【16】媚薬(★)




 ぼんやりと俺は寝台に座っていた。どのようにしてここまでやって来たのかが、あまり思い出せない。体が酷く熱い。その時、ノックの音がした。入ってきたのはユフェルだった。

「大丈夫か、カルネ? 具合が悪くなったから、今日は泊まっていくようにとドール伯爵が――……カルネ?」

 焦点が合わない。唇を震わせた俺は、何か言おうとしたのだが、言葉の代わりに唾液が溢れそうになった。全身が熱くて熱くて、何も考えられなくなっていく。

「熱でもあるのか?」

 歩み寄ってきたユフェルが、俺の額に触れた。その瞬間、俺の腰骨が熔けたようになった。カクンと全身から力が抜けて、ユフェルの体に倒れこむ。すると触れた体の箇所全ての熱が、より酷くなった。

「カルネ?」
「あ……」

 耳元で囁くように言われると、もうダメだった。涙がこみ上げてくる。俺はユフェルの唇を吸い寄せられるように見た。目が離せない。

「――甘い匂いがするな。魔力を帯びた香りだ」
「……っ、ぁ……」
「何か盛られたのか?」

 俺の服の上から、ユフェルが俺の鎖骨をなぞった。そうされるだけで、ジンジンと体の内側が悲鳴を上げる。気づくと俺の陰茎はそそり立っていた。

「ユフェル……助けてくれ……っ、体が……熱、ッ……」
「……」
「ユフェル、俺……ぁ……」
「……ドール伯爵夫妻が、こういった実力行使に出るとはな。俺にとっては願ってもない幸いだが……」
「ひゃっ!」

 ユフェルが服の上から、俺の左乳首を摘んだ。その衝撃だけで、俺は果てていた。

「正直、検討はしたんだ。無理に動きを封じて、子供が出来るまでの間、抱き潰すという行為を。いくら俺が魔族といえど、非人道的だと判断して取りやめたんだが……」
「ぁ」

 俺の首元の服をはだけて、ユフェルが吸い付いてきた。そうされると再び俺の陰茎が反応した。それだけでは無かった。左手首がジンジンと熱い。そこから全身を絡め取るかのように灼熱が広がっていく。それに呼応するかのように、俺の内側が熱を帯びた。ジクジクと最奥が疼いている。

「この瓶……」

 その時、ベッドサイドにあった深い緑色の小瓶を、ユフェルが手に取った。そして蓋を開けると、先程のワインと同じ香りが部屋に広がっていった。より一層、俺の意識が曖昧になる。

「魔族すら魅了するという媚薬、か。【魅月油】とは、また随分と値の張る魔法薬を用意してくれたものだな」
「……ぁ、は」
「カルネ、俺に助けて欲しいんだな?」
「う、ん、ァ……」
「抱く事になるぞ」
「!」
「そして俺は機会は逃さない。種付けさせて貰うぞ?」
「え、あ……ン――!」

 ユフェルが俺の下衣を剥ぐと、指先で陰茎を撫で上げた。
 するすると服を乱されて、一糸まとわぬ姿になった俺は、ただ涙を零すしか出来無い。

 子供が出来るのは怖いのだが、そんな恐怖を塗りつぶしてしまうくらいの快楽に襲われている体が、早く内側にユフェルの熱が欲しいと訴えていた。

「あ、あ!」

 媚薬を指に絡めたユフェルが、俺の菊門から二本の指を一気に挿入した。痛みは無く、逆にすんなりと俺の体はユフェルの指先を飲み込む。そして――全然足りないと喚いた。

「あ、あ、あ! やだ、あ、もっと……」
「これならば、すぐにでも挿りそうだな」
「あ、ぁ……ァ……うああ!」

 ユフェルが服を脱ぎ捨てると、俺を正面から押し倒した。そして俺の太ももを持ち上げると、斜めに陰茎を挿入した。交わっている箇所が蕩けてしまいそうなほどの熱と快楽を訴えてくる。気持ち良い。純粋に気持ち良くて、俺はボロボロと泣いた。

 俺の内側が、ユフェルの肉茎を締め付けているのが分かる。自分の中が蠢いているのが自覚出来た。

「ぁ……ンん……ああっ……あ、ン!!」
「予想以上に気持ちが良いな。これが、伴侶か」
「ああああ!」

 激しくユフェルが動き始めた。ギュッと目を閉じて、俺はユフェルの首にしがみつく。

「――愛がなくても、感じる事は可能だろう?」
「ひ、ぁ、ああああ! やぁ、もっと動いてくれ、あ、ア!」

 緩慢なユフェルの動きに、俺は無我夢中で頭を振る。髪が肌に張り付いている気がした。

「ひっ!」

 俺の右乳首をユフェルが噛む。俺の陰茎がユフェルの腹部に擦れている。
 その状態で中の感じる場所を突き上げられると、頭が真っ白に染まった。

「いや、あ、あ、ああああ!」

 俺はそのまま再び果てた。ぐったりしていると、ユフェルが舌打ちした。

「悪いが、俺の側が止まりそうにもなくなってきた」
「あ、あ、まだ、まだ動かないでくれ――やぁ、ァ!!」
「抑制が効かない」
「んぅ――は、ひぁ、ゃ、ャ、あ、ああ!」

 激しくユフェルが打ち付け始めた。すると俺の体は再び熱くなっていく。もう快楽以外何も考えられない。

「出すぞ」
「うああ!」

 抉るように貫かれ、俺の体は、ユフェルの白液で染め上げられた。
 そこで俺の理性は一度焼き切れたらしい。
 次に気づいた時、俺は後ろから抱き抱えるようにして、下から貫かれていた。

「ぁ……」
「今夜はたっぷりと注いでやるからな」
「ひ、ァ……ゃ、ぁァ……」

 深く穿たれた状態で、俺は結合箇所から白液が垂れているのを実感した。少しだけ熱が引いた体で、満杯の内側を意識する。体位の問題ではなく、ユフェルの陰茎は凶暴なほどに巨大だった。やはり人間とは作りが違うのが分かる。ピクピクとユフェルの陰茎が脈動するだけで、俺の全身に快楽が走り抜ける。少し動かれただけで、体が快楽一色に染まった。

「あ、ああ……」

 繋がったままで、両方の乳首を後ろから摘まれる。すると俺の陰茎から透明に変わってしまった精子が垂れた。

「口実など何でも構わない。俺はカルネが欲しい」
「ん、ンあ……あ、あ」

 体を揺さぶられて、俺は再び涙を零す。

「まだまだ足りない。幸い、夜は長い」
「ひ、ああああああああああ!!!!」

 ユフェルが激しく突き上げ始めた。そこでまた、俺の理性は途切れた。