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何度か僕とジェイクは視線を合わせ、紺はぶっとんでいると目で会話した。
「――ところで、紺はミレイユとは上手くいってるの?」
「当たり前だろ」
「まぁ君の性格なら、そうだろうね。ちなみにルークは?」
「僕ですか?」
「いやぁ、未だにリシェは君のことが忘れられないみたいだよ」
「……」
「リシェって確か、ルガードの妹の、第一王女殿下だったか?」
「そうそう。ルークと幼稚舎から中学校まで一緒でさぁ。リシェ、ルークのことが大好きでねぇ。今も好きなんだって。いや、真面目な話、本気で」
僕は思わず頬を引きつらせてしまった。
実のところ、僕もリシェ殿下が好きなのだ。大好きだ。
だから――一生独身決定だ。なにせ相手は王女様だ。
「「「両思い!?」」」
その時声が揃った。僕はハッとして声を上げた。
いつの間にか俯いたらしい。冷や汗が滴ってくる。
必死で笑おうとしたが、うまく笑えない。
「――いや、その、あの、ず、図星をさされたからじゃなくて、お、お、お、恐れ多くて、それだけ!」
「「「……」」」
「いやぁご学友ってだけで、最高の誉れだから!」
「「「……」」」
三人が視線を交わし始めた。先程まで完全に僕側だったジェイクまで向こう側だ。
「……イギリスの法制度的には、何の問題もないな。法律的にはな。俺が保証する」
なんと、第一声はジェイクだった。おい! それはわかってるんだよ!
問題はそこじゃない!
僕が笑顔をこわばらせていると、紺が殿下を見た。すると殿下が頷いた。
「ルークは伯爵家の家系で、王家の信用も厚いし、リシェ本人もルークが好きだから、こちらには問題ないよ」
「つまり、ルークの男気次第ってことか」
頷きながら紺が僕を見た。
「……僕はね、君達と違って常識的なイギリス人だから、王女殿下だなんて無理だ。王族だから恐れをなしてるチキンって呼んでくれて構わないよ! 僕の気持ちが分かるか馬鹿ー! いいよなぁ、恋人がいて! 好きな人と恋人になれて! 僕だってなりたいよ!」
「「「好きだって認めた!」」」
「あ」
こうして、この日からすべてが逆転し、僕の恋愛相談会になってしまった。
ルガード殿下もちょくちょく来る。
それに関しては、恐れ多いということで僕とジェイクの見解は一致した。
しかしそんなジェイクであっても、恋愛は頑張るべきだという。
「君ってそういうキャラには見えないんだけど」
「緑にであって人生が変わったんだ」
「へぇ」
このようにして、四年生が半分ほど過ぎたある日、土曜日の席に、ルガード殿下と……リシェ殿下がやってきた。リシェ殿下は、僕を見て目を丸くしたあと、嬉しそうな顔で走り寄ってきた。
「ルーク! 私を覚えてる?」
「もちろんです、王女殿下」
「リシェって呼んで! 会いたかった! ずっと会いたかったの!」
「……僕もです」
ついそこで本音を言ってしまったのが悪かった。
気づくと僕は、リシェ王女殿下をその場で口説き落としていた。
ハッとしたときには、三人は別の席へと移動して食事をしながらこちらを見ていた。
「私、ルークとお付き合いさせていただきます!」
その上、王女殿下は僕の告白に答えてくれた。
嬉しいんだけど、すごく嬉しくて泣きそうなんだけど、どうしよう。
なにせ、迂闊に手を出せない。
出したいけど出せない。
でも本当に一生一緒にいられるなら、結婚まで、我慢してもいい!