スイス天才教育総合機関【12】




「原子力といえば、全く核廃絶される気配はないよね」

 ルイが続けた。さすがは法王様の孫。人類愛が深い!

「核廃絶には何が必要かなぁ?」

 ルガード殿下が純粋そうに首をかしげた。

「「「政治だな」」」

 彩とルシェルフと紺の声が揃った。果たしてそうなのだろうか?

「「「科学の進歩だよ」」」

 するとなんと、僕とアシェッドとバーナードの声が揃った。
 政治派が僕らを見た。

「核よりも原発災害の方が危険性が高いし、そもそも廃棄物の問題もある。というか、原発がある限り、核はいくらでも作れちゃう」
「「その通りだよ」」

 僕の言葉にアシェッドとバーナードが同意した。

「まず僕は、核汚染と廃棄物処理……なおいうなら、核を無効化してしまえる手段があればいいと思ってる」
「僕も柾仁と同じ意見」

 アシェッドが同意してくれた。するとバーナードが続けた。

「そうなると、原子力発電に代わるエネルギー、発電方法が必要だね」

 僕らの声に、政治派は頷いた。本来は、紺とバーナードの位置が逆だと僕は思う。
 なにせバーナードこそ、政治系志望なのだから。確かに現在の専攻は違うけど。

「「「その方面は、お前らに任せた」」」

 こうして、政治派、科学派、深海魚派に分かれて議論が始まった!
 なんだこれは。気づくと、僕は深海魚なんか見ていなかった。
 僕が提案したのに!

「――わかった。じゃあ僕は、次の行き先は日本にして、柾仁と一緒に、除染と無効化の研究をするよ!」

 アシェッドが言うと、バーナードが答えた。

「了解。僕は、政治家になるまで、あるいはなっても傍らに、新エネルギーと発電方法の研究をしておく!」

 この時やっと僕は我に返り、なんで僕たちは、潜水艦の中で真剣に核廃絶について語り合っているのかと気づいた。しかも、アシェッド、留学先まで決めちゃった。彼らは、本気だ! どうしよう、これ、僕、東大以外に行ったら、友人たちにボコられる。僕はもうよく知っていたのだ。一度やると決めたら、彼らは徹底的にやる人間なのだ。政治派をちらりと伺ってみるが、完全に彼らも本気だ。

「つまり、アメリカさえ同意すれば、俺のロシアは廃棄できる。現状でそれは無理だ」
「アメリカもロシアも廃棄しない以上、俺の中国も無理だ」
「アメリカは中露が廃棄しないなら無理だ。つまりお前らが、ロシアと中国の首脳になって廃棄して、両国でその時のアメリカ大統領を説き伏せろ!」
「「お前がなればいいだろ!」」
「……アメリカ大統領に?」

 紺が珍しく渋った。あるいは、初めて渋ったところを見たかもしれない。
 するとルイが微笑んだ。

「いいんじゃない? アシェッドと柾仁が原子力無効化と除染、バーナードが新エネルギーと発電の研究するって言ってるし、ルシェルフと彩が首脳になったら、後は仏英米をどうにかすれば、いいんだよね? その他の国は、無効化技術があれば使われても問題ないし、どうせ小さいのしか無理だろうから落とされてもなんとかなるし。そもそも無効化とかできるんなら、保有国も破棄に同意するでしょ? 僕がローマ法王に仮になってたら、ま、年齢的に多分ないけど、そういうことがあったら、祝福のお話会開くよ。全世界のキリスト教徒はきっと賛成してくれる」
「イギリスはもちろん、本当にそれが実現したら、僕が首相を説得するよ。王室が政治に口出しすることは基本ないけど、その場合は約束する」

 ルガードが言うと彩が笑った。

「本当に可能なら、中国も全力で俺が説き伏せてやる。俺は無理だと思うけどな」
「――言ったな、約束だぞ、お前ら」

 ルシェルフが怖い顔をした。しかしみんなもう慣れている。不意打ちでなければ、怖くないのだ。

「アメリカが同意すれば、フランスも折れるだろうけどな……大統領ねぇ。とりあえず、お前らは研究はやっといてくれ。俺は考えておく。あ、バーナード、俺の下の妹が、そっち系やりたがってるから、後で紹介する」

 そんなやりとりをして、僕らは陸に上がった。
 そこには僕とルガードのSP軍団が待ち構えていて、激怒していた。
 バレちゃったのである。