は、よろしくな」
「うん。分かったよ。元気でね。礼ちゃんのことは任せて」
「――そうだな。従妹を頼む」
「任せて。あと、関係ないけど、ミレイユとはどうなったの? 結局さ」
僕が聞くと、紺が吹き出した。
「黙ってたけどな、初めてヤる前に、きちんと告白して、付き合ってる」
「え」
「普通、恋人とヤるだろう? お前は違うのか?」
「そ、それは、そうだけど。そうだったの!?」
「ああ。お前ら、人の恋の話が大好きみたいだから、黙ってた。国際結婚の話の前に告白してる」
「嘘!?」
「本当だ。あと付き合ってしばらくしてから――前に手術でフランスに行った時に、俺の祖父さんも来たからそのまま連れて行って、ミレイユの祖父さんと両親にも会ってきてる。互いの家族は合意済みだ。別れてもいいという上で、仲違いしても両社穏便に行こうという法的手続きまで交わしてるし、今のところは別れる気もない。ただしここまでは、ミレイユも知らない」
「いつから好きだったの!?」
「まず外見に一目惚れした。この段階では、微妙なところだと思っていたけどな、そのあと最初のディスカッションっで中身が気に入った。俺は行動が早いんだよ」
「そうだったんだ……まぁ、イギリスとフランスは飛行機ですぐだしね」
「ああ。それに何年かしたら、おそらくミレイユもフランスからハーバードに来る。このことは黙っておけよ」
「分かったよ。じゃあ、またね」
「ああ、また」