【13】ホテルの探索


 皆で荷物を置き、初日は休んだ。これから一週間は目覚まし時計と格闘する必要はない。翌朝、その事実に時野は安堵した。客室には簡易キッチンがついていて、なんでも本番までは自炊らしい。ホテルのそばに、専用の食料雑貨店が存在するのだという。

 一応冷蔵庫にも、大量の食材が入っていた。調味料も充実している。なんでも日本の人が用意してくれたらしい。本日朝は、ホットサンドとサラダを作った。

「人は見かけによらないものですね。なかなか美味しいです」

 食べながら、縁が時野を見た。縁には言われたくなかった。

「確かに美味いわ」

 相も頷いている。要は、静かに珈琲を飲んでいた。

「今日は何する?」

 時野が聞くと、相が考えるような顔をした。

「俺は、バナナボートに興味はないぞ」
「私もありません」
「俺もないよ」
「いや、俺もないけどな」

 満場一致で、マリンスポーツは却下となった。

「とりあえずホテルの中、ぶらぶらしてみるか?」

 相が呟いた。昨日到着した際に、個人の客室と従業員の私室以外であれば、どこに入っても良いと通達されたのだ。施錠されている場所も、頼めばあけてくれるらしい。

「カジノもあるそうですね」

 縁が壁に掛けられた、各階案内を一瞥しながら言った。ギャンブルには興味がない時野だが、カジノという響きは少しだけ胸が躍る気がした。コインも昨日配布された。

 他に、一人一枚、カードを渡された。このホテルや、近くにあるという店で使用可能な電子マネーなのだという。これも自由に使って良いと言われている。限度額は聞いていないが、無いのではないだろうか。他に目立った事はと言えば、空気銃が部屋に人数分備え付けられていることだろうか。用途は不明だが、一応時野は携帯することにした。ちなみに外部とは通信できない。電話もなければ、パソコンもなく、それぞれが持参した携帯電話は、電波が入らない。勿論参加者に限った処遇だろうが。陸の孤島だ。ただし島には病院も併設されているとのことだったし、毎日二度ほど、ホテルの屋上のヘリポートに輸送機が姿を見せるようだ。

 食後、一同は客室を出た。宛われているのは七階だ。

 五階にはショッピングモールがあるらしいので、とりあえずそこを目指す。エレベーターで降りてから、時野は少し笑った。普通の、日本の駅ビルというか、そんな感じだった。もっと異国情緒溢れているかと思ったのだが、そんなことはない。しいて言うなら、お土産用らしきナッツ入りのチョコレートが外国っぽかった。

 ぶらぶらと皆で見て回った後、今度はエスカレーターに何とはなしに乗った。
 そのまま一階まで降りた時、相がフロントの右手を見た。

「もっと降りるか?」

 考えていなかった言葉に、時野は顔を上げる。相の視線の先にあるのは、地下に通じる階段だった。

「良いですね」
「ま、秘密事項って言うのは、地下とかに隠されているものだよな」

 乗り気の縁に向かい、相が冗談めかして笑う。

 秘密事項……? 一体何を想像しているのだろうかと、時野は苦笑した。二人が歩き出すと、要も静かについていく。慌てて時野も後を追った。

 階段を下りていくと、1とペンキで描かれた白い鉄製の扉があった。階段はさらに下へも続いている。一同は、とりあえずそこに入ることにした。縁が堂々と扉を押し開く。相が周囲を見渡しながら進んだ。いかにも研究施設と言った面持ちだ。灰色の絨毯の上を歩き、突き当たりで立ち止まる。硝子張りの扉があり、立ち入り禁止と書かれた札と共に、黄色いテープが貼られていた。

「引き返すか」

 時野が言うと、縁が首を捻った。

「何故ですか? 我々はどこに入っても良いのですよ?」
「そ、それはそうらしいけどな……」
「時野って結構慎重派だよな」

 相が吹き出すように笑って、テープをはがした。助けを求める心境で要を見るが、彼は何も言わない。鍵はかかっていなかったので、結局四人はそのまま進んだ。