【9】二回目の夜(☆)


 俺を優しく寝台に促したセリスは、俺のバスローブの紐をほどいてから、両手で俺の頬に触れた。そうしてまじまじと見つめられて、俺は照れくさくなってしまった。

「ン」

 唇が触れ合う。柔らかいなと思っていたら、ペロリと下唇を舌で舐められた。それを繰り返されて、俺は何か言おうと口を開く。すると――口腔を深々と貪られた。侵入してきたセリスの舌が、俺の舌を絡めとる。歯列をなぞられ、舌を吸われると……なぜなのか体が熱くなった。息が苦しくなる度に、セリスが角度を変えて、俺の息継ぎを促す。

 ……お口が、気持ち良い。ギュッと目を閉じた俺は、そのままキスを浴びた。

 漸く唇が離れた時には、すっかり俺の息は上がっていた。潤んだ俺の瞳からは、ポロリと涙が零れる。セリスはそれを舐めとってから、今度は俺の首筋に舌を這わせた。往復する湿った硬い感触に身震いしていると、指で鎖骨を撫でられた。

「ぁ……」

 セリスが俺の鎖骨の少し上に吸い付く。するとツキンとその箇所が痛んだ。

「ん、ァ……」

 同時にセリスが俺の左胸の乳首を摘んだ。普段は存在を忘れがちなそこを、キュッとつままれ、指で捏ねられる。続いて右胸の乳首は、唇で挟まれた。そしてチロチロと舌先で舐められ、吸われた。その度に、体の奥がツキンと疼いた。

「ぁ、ァ……や、ン」
「今度は左だ」

 セリスが次に左胸に吸い付き、濡れた右胸を指で弾いた。思わずビクリとしてしまう。
 その後も丹念に、セリスは俺の乳首に触れていた。交互に吸われる内に体が熱を帯びていき、芯が暑くなってくる。俺は息子が緩やかに持ち上がったのを理解して、これが――気持ち良いという事なのかもしれないと悟った。

「あ、あ」
「右胸の方が好きらしい。可哀想だから、左も開発してやらないとな」
「セリス……ン、ぁ……なんだか、体が変」
「変じゃない。それが、気持ち良いという事なんだ」

 セリスの言葉で、やはりこれが、『気持ち良い』なんだと俺は理解した。それからセリスは両手で、俺の乳首をそれぞれつまみながら、俺の肌を舐めた。舌が下がっていき、へそを刺激される。奇妙な気分になってきて、どんどん息子が固くなっていく。その時、反応していた俺の自身を、セリスが片手を添えて持ち上げた。

「蜜が溢れているな」
「ッ」

 恥ずかしくなって俺が真っ赤になると、俺の先端から出ていた透明な雫を、セリスがぺろりと舐めた。片手で俺の腰骨をつかみながら、セリスが俺の先端をペロペロと舐める。

「んン」

 そうされると、また、昨日覚えたばかりの白い液を出してしまいそうな感覚になる。
 セリスがベッドサイドにあった小瓶を手にとったのは、その時の事だ。
 昨夜と同じようにそれを指に垂らしたセリスが、人差し指の先端をゆっくりと俺の中に入れた。

「三本は入るようにしないとな」
「あ、あ……あああ」

 第二関節まで入ると、指先を折り曲げられて、昨日教えられた感じる場所を刺激される。そうされると、どんどん出てしまいそうな感覚になる。ドロドロした液体は、最初は冷たかったが、すぐに俺の体温と同化した。クチュクチュと音がする。

「ン――!」

 セリスの二本目の指が入ってくる。揃えた指を抜き差ししながら、セリスが吐息に笑を乗せた。押し広げられる感覚に息を詰めた俺は、ギュッと目を閉じる。するとまた涙が零れた。どんどん指の動きが激しくなっていき、その内にかき混ぜて広げるように動かされた。こんなにも二本でもキツキツなのに、三本目が入るのだろうか?

 それから長時間、セリスは指を動かしていた。俺の息があがり体が弛緩し始めた頃、セリスが一度指を引き抜いた。

「あああ!」

 そうして――三本の指が入ってきた。瓶からさらに液体を垂らして進んできた指が、バラバラに動き始める。どんどん広げられていく内部の感覚に、俺は背を反らす。

「ア!!」

 その時、三本の指を揃えて、セリスが俺の感じる場所を突いた。瞬間、全身にカッと熱が走った。

「あ、あ、やだ、やだ!」

 出る、出てしまう。泣きそうになった俺は、必死で呼吸をしながらセリスを見る。

「嫌じゃない、だろう? 気持ち良い、だ」
「う、ァ……あ、あ、そこ、変になる。怖いよ……ひゃ」
「しっかりとこの感覚を覚えておけ」
「うああ、あ、あ、あああ!」

 セリスは執拗に、俺の感じる場所ばかり突いた。その結果、俺は前を触られていないのに、放っていた。白液が飛び散り、セリスのバスローブを汚す。俺は泣きながら震えた。寝台にぐったりと体をあずけ、汗ばんで髪が張り付いた横顔をシーツに押し付ける。

「きちんと指は入ったな」
「……っ」

 指を引き抜いたセリスが、優しい声で言った。

「さて、復習するか」
「……え?」
「もう一回」
「んぅ」

 ほぐれていた俺の中に、再びセリスが指を三本入れた。そしてぐちゃぐちゃとかき混ぜながら、俺の中を慣らしていく。

「あ、ああ、あ、あ、あ」

 しかし先程とは異なり、今度はすぐに感じる場所を重点的に突き始めた。俺の息子が再び持ち上がる。

「や、やぁ……待って、あ、あ、また……!」

 俺が涙ぐんだ時――セリスが俺を抱き起こした。そして膝の上に俺を乗せた。セリスの固くそそり立ったモノが、俺の太ももの間にある。正面から抱き合いながら、セリスは片腕を俺の腰に回し、もう一方の手では再び俺の後ろをほぐし始めた。

「ひ、ぁ……あ、あ」
「俺にしがみついていろ」

 その言葉に、俺はセリスに抱きついた。するとセリスが、今度は両手の指で、俺の中を弄り始める。俺は震えながら、そこに生まれた快楽に、ビクビクと体を跳ねさせる。出したくてたまらなくなって、気づくと俺はセリスの腹部に、自分のモノを擦りつけていた。

「あああ」

 そのまままた俺が出した時、セリスもまた腰を揺らして俺の腹部に硬いものを押し付けて、白い液を放った。俺の腹部が濡れる。ぐったりとセリスの体に倒れ込んだ俺を、彼は抱きしめた。

「早くヴェルが欲しい」

 俺の耳元で囁いたセリスは、それから静かに笑ったようだった。