【14】石室の再現ホログラム


 少し歩くと、白衣をまとった様々な人種の者達が歩いているエリアに出た。飛び交っている言語は、基本的に英語のようだったが、時野には理解するスキルがない。

 彼らは四人をちらりと見ることもあったが、特に話しかけてくることもなかった。

「発掘したものを展示しているようですね」

 縁がそのフロアの中央にある、ガラスケースの前に立った。発掘? 首を捻った時野に、要が言う。

「この島に、遺跡があったみたいだよ。日本の古墳に似ていたみたい」

 頷きながら、時野もガラスケースを見た。そこには茶色い石版があり、見たことのない文字が掘られている。日本語とは到底思えなかった。印象としては、絵のようにも思える。しかし亀甲文字や象形文字とも違うような気がした。歴史の教科書では見たことがない。

「あっちの部屋で、発掘された石室の再現ホログラムが見られれるみたいだぞ」

 相の声に顔を上げる。彼が指さす方を見れば小部屋があった。

 それから四人でそちらに向かい、中に入った。扉を閉めると薄暗い。暫く待っていると、不意に周囲に暖色の光があふれた。相変わらず薄暗いが、今度ははっきり見える。時野は映し出された光景に息を飲んだ。四方の壁には、壁画が忠実に再現されていたし、先ほど見た文字のようなものもそこには刻まれていた。天井にも床にも模様が描かれている。

 犬とも猫ともつかない動物などが描かれている。鳥の絵もある。他には、頭部のみが動物の絵もあった。何らかの乗り物のようなものも描かれている。鳥の隣に描かれているせいか、空を飛んでいるように見えた。

 中央には長方形の台があり、そこに横たわっている人物の姿をみて、思わず時野は息を飲んだ。まるで生きているかのような、ただ眠っているようにしか見えない、若い女性が横たわっていたのだ。黒い髪をしていて、組んだ指を胸の上にのせている。首には紐製の首飾りがついていて、勾玉のような石がついていた。

 中から発掘された遺体の生前まで復元したのだろうか……? そんなことを考えていると、いきなり音楽が流れ始めた。和風に思えたが、まさかこのお墓(?)の内部で流れていたわけでもあるまいし、おかしな演出だなと考える。縁が目を細める気配がした。相は周囲をきょろきょろと見渡している。

 要はじっと女性を見ていた。なんとなくここは不気味だなと思い、時野は言った。

「そろそろ行かないか?」

 その声に三人が頷いた。そのまま部屋を出て、扉を閉める。

 それから客室に戻り、時野は昼食の準備をした。相は持参していたらしい、スケッチブックに向かって鉛筆を走らせている。縁は、部屋に備え付けられているピアノに向かっていた。縁は先ほど聴いた曲を再現して見せた。引きつった笑みを浮かべながら、時野はそれを聴きつつ料理する。要は相の作業を見ているようだった。

「相さん、この石室の絵って全部正確なの?」
「ん、ああ。俺、一度見たものは忘れねぇからな。風景が画像になって頭に入る感じだ」
「瞬間画像記憶?」
「あー、それ、言われたことあるわ」

 相は何気なく答えたが、聞いていた時野は、やはり相も常人ではないと確信した。

 さてその日の昼食は、たらこパスタにした。

 みんなでテーブルを囲み、食べながらだらだらと雑談した。食後、時野は皆に珈琲を配る。礼を言ってそれを受け取り、相が口を開いた。

「午後はどうする?」
「早速暇になりましたね」
「海でも見に行く? 後は、外にあるって言うスーパーとか」

 要が呟くように言ってから、カップを傾けた。特に反対する者もいなかったので、今度は外に出かけることにした。やはり、南海の島だけあって、潮風が気持ちいい。綺麗な色の海が広がっている。遠目にそれを眺めながら、まずは砂浜に出てみることにした。