【6】本選前挨拶



 さて、なんとか期末テストを乗り切った。

 成績表を凝視し、時野は溜息をついた。まぁまぁだった。このままの成績を維持すれば、付属大学に入学することが出来るだろうという結果だった。要は当然のごとく、張り出された成績表の一番上に名前がある。縁は成績表など見る気配もない。相もそれは同様だ。しかし問題は成績ではないのだ。明日から始まる、『インテリジェンス・デザイン』の本戦だ。今から気が重い。

 収録地は非公開。目隠しされて移動するらしい。なんでも山間部に特設されているとの噂だ。本戦のコンセプトは、『人類の知性で世界を救おう。そのために、我が国最高の知能集団を選出する』というものだ。誰も勝ち残らなかった場合、『国民による国の防衛は失敗』という結末になるらしい。

 一応台本が配られたのだ。しかしコンセプトと失敗した場合の結末しか書かれていなかった。各クイズは、都度都度発表されるらしい。不正などは一切行われないと明言されていた。不正が明らかになった場合は、問答無用で失格らしい。

 一頁目が、番組概要。
 二頁目が、コンセプトと失敗時の結末。
 三頁目に、本戦参加者のプロフィールが班……今回から『組』ごとに記載されていた。

 全部で10組だ。

 1組目は、『IDプロフェッショナルチーム』である。この『インテリジェンス・デザイン』という番組の、レギュラー出演者四人で構成されている。皆、芸能人だ。国内最高学府である国立T大学の現役学生、関西のK都大学出身のお笑い芸人、元オリンピック射撃代表にして製薬会社御曹司、天才将棋名人小学生であり天才子役の名も欲しいままにしている梓馬楓。皆、時野も当然知っている有名芸能人だ。時野はこのメンバーの控え室には、先ほど挨拶に出かけた。

 2組目は、『芸能人チーム』である。こちらにも勿論挨拶にいった。一人目は、名門歌舞伎役者。二人目は、海外の有名大学卒の白人演歌歌手。三人目はT大卒のアナウンサー。四人目は、この夏の月9ドラマの主演をつとめる新進気鋭の若手俳優日向紫苑である。日向は何かと時野と比較される。明らかに彼は、番組宣伝のために組み込まれていると分かる。

 さて3組目。こちらは『国立T大学チーム』だ。T大学の学生と教授で構成されている。

 4組目、『研究者チーム』は、様々な分野の研究者の集団だ。ただし、25歳以下である。

 5組目からが、高校生チームだ。時野達が、『F学園附属高校チーム』、その他、『T大附属高校チーム』『私立ヨハネ学院チーム』『県立八坂勾玉高校チーム』『府立羽衣高校チーム』『USD(アメリカンスクール)』の6つである。

 移動中は本当に目隠しをさせられた。それが取り去られた後は、四人一部屋の豪華なホテルの一室に通された。荷物を置いてすぐに挨拶回りに出かけた時野は、亮生と別れるとすぐに部屋へと戻った。現在までに、一度も外を見ていない。どこの部屋にも窓がないのだ。代わりに照明が煌々と光っている。

「おかえり」

 時野が扉を開けると、要が言った。後ろ手に扉を閉めながら、時野が頷く。
 すると寝台に大の字に横になっていた相が起きあがり、胡座を組んだ。

「なんかさ、揺れてねぇか?」
「地震ですか?」
「いや、そうじゃねぇよ。縁は、図太そうだから気づいてねぇかもしれないけどな、ここ。この部屋自体」

 相の言葉に、言われてみれば浮遊感があるような気がして、時野は首を傾げた。

「確かに揺れてるな。もしかして」
「船?」

 要が続けた。一同は顔を見合わせる。山間部にあるという情報だったが、嘘だったのかも知れない。本戦は全部で7日間かけて開催されるという。

「まぁ学園からの移動距離からして、太平洋に出たんだろうね。日数的に、グアムあたりに着くんじゃないかな」

 静かに要が言うと、相が肩を落とした。

「パスポートもってこいって言われた時から、嫌な予感はしてたんだよな」

 F大付属は、海外で修学旅行を行うため、丁度GW頃に全員でパスポートをとったのだ。

「ほう、海外ですか。面白いですね」

 反対に、縁は楽しそうな表情になった。時野は、壁際の椅子をひき、そこに座る。

「まぁ今日は顔合わせを兼ねた会食パーティらしいし、そう気兼ねしなくてもいいだろ」

 自分自身に言い聞かせるようにそう口にした。そんな時野に皆は頷いてくれたのだった。