【6】未知の感覚(☆)


 その日、お風呂に入ってから、俺は寝室でベッドに座っていた。セリスのお部屋だ。入るのは初めての事である。バスローブ姿で俺は、セリスがお風呂から戻ってくるのを待っていた。

「ヴェル」

 戻ってきたセリスは、俺を見ると苦笑した。その表情の意味が分からず首を傾げた時、歩み寄ってきたセリスが――不意に俺を寝台に押し倒した。目を白黒させた俺のバスローブの紐を、セリスが解く。

「セ、セリス? え? 何するんだ?」
「気持ちの良い事だ。決して酷くはしない」

 何が起きているのか分からない俺の肌に、セリスが触れた。自分とは違う体温で胸を覆うように触れている手は巨大で、俺は何度か瞬きをした。暫く俺の体を撫でてから、ペロリとセリスが俺の鎖骨の上を舐めてから、そこにキスをした。

「っ!」

 驚いてビクリとすると、セリスが深々と息を吐く。そのまま何度か俺の首筋を舐めてはキスをしたセリスは、顔を上げると俺を見た。

「嫌か?」
「嫌っていうか……な、何? 何をするんだ? 怖い……」
「怖い事は何もしない。優しくする」

 それからセリスは、俺の息子に手で触れた。ちょこんとしている俺の息子を片手で握りこんだセリスが、ゆるゆると手を動かす。ここに来て、俺はやっと理解した。孤児の子供は、貴族相手に娼婦や男娼をする事が多い。その時、詳しくは知らないが、そこを触るらしい。

「え、あ、あの! もしかしてセリスは、俺を抱くのか?」
「――ああ。体を繋ぎたい」

 それを聞いて、俺は真っ赤になってしまった。普通は、恋人同士の行為だ。驚いて俺は目を見開いたまま硬直する。

「誰にもヴェルを渡したくないんだ」
「……セリスは、俺が好きか?」
「そう言ったらどうする?」

 セリスが少し意地の悪い顔で笑った。俺はセリスが好きであるから、嬉しさと緊張が綯交ぜの気分になる。その間もセリスは俺の息子をゆるゆると刺激していた。気づくと俺のそこは固くなり――無性にトイレに行きたい気持ちになってきた。

「な、なぁ……出そうだ。トイレ……」
「出るのは別のものだ。そうか、未精通か。知識はどこまである?」
「未精通って何だ? ぁ……」
「今から教えてやる」

 セリスの手の動きが早くなった。するとどんどん固くなった俺のものからは、何かが漏れ出してきた。無性に恥ずかしい気がして、真っ赤になってしまう。

「あ!」

 その時セリスがぱくりと俺の息子を口に含んだ。舌先で先端の透明な液体を舐めとるように動かしてから、その箇所をペロペロと舐められる。熱い口の中が気持ち良くて、俺は涙ぐんだ。思わずセリスの頭に手を伸ばして押し返そうとしたのだが、髪の毛をかき混ぜるだけの結果に終わる。

「あ、あ、やだ、出ちゃう――ンぅ!」

 その時全身の熱が息子に集中し――何かが出てしまった。

「あ、ハ……ふぁ」

 俺が肩で息をする前で、セリスが俺の出したものを飲み込む。喉仏が上下していた。

「の、飲んじゃったのか?」
「ああ。美味しい」
「……本当に?」
「ヴェルは可愛いな」

 心臓がバクバクする。俺は気づくと汗をかいていた。体にはまだ熱がこもっている。
 セリスがその時、ベッドサイドから小瓶を手にとった。
 見ているとそれを指に垂らしたセリスが、微苦笑した。

「大丈夫か? まだまだこれからだぞ」
「まだ何かするのか?」
「ああ。俺に身を任せてくれ」

 そう言うとセリスが、人差し指の先端で、俺の後孔をつついた。驚いて俺はピクンと体を跳ねさせる。襞の一つずつをなぞるようにした後、ゆっくりとセリスの指が第一関節まで入ってきた。異物感に思わず息を詰めていると、その指先で確認するようにセリスが弧を描く。

「ぁ……ァ……」

 指がさらに深く入ってくる。骨ばったセリスの指が第二関節まで入ってきた。ぎゅうぎゅうと俺の内側が、それを締め付けている。体の奥が満杯になってしまった気分だ。

「ン!」

 その時軽くセリスが指先を折り曲げた。そうされた瞬間、ジンと全身に稲妻のような何かが走った。

「あ、あ、あ」
「ヴェルの好きな場所が分かった」
「や、あ、また出ちゃいそうだ……」

 俺は自分の息子がまた持ち上がったのを理解した。セリスの指の動きが激しくなって、内部のある箇所を刺激する度に、俺の前にどんどん熱が集まっていくのだ。

「キツいな。ゆっくりと慣らそうな」
「んぅ、ひゃ……ッ……ぁ……」

 暫く一本の指を縦横無尽に動かしてから、セリスがだらだらと液体を再びまぶして、今度は二本の指を俺の中に挿れた。最初は揃えて入ってきた指が、押し広げるように開かれる。その動作を繰り返されてから、また揃えた指で、気持ちの良い場所を押し上げるように刺激された。

「ああ……っ、う、うあ……」

 こんなのは知らない。未知の感覚だ。全身がふわふわとし始めて、すごく熱い。
 その時、左手でセリスが俺の息子を握った。そしておもいっきり中の感じる場所を突き上げながら、息子を激しく擦った。そうされた瞬間、俺の頭が真っ白に染まった。

「やぁ……あ、あ、体がおかし、い……変だよぉ」
「変じゃない――綺麗だ」
「ああああ!」

 そのまま俺は、また出してしまった。ぐったりと寝台に沈み、俺は眦から涙を零す。セリスはそんな俺から指を引き抜くと、吐息に笑みをのせた。

「毎日少しずつ、しよう。なぁヴェル? 俺以外には、例え恋をしても、こういう事をさせないで欲しい」
「っ、ぁ……う、うん。しない」
「約束だ」
「うん……」

 ぼんやりとした意識で、俺はセリスの言葉に頷いた。