と、まぁこのようにして、まさかありえないと思っていた僕の想いは叶った。
 その翌週、再び四人で集まり、ほかの三人に祝福された。
 死ぬほど感謝した。

 こうして三人、時々四人で集まり、もちろん僕はリシェ一筋になり、無事に大学を卒業した。このままジェイクは、さらに上の課程に進むそうで、院に残るという。僕も資格取得が目的なので、院に行く。院に行かないと、専門資格が取れないのだ。M&Aである。

 そこへふらっと緑が顔を出した。
 僕と紺が学部卒業式を終えた時だ。

「紺は、次は何処へ行くの?」
「ルークと一緒に、ここの院に行く。俺も経営の院だ」
「珍しいわね。資格を取るの?」
「そうだ」
「考えてみるとそうでもないわね。紺は資格マニアなのかしら」
「別にそういうわけじゃない」
「なんでもいいけど、話があるの。私、次からジェイクと同棲するから、家を出るわ」
「そうか。ジェイクは家事、できないと思うぞ」
「安心して。私、全部パパに習ってるから」
「……今まで俺にやらせていただろうが」
「だって、紺、やってくれるんだもの!」
「おい!」

 緑は去っていった。紺はイラっとした顔をしていた。
 僕はといえば首をかしげた。

「そういえば紺って、どんな資格持ってるの? 今の話的に、司法試験以外のなにかもあるんでしょう?」
「ああ、心臓と脳のそれぞれの専門医、まぁ医師免許だ。だいたい講義を休んでる日は手術に行ってる」
「……へぇ。それは、また、すごいね。片方でもごはんが食べられる。一生安泰。そもそも実家があると思うんだけど、僕」
「ああ、もしもがあったら、うちの会社の経理を頼む」
「大歓迎だよお客様」
「一番最初に、これはなんか勝手にくれたんだけどな、もらったのは、EU宇宙局認定宇宙工学博士っていうやつだな」
「……それってさぁ、確か欲しくても一生貰えない人がいるらしいよね。すごいなぁ。やっぱりなんか、ぶっとんでるね。ちなみに、殿下のご学友だった時は何を学んでたの?」
「兵器だ。後は天才児教育に関して。この二つが専門だった」
「はぁ?」
「政治とエネルギーと原子力発電だのも講義を受けた。ちなみにルガードは、各国語を学んでたから、安心しろ」
「楽しそうな人生だね! 計画通り? 無計画?」
「今のところは、恋愛以外すべて計画通りだ」
「恋愛は違うんだ?」
「まぁな。安定してから探す予定だったんだ。あるんだな、こう、運命的な出会いのようなものも」
「そうだね。僕もリシェといるとそう思うよ。ところで次の計画だとどこに行くの?」
「院で資格を取り終わる年、飛び級でミレイユが医学部を卒業する。丁度二十二になるから日本の大学院に入学できる。ので、日本へ行く。二人で医学部院で日本の専門医資格を取る。飛び級がないからな。俺は精神医学専門医、ミレイユは簡単に言うなら内科だ。日本の方が、そちらは進んでいる分野があってな」
「へぇ」

 どこまで本当なのかとか、それまで付き合っているといいねとか、突っ込もうと思ったけどやめた。信憑性がありすぎるから。紺が嘘をついたことは、ない。紺は、嘘をつくべきところでは、だいたい話を上手く変えるか濁すか黙秘だ。そのくらいは、もう親しい僕たちである。

 こうして二年ほども、それまでと変わらぬ日々を過ごした。
 途中で僕とリシェの関係がすっぱ抜かれた事以外は、全て順調である。
 パパラッチ怖い。
 しかし予想外にも、世間は祝福してくれた。僕の下の緩さはスクープされなかったのか、それとも僕の肉体関係を持った女の子たちもまた、僕の叶わぬ恋を知っていたらしいからなのか(だって、友人としてインタビュー受けてたし!)、黙ってくれているらしい。幼い頃から愛を育み、友人の紹介(多分紺ってことなのかな?)により再会したというニュースが連日流れている。また、王室は早々に認めた。むしろ、僕の実家が困っていた。僕が卒業したら、とりあえず婚約することに決まっている。もともと社長になりたくなかったらしい兄は、これ幸いという感じで、僕に跡取りを押し付けた。兄はなんでも、政界に打って出るらしい。馬鹿じゃないのかと思うが、タイミング的には世論も応援してくれるので、良いだろう。この時はまさか、のちの英国首相になるなんて思ってもいなかった。

 その後、イギリスに残ったジェイクと僕は大親友になった。留学した紺もだけれども。
 そして計画通りという感じで、本当に紺はミレイユと共に、資格取得後日本へと行くことが決定した。さすがである。なお、その一年後ジェイクと緑は結婚して、大ニュースになった。セレブ同士の婚姻だし天才同士の婚姻だし美男美女(片方は世界的なモデル)だし! 二十三歳でふたりは結婚したのである。それを機に、ふたりはドイツとイギリスをいったり来たりする生活になった。ちなみに僕とリシェは二十五歳で結婚することになる。