【十五】偽りと絶望の神産み(※/★)







「今日は、貴方を貰う事とする」

 泣きながらぐったりとし、体を震わせていた俺に、ユーガ殿下が言った。気づけば、ユーガ殿下の陰茎は、既にそそり立っていた。それを菊門に押し当てられた時、俺は声を上げた。

「早く、う、うあ」
「可愛いな、俺のネルスは、本当に」
「ああああ!」

 ユーガ殿下の陰茎の先端が入ってきた。押し広げられる感覚がした時、触れ合っている温度で体が溶けそうになった。

「好き。ユーガが好き。あ、あ、もっと」
「俺を愛してくれたか。漸く」
「うん、うん」

 俺は、愛を知ったのだと思う。ユーガ殿下と繋がっていると思うだけで、心が満ちていく。根元まで入った時、俺は射精した。のし掛かってくる殿下に、震えながら抱きつく。思わずその背中に爪を立ててしまった。すると喉で殿下が笑った。

「俺と貴方の交わりで生まれる神の種子や卵は、まさに子だ。俺達の関係の証だ。産んでくれるな?」
「あ、あ……ああ……産む、だから、だからもっと……ア」
「力を注ぐぞ」
「あ――!!」

 瞬間的に、俺の体に魔力があふれかえった。それが壮絶な快楽をもたらした。直後、今度はそれを抜かれた。するとより強い快楽が体に染みこんできた。もう訳が分からなくて、俺はしがみついているしか出来ない。

「砂の神の力を解放する」
「!! っ――、――」

 頭が真っ白に染まった。黒薔薇の刻印が反応して、光を放つ。殿下は、その時、ニヤリと笑った。

「樹の神の力も十分満ちているようだな。指示した甲斐があったというものだ」
「あ、ああ、あ、え? あ、ああああ!!」
「知っているか? 絶望が深いほど、兵器の威力は高まるんだ」
「な、何? いや、あ、あああああ!」

 その時だった。俺の体を壮絶な痛みが支配した。突然快楽から痛みに切り替わり、意識がついていかず、俺の記憶はそこで飛んだ。

 目が覚めると、俺は口枷をはめられていた。天井から手枷でつるされていた。
 そんな俺を、椅子に座り長い足を組んで、ユーガ殿下が肉食獣のような瞳で見ている。実に楽しそうな顔だ。俺は、こんな殿下を知らない。

「ふ、っ……ンん」

 俺の内側を、樹の根が貫いている。ああ、前と同じだ。乳首にも根が絡みつき、蠢いている。

「舌をかみ切られては困るからな」
「ん、ン――」
「俺が本当にお前のように汚れた存在を愛すると思ったのか?」
「!!」

 目を見開いた俺は、その言葉を理解したくなくて首を振る。すると吹き出してから、冷淡な目をしたユーガ殿下が歩み寄ってきた。そして俺の口枷に指で触れた。

「存分に孕め。お前は苗床だ、大切な。それ以外の価値はない」

 目眩がした。俺は、分かった気がした。俺から手を離された時、きっとミネスはこんな気持ちになったのだろう。裏切り、とは、言ってはならないか。俺に言う資格は無い。俺にはやはり、味方などいないのだ。

「う、っ……」
「罪人印がよく似合うな。さて、その黒い薔薇、地の国の神の力で満たしてやろうか」
「……っ、ん、ふ」
「神の力ならばそれも可能だ。地の国は、どの国よりも魔術に長けている。そうすれば、もう俺には逆らえなくなるからな」

 クスクスと笑ってから、パチンと殿下が指を鳴らした。瞬間、黒薔薇が光を放った。同時に、俺の体が熱くなる。強すぎる快楽は、求めていたはずなのに怖い。口枷を外されたのだが、呼吸に必死になるしか出来なかった。

「まずは樹の神の子だ」
「ひ、ぁ……ああああ」

 俺の正面に光が溢れた。そこには、いつか見た種によく似たものが出現していた。宙に浮かぶそれを見て満足げに頷いた後、殿下が笑った。

「次は、砂の神の子を産め」
「あ、あああ、うあああ、いやあああ」

 全身から魔力が抜けていく感覚がした。気持ち良い。だめだ、気が狂う。
 びっしりと汗を掻いた俺の体が、ガクンと揺れた。
 今度は、溢れた光の中に、砂の城のようなものが出現した。

「最後は風の神の残滓だ」
「いやああああああああああ!」

 肌の内側を鳥の羽のような快楽が駆け抜けた。そうして最後に、卵が出現した。
 もう何も考えられない。

「初回で三体も兵器を生めるのだから、本当に良い器だな」
「――、――」
「俺に従う限り、今後も生活の保障はする。ネルス殿下は、ただ生み続ければ良い」

 その声が響き終わる直前、俺を貫いていた樹が消失した。俺は不安定な姿勢でつるされているだけとなった。そんな俺の太股を持ち上げると、殿下が焼き印を舐めた。ビリビリと魔力が流れ込んでくる。それが気持ち良くて、俺は夢中で首を振った。

「ああ、淫らだな」

 残酷な声に、俺は苦しくなった。俺の枷を殿下が緩めたから、俺は床に座り込んだ。そんな俺を、無理に殿下が押し倒し、挿入してきた。剛直にいきなり抉られたというのに、俺の体は確かに悦んでいた。

「あ、ああ」
「そうか。まだ俺が好きか。健気だな」
「あ、あ、あ……あああ!」

 乱暴に殿下が動く。激しい抽挿に、俺が泣きながら喘ぐ。気持ち良い。もうそれしか考えられない。ユーガ殿下は俺の根元を掴んで、射精を封じながら、最奥を責め立ててくる。そのまま俺は、中だけで果てさせられた。足の指先を丸めて耐えていると、乳首を噛まれ、俺は気絶した。