【六】旅路(★)





 俺がラッセルと体を繋いだのは、旅を初めて三日目の事だった。

「こりゃ凄いな。本当にいい具合だ」
「やめ……ああ……やめてくれ……」

 護衛であるはずの俺をあっさりと組み敷いたラッセルは、獰猛な色を瞳に宿しながら、ニヤリと笑って、俺の後孔に指を突き立て、かき混ぜている。それだけで蕩けきってしまい、俺の体からは力が抜けた。

「分かってなかったんだなぁ。俺が商人を装った殺し屋だって」
「あ、ハ……」
「隙だらけの護衛だから騙しとおせると踏んで雇ったんだけどなぁ、まさか穴にまでなってくれるとはな」

 布が張られた野営のためのテントで、俺は喘ぐ。押し返そうとするのだが、ラッセルの厚い胸板はビクリともしない。

「あ、あ、あ」
「ここが好きらしいねぇ。一体誰にこんな淫らに調教されたんだ?」
「ひゃ、ぁ……ああ……だ、だめだ、あ、出る……う、うああ」

 指であっさりと果てさせられて、俺の体が弛緩した。するとそれを見計らったかのように、ラッセルが押し入ってきた。右の太股を持ち上げられ、斜めに貫かれる。深い。ラッセルの長く硬いものを、俺の内部が締め上げる。

「挿れてるだけでイきそうになるなんて、久しぶりだ。これから旅の間は、よろしくなぁ」
「あ、ああ、ア!! ひ!!」

 ラッセルが激しく腰を揺さぶる。すると快楽が全身に響いてきて、すぐに俺は飲まれた。黒い薔薇の紋章が疼いている。ラッセルはそれを一瞥すると、意地の悪い顔で笑った。

「黒薔薇の刻印かぁ。こんなもん付けられてるとはなぁ」

 動きが今度は緩慢に変わり、ゆっくりと抽挿される。その度に、より深い場所まで探られて、俺は喘いだ。気持ち良い。穏やかな快楽の波が襲ってくる。その後は激しい律動が始まり、一晩中交わっていた。いつ自分が意識を飛ばしたのか、俺は覚えていない。


 こうして俺の旅路において、性行為が加わった。俺は自分の体を恨んだ。初仕事のはずなのに、やっている事は変わらない。

「冒険者より男娼の方が向いてるんじゃ無いのか?」

 せせら笑っているラッセルに、この日は路地裏で、壁に手をつき犯された。
 必死で石の壁に手を当てている俺の腰を掴み、深く挿入したラッセルが腰を揺らす。

「あ、あ、こんな所で、嫌だ……やめ、誰か来たら」
「いっぱい見てもらって、そいつらにも犯してもらったらどうだい?」
「嫌だ、そんな……う、うあ……ああ」

 ラッセルは非常にゆっくりと動く。足りない。もどかしい。俺の体が更なる快楽をほしがっている。

「乳首にピアスなんてつけてる淫乱、みんなどう思うんだろうな?」
「あ、ハ……ッ、ぅ……も、もっと、あ、ああ……あ、動いてくれ」
「どうしようかなぁ? って言っても、俺も限界かな」

 やっとラッセルの動きが激しくなった。俺は快楽に涙をボロボロと零しながら果てた。ラッセルもまた果て、俺の後孔から白液が滴っていく気配がした。

「栓、しとくか」
「ひ、ぁ……」

 その時ラッセルが、俺の後孔に、張り型を突っ込んだ。その無機質な感触に震えていると、下衣を穿かせられた。震えながら俺は立ち上がる。

「行くぞ。護衛、ちゃんとよろしく頼むよ」

 ラッセルは笑顔だ。俺は手の甲で泪を拭う。こうしてこの日は、張り型を入れたままで歩かされた。道行く人々が自分を見ている錯覚に陥り、俺は羞恥で泣きそうになった。

「今日は俺は、『仕事』をしてくるから、宿屋でいい子で待ってるようにな。護衛さん」

 既に俺は、ラッセルの仕事が殺し屋だと聞いていたから、少しだけ恐怖した。しかし俺だってベリアス将軍を殺めたのだから、同類だ。

 宿屋の外鍵をしめて、ラッセルが出て行く。残された俺は、寝台の上で、思わず張り型に手を伸ばした。

「ンん……う」

 それを抜こうとした時、ゾクリとした。もっと――欲しい。体が快楽を貪欲に求めている。

「あ……ああ」

 俺は気がつくと、無我夢中で、狂ったように張り型を動かしていた。陰茎がすぐに反り返り、タラタラと液を零し始める。もう一方の手では、俺は乳首を摘まんだ。自慰などした経験はほとんどないのだが、堪えられなかった。

「いやぁ、淫靡だねぇ」

 ずっと快楽に浸っていた俺は、声をかけられて初めて、ラッセルが帰還している事に気がついた。見られた羞恥に、瞬時に赤面すると、ニヤリと笑われた。

「続けたら?」
「あ……」
「腰、動いてるぞ?」
「お願いだ、抱いてくれ」

 朦朧とした意識で、俺は縋っていた。するとラッセルがベルトを外し、寝台へと上がってきた。そして、俺の首筋に噛みついた。ツキンと痛む。

「あ、ぁ……ァ……ああ」

 ピアスを弾かれると、乳首から快楽が広がった。優しい愛撫が始まった。俺の肌をラッセルの舌がなぞっていく。片手が俺の陰茎に伸び、扱かれる。俺の菊門から張り型を引き抜いたラッセルは楽しそうに笑った。

「今日、良いものを買ってきたんだった。塗ってやるよ」

 小瓶を取り出したラッセルが、どろりとした液体を指に取ると、俺の中へと突き入れた。ぐちゃぐちゃとかき混ぜられる内、最初は冷たかった液体が、俺の体温と同化する。その直後の事だった。

「っく!!」

 ガクンと俺の視界がぶれた。その時には射精していた。

「評判の媚薬だ。いつもより飛べるぞ、快楽の中に」
「あああああああああああああ!!」

 媚薬を塗り込められる度、俺の体は跳ねた。何度も指だけで射精させれる。俺の顔が泪でドロドロになった。ラッセルに挿入された頃には、俺の理性は飛んでいた。

「もっと、もっと、あ……あああ! 気持ち良い、あ、うあああ」
「だろ?」
「ラッセル、あ」
「いい子。もっと名前呼んで」
「ラッセル、ラッセル、あ、ああア」

 あまりにもの快楽に、俺の意識は途絶した。次に気づいた時、俺は後ろから抱きかかえられていて、その状態で挿入されていた。もうラッセルの熱しか感じられない。乳首のピアスを弄ばれていて、全身が熱い。そんな俺の首筋をペロペロとラッセルが舐めている。時に耳の後ろをねっとりと舐められた。ガクガクと俺の体が震えている。

「最適な仕事も見つけてきてやったんだった。護衛が終わったら、きちんとした所に売り飛ばしてやるから安心しな」