【17】インテリジェンス・デザイン――世界大会・入場――


 いよいよ国際大会本番が訪れた。
 なんでも出題言語は様々らしい。ただし回答は母国語で良いらしい。

 出題形式は、なんとここにきて、早押しだった。これでは、勝ち負けがはっきりするではないか。

「こうしましょう」

 控え室で、縁が大きく頷いた。

「私が押します。瞬発力には自信があります」
「確かにお前、ただ叩くだけなら、時野よりも早いかもな」
「ええ。それに時野は、出題によっては躊躇して叩かないような気がします。私は出題内容は聞かず、問題文が最後まで読み上げられた段階で兎に角押します」

 縁の言うとおりだったので、時野は頷いた。今回のクイズでは、全て読み終わるまでは回答しては行けないことになっている。

「そして、要。貴方が答えて下さい」
「分からなかったらどうすればいいの?」
「自信を持ちましょう。恐らく貴方に分からなければ、私達は誰も答えられません」

 相と時野は同意した。要は疲れたように吐息し目を伏せた。

 ちなみに衣装は私服だ。
 別に民族衣装を着ろだとか、白衣を着ろという指定はない。

 1チームずつ会場に入り、紹介されることになっていた。
 順番は、ランダムらしい。

「みんな、準備は出来た?」

 久しぶりに、亮生が顔を出した。彼は一度日本に戻ってから、収録に合わせてやってきたらしい。ちなみに今回は、世界同時放送で、生中継だとの事だった。

「私はいつでも構いませんよ」
「俺は早く座りてぇ」
「俺もいつでも良いけど」
「何でお前らそんなに余裕あるんだよ……」

 一番カメラになれているはずなのに、緊張しているのは時野だった。

 それから、1チームずつ呼ばれるたびに、会場に進んでいった。それとなく見ていた時野は、皆それなりに上品な服を着ていることに気づいた。明らかに時野達だけ、カジュアルだ。後は、圧倒的に二十代前半だろう人々が多い。

 紹介は、モニターに各国の字幕も映った。それぞれの国の分のモニターがあったのだ。それを見る限り、時野でさえ聞いたことのある有名大学の学生がほとんどだった。大学院生や既に研究者として活躍していると紹介されている人も多い。

 寧ろ、十代なのは、時野達日本チームの四人と、合衆国Aチームの劉、それとドイツチームのユーリハルトという17歳の人物だけだった。彼は黒い髪に緑の瞳をしていた。日本チームは、なんと最後だった。

「さーて、最後は、ダークホース、日本!」

 各チームに合わせて、紹介者も言語を変えている。会場には、日本語が流れた。

「唯一予選から勝ち抜いてきた高校生集団です! 彼らは英才教育を受けているわけでも何でもない一般人だ! ここに立っているのは、まさに奇跡!」

 まぁあながち間違いではない。しかし微妙な紹介文に時野は引きつった笑みを浮かべるしかなかった。それでも会場には拍手と歓声が漏れた。本日は招待された観客もいるのだ。何気なく見て、時野は、梓馬の姿や美咲の姿があることに気がついた。日向の姿はない。

 紹介が終わり、一同はそれぞれのブースに移動した。

 早押しであること以外は、これまでの形式と代わらない。そして早押し自体、第一の試練なのだという。第二の試練もあるのだろうか……? 時野は、多分あるのだろうなと考えていた。

「それでは、第一問!」

 と、恐らく言っているのだろうが、時野はマイクを持った司会者の言語が既に分からない。何語かすら分からない。ボタンの前には縁が座り、その隣に要が座っている。時野と相は後部だ。

「――、――?」

 クイズが出題された。バシンと即座に音がした。高い電子音が会場中に響く。周囲の空気が緊迫したものになった気がした。皆の視線が、日本チームに集まった。考える様子など微塵もなく、縁がボタンを押したのだ。

 なお回答は、口頭だ。本当に分かるのだろうか。緊張しながら時野は見守る。すると歩み寄ってきた司会者に向かい、堂々と要は答えた。

「2」

 直後会場に、正解を告げる鐘の音が響き渡った。安堵で、時野は全身の力が抜けた。

 10問正解したチームから、順位が決まる。全問題終了までに10問正解しなければ、脱落とのことだった。その間、間違った場合は、次にボタンを押したチームが、回答者になるだけだった。ペナルティはない。