6(★)
ここは部室であるから、声が漏れたら困ると水栄が言い出したのは、付き合ってから一ヶ月目の事だった。今更だとは思ったが、確かにそれはそうだ。
「どうする? 止めるか?」
「その選択は無いです」
「……声、こらえるように頑張る」
「――いや、これを使いましょう」
そう言って、水栄が取り出したのは、布紐だった。
――その日から、俺は口を水栄に縛られるようになった。
口に布を噛まされ、陰茎に輪を嵌められた状態で、俺はバイブを突っ込まれるようになったのである。大体はソファの上だ。前は和田が陣取ってゲームをしていた場所である。
どんどんバイブのサイズは巨大になっていき、振動も激しいものに変わってきた。イボ付きである事も増えた。それらは微弱な振動から、激しい振動まで、自由に操作可能である。俺があんまりにも気持ち良すぎて暴れるからと言って、最近では、水栄は俺の手も拘束するようになった。頭上であったり、背後であったりはするが、いつも手錠を嵌められる。俺の内側も、もうすっかり拡張されていて、大体どんなサイズでも入るようになってきた。身動きできない状態で、強制的に与えられる快楽。少し前の俺からは想像もできない。最近では、ローション無しでもすんなり入る。
気づいたら――全身を拘束される事が、当然になっていた。
今日の俺は、M字に足を開いて、ソファに縛り付けられている。
珍しく陰茎は拘束されていない。バイブも入っていない。それが物寂しくすらある。
全裸で俺は、最近部室に購入した姿見に映る自分を見ていた。
そんな俺に、水栄が白い球体状のローターを二つ手渡した。
「それを乳首に当てて、三回出せたら挿れてあげます」
「っ、あ、ああ」
俺は素直に振動しているローターを受け取った。乳首に当てると、それだけで開発されきっている俺の体は、素直に反応を見せた。すぐにたらたらと陰茎から蜜が滴り出す。だが――規則的だが弱いローターの刺激に、俺の体はもどかしくて震えた。
「ン、っ、く……ン」
イけない。そう言いたかったが、口を拘束されているため、言葉が出ない。
目で訴えると、水栄が喉で笑った。
「イけませんか?」
こくこくと頷くと、歩み寄ってきた水栄が、俺の手からローターをとり、代わりに手錠をはめた。今日は頭上で吊るされる。これも天井に滑車器具を部費で購入して設置したのだ。買ったのは水栄である。
「!」
そのまま俺は目隠しをされた。これは実はたまにある。
だが、始めて耳栓をされた。視覚も聴覚も無くなり、俺が呻いた時、水栄が俺の陰茎を舐めた。
「ン!!」
「体を今から舐めます。それだけで、イって?」
「っひ、ン、ハっ、ん――!!」
どこに来るか分からない刺激は、ローターよりもごくごく弱かった――が、不意に襲って来る分、意識してしまう。性器を直接舐められる事もあれば、膝の裏や太ももの付け根といった弱い部分を舐められる事もあったし、耳の裏側を舌でなぞられる事もあった。
結果、それだけで三度果てるまでの間、俺は舐められ続けてその日を終えた。
翌日も、目隠しと耳栓をされた。今度はソファの上で猫のような体勢にされ、膝立ちだ。手は前で拘束されている。ガシャンと皮膚を通じて感覚がした時、首輪を嵌められたと理解した。その状態で、竿と袋の付け根を舐められ、次に菊門をゆっくりと舐められた。襞の一つ一つを舌でなぞられ、時折中に舌先を差し込まれる。焦らされ過ぎて、俺は涙ぐんだ。しかし目隠しの布が全てを吸い取る。声も出せないから、懇願もできない。
耳栓を取られるまでの長時間、それが続いた。
それから、水栄に耳元で囁かれた。
「部長、犬みたい」
「ン――っ、ん、ん、んんんっ」
「っていうか、俺の犬。もう、俺無しじゃいられないですよね?」
必死で俺は頷いた。頷かなければイかせてもらえないと、俺の体は、もう覚えさせられていた。俺は――”ご褒美”を待ち望んでいた。早く水栄の陰茎で貫かれたい。
「じゃ、俺を上げる前に、ちょっと遊びますか。犬――ペットとは、遊んであげないと」
「ん、ン――!!」
水栄はそう言うと、俺の中に、極太のバイブを挿入し、スイッチを入れた。俺はよがり狂い、髪を振り乱しながら、何度も中だけで果てた。そして、やっと水栄が入れてくれてから、前のリングを外され、射精を許された。俺は、泣いて喜んだ。
こんな日々が続き、秋になった。
生徒会選挙――とは名ばかりの、抱きたい・抱かれたいランキングの投票時期である。実は俺はこれまで投票した事が無かったし、ランキング結果をじっくりと見た事すら無かった。だが今回は――まじまじと見てしまった。
――抱かれたいランキング、二位。
――水栄楓。
チラッとは聞いていたが、本当だったのである。一位は、次期会長だと言う。このランキングでは、現行生徒会メンバーは除外らしい。抱かれたいランキング三位兼抱きたいランキングも三位の生徒が副会長だそうだ。その他の生徒会役員も、それぞれのランキング上位者であるという。基本的には、中等部時代の生徒会メンバーが勢ぞろいだという噂も聞いた。水栄は、今回も、会計となるらしい。
「――生徒会かぁ。という事は、部活に来られなくなるな」
生徒会役員は、基本的に部活や委員会には参加しない。どころか、授業にも出席は不要だ。生徒会特権らしい。
「会えなくなりますね」
「ああ。毎日会ってたから、寂しいだろうな」
「――ですね。俺、耐えられる気がしなくて」
「そんな事言ったって……ほ、ほら! 俺も受験だから、元々部活に来られる頻度は落ちるし」
受験生の三年は、放課後の補講が増える。
「部長」
「ん?」
「俺無しじゃいられませんよね?」
「ああ」
「――俺じゃなきゃ、ダメですよね?」
「当たり前だろ」
「浮気しませんよね?」
「するわけがないだろう!」
そんなやり取りをした事を、俺は鮮明に覚えている。