【4】予選通過状況



 放課後になり、時野は校門へと向かった。本日はCMの撮影があるのだ。
 早足で出ると、そこには見慣れた車が止まっていた。中から亮生が手を振っている。

「お疲れ様」
「お疲れ様っす」
「今日は頑張ったみたいだね」
「ああ……いきなりだったから驚いた」

 走り出した車内で、時野は思わず溜息を漏らした。すると楽しそうに亮生が笑った。

「公正を期するために、今日全国で一斉にテストしたらしいんだけどね」
「へぇ」
「何校――正確には四人一組の班、何班が全問正解したと思う? 全部で50校50クラス。各5から10班」
「さぁ。100クラスくらいですか?」

 適当に時野が答えると、亮生が吹き出した。

「5」
「え?」
「5班だけだよ、全国で。よくやったね、時野」
「は? 250から500班あったんだよな?」
「そう。100分の1から50分の1の間。全問正解は、すごい確率なんだって。特に、第七問が難しいみたいだね」
「ああ、あのパズル」
「なんでもね、IQ200の天才が作ったパズルなんだって。同じくらいのIQがないと解けないらしいよ」

 その言葉に、時野は要のことを思い出した。ならば要は、IQが高いのだろう。頭が良いのは分かっていたから、別段不思議ではない。

「勝ち残った5班と特別チームで、本戦があるからね」
「え」

 嫌な予感が的中し、時野は思わず声を上げた。

「5班は、高校生。他に、大学生チームとか、学校の先生チームとか、研究者チームとか、芸能人チームとかを入れて、計10組で本戦の収録があるんだって。芸能人チームが二組出るよ」

 気が重い。活躍できる自信は全くないし、なによりもあのメンバーと一緒だと言うことが辛い。縁の自分理論がテレビで炸裂したり、相の面倒くさいという態度が炸裂したりするのか。唯一の心のよりどころは、要だけだ。

「それでね、番組のCMに君を起用したいって話が来てるんだ」
「……はぁ」
「もっと喜んでよ。今日は、次の撮影の後、そっちね」

 時野は断れなかった。