【13】
僕が眺める前で、礼が荷物をしまっていく。
そういえば今日は、久しぶりにたくさん話した。
思えば最近、SEX三昧だった。僕のせいだけど。
本当は、一緒にいられることや、話ができることだけでも、幸せなんだよね。
ガス代にのったままの、鍋を見た。
お味噌汁を最近作っていない。
「ねぇ、礼」
「なんですか? 殿下! 今日は、ごちそうさまでした!」
「――僕の作った味噌汁さ、本当に美味しかった?」
「え? はい! 私は、大好きです。今日食べたお料理も美味しかったけど、もっと好きです!」
久方ぶりに、満面の笑みが僕に向いた。作り笑いじゃない。
昔から知っているからよくわかる。僕が、好きな笑顔だ。
「――一生、僕が作ったお味噌汁、飲んでくれない? 毎朝一緒に」
「もちろん良いで――……え?」
僕は、なぜなのか、笑顔じゃなく、かといって怖くもなく、ごく普通の表情で告げていた。ただし、指輪の箱を手に持って、蓋を開けておくことを忘れなかったのは偉い。味噌汁じゃ伝わらないからね。普通男女逆だし。
「それってあの――……」
礼が指輪と僕を何度か交互に見たあと、真っ赤になった。
伝わっているらしい。
「あ、あの! 十二単って、重いんですか?」
「……そうらしいけど、軽量化に努めるよ」
重いって言ったら絶対に断られると、僕は確信していた。
礼はそういう性格なのだ。そこは熟知している。
「ありがたくお受けいたします!」
すると礼が、泣きそうだけど、でもすごく嬉しそうな、そんな顔で微笑んだ。
グッときすぎて苦しくなって、思わず歩み寄り、僕は彼女を抱きしめた。
少しの間抱きしめていると、礼が静かに泣いていることに気がついた。
涙を拭ってあげてから、僕は左手の薬指に指輪をはめた。
「礼、愛してる。ごめんね、最初の日、好きすぎてさ。押し倒しちゃった」
「……男の人と女の人は考え方が違うって、私は全然知りませんでした!」
「君は何も悪くないんだよ」
彼女の額にキスをして、僕は更に腕に力を込めた。
こうやって抱き合うのも、思えば初めてだ。
華奢すぎて、折れそうだ。けど胸はそれなりに大きいからあたっているという僕の煩悩は収まるべきである。
「結婚を前提に付き合ってくれる?」
「はい」
「僕のこと好き?」
「はい!」
「――いつから?」
「ずっと昔からです! 殿下はいつ私の気持ちに気づいたんですか?」
「墓場まで持っていく秘密だよ」
「あ……え!? じゃあ最初から!?」
「どうかなぁ――これから忙しくなるから、頑張ろうね」
「え、え!? 教えてください!」
実際には今日だけどね。ま、墓場まで持っていく秘密に変わりはない。
その後、唇に触れるだけのキスをした。
そして、宮内庁に連絡し、速報の手配をしてもらった。
あとは外堀を埋めるだけであり、それは彼らがプロだから、任せればいい。
「礼、おいで」
僕はそのまま仮眠室に行き、礼を今までにないくらい優しく抱いた。