7(★)
新年度が来る頃には、すっかり新チャラ男会計として、水栄は周知されるようになっていた。みんなが「水栄様」と甘い声で、近寄っている。親衛隊も結成された。付き合っているとバレると、俺が制裁を受けてしまうからと言って、俺達の関係は内密だ。元々和田にしか話していなかったわけではあるが。
俺と水栄が顔を合わせる頻度は、目に見えて激減した。
昨年、毎日顔を合わせていた事が夢だったかのように――現在七月であるが、五月に廊下ですれ違ったのを最後に、一度も会っていない。連絡も来ない。前は朝晩あった挨拶であるが、これは付き合っている最中から減っていって、気づくと無くなっていた。
さらに――水栄が、親衛隊メンバーを始め、色々な人に乗っかられるとヤっているという噂を俺は耳にしているし、二度程うっかりそういう場面に出くわして逃げた事がある。しかもその内一度は、水栄が俺に気づいた。しっかりと目が合ったのだが、そんな俺の前で水栄は、上に乗っていた会計親衛隊の隊長を貫く事を止めなかった。
自然消滅。
そんな言葉が頭を過る。
俺から連絡をしてみれば良いのかもしれないが――今更ながらに、俺は水栄の人気に気がついてしまっていた。水栄の周囲には常に人がいるし、水栄に恋焦がれる生徒も多いし、何より大人気の近づくのも恐れ多いとされる生徒会メンバーなのである。
一方の俺は、平凡を絵に描いたような生徒だ。
そもそも釣り合いが取れないし、一時期とはいえ、水栄が俺を好きだったという事がもうまさに奇跡である気がしている。
そんな俺であるが――困った事がある。
本当に俺は、水栄の体無しにはいられない身体状態にあったようで……最後に体を重ねたのが四月である現在、ヤりたくてヤりたくて仕方がないのだ。だが、俺は浮気はしたくない。しかし体は熱い。
それもおそらく、普通のSEXでは満足できない。
思いっきり縛られて鞭打たれながら、快楽に浸りたいと望んでいる……。
改めて考えると、俺は水栄に調教されたのだろう……。
もしかしたら、水栄には、途中から愛など無かったのかもしれない。
俺を一種の犬――奴隷として、遊んでいたのかもしれない。
思い返せば、いつの間にか、好きだとか、愛の言葉を囁かれる事は無くなっていた。代わりに、犬扱いされ――しかも俺はそれに喜んでいた。
だが、平々凡々な俺である。この広い学び舎といえど、俺に快楽調教をしてくれる人間が、果たして何人存在するのか……。存在したとして、その人物は水栄では無いのであれば、浮気となってしまう。
ここは、きっぱりと別れてフリーになれば良いのかもしれない。
そうも考えるが、水栄に未練たらたらの俺もいる。
水栄から連絡が来たのは、七月末――夏休みに入ってからの事だった。
呼び出されて、浮かれて出かけていった俺は、水栄の部屋で、生徒会メンバーに囲まれた。生徒会役員になったため、現在は水栄も一人部屋なのである。
「コイツは?」
「去年開発してた奴隷だよ」
生徒会長の言葉に、水栄があっさりとそう言った。どこかで分かってはいたものの、俺は衝撃を受けた。胸の中に、じわりと痛みが広がった。
「こんな平凡な外見の生徒に、よく勃ちますね。本当に節操がないと言うか」
呆れたように副会長が言った。
「平凡だから良いんでしょ。俺のことを好きじゃなかった平凡が快楽堕ちする所がたまらないんだよねぇ」
「相変わらず良い趣味してるなぁ、お前。さすがはチャラ男」
会長はそう言うと、俺を見て舌舐めずりをした。
「水栄が開発済みの犬か。たまには良いな」
「僕は遠慮しておきます」
副会長はそう口にして部屋から出ていった。
その後、俺は瞬きをする間に、服を脱がされた。後ろからは水栄に抱きしめるようにされ、そんな中で、会長に陰茎をフェラされている。
「う……ァ」
久しぶりだから、すぐに果てたくなった。すると耳元で意地悪く水栄が言う。
「部長。出したら、今日はもう、イかせてあげませんよ」
「うあ、あ、や、やっ、だめ、だめだ、出るっ」
そうは言いつつ、水栄の言いつけである。必死で守るべく、俺は射精をこらえる。するとニヤリと笑った生徒会長の口淫が激しさを増した。ねっとりと舌と口を駆使して嬲られ、鈴口を刺激された時、俺は号泣した。腰が熔けそうだった。
「いやあっ」
呻きながら俺は果てた。
「本当、こらえ性ゼロですね」
水栄はそう言うと、俺の根元にリングを嵌めた。これも久しぶりである。俺の体は、明らかに喜んでいた。それから俺は、寝室に連れて行かれ、ベッドの上で両手足を広げた状態で拘束された。そのまま、右乳首を会長、左乳首を水栄に吸われた。
「うぁァっ、ぁ、ぁっ……ッ、ン」
「気持ち良さそ」
「本当、随分と淫乱に育てたな。平凡な見た目からは想像もつかねぇよ」
二人が楽しそうな顔をしながら、俺の乳首を弄ぶ。次第に俺の陰茎は反応を見せ、たらたらと蜜をこぼし始めた。すると二人が俺の全身を舐め始めた。しかし、直接性器には触れてくれない。二人がかりで俺の体を舐めるのだが、もどかしくて俺は涙した。太ももが震えだした頃、会長が指先で、わざとらしく俺の陰茎を撫でた。
「んんっ!」
声を上げた俺の前で、二人が顔を見合わせる。
「どうする? 何をしてやる?」
「今日は会長が好きに味見して良いよ」
「へぇ。じゃ、そうさせてもらう」
俺は――こうして水栄に、他者に体を差し出された。
まず会長は、獰猛な瞳を輝かせると、俺に咥えさせた。太い。鎖を緩めて起こされた俺は、四つん這いにさせられて、喉の奥深くまで、会長の陰茎を飲み込まされる。
「歯、立てたら許さないからな」
そう言って会長が、激しく俺の喉まで貫く。嗚咽をこらえながら俺はしゃぶった。何度も瞳で水栄に助けを求めたが、水栄は興味がなさそうに俺を見ているだけだ。
「よし、挿れるか」
それから会長に、慣らされるでもなく巨大な楔を挿入された。久方ぶりだったが、すんなりと俺の体は飲み込む。しかし、水栄のものとはすぐに形が違うと分かった。水栄のものに慣れきっている俺の体に、見知らぬ刺激が襲って来る。
「どう? 会長」
「おう、良い具合だ。蠢いてる」
「ひあっ、あ、あ」
「部長はどう?」
「気持ち良っ」
「ふぅん。俺じゃなくても良かったんじゃん」
「ぁ、ああっ、いや、あ、あ、違っ、水栄、水栄が良い」
「へぇ? 俺様じゃ満足できないって?」
「ンあ――!!」
会長が激しく動き始めた。四つん這いにされた俺の肌と会長の肌がぶつかる。乾いた音が響く。無茶苦茶に動かれ、かき混ぜられる。その内に水音が響き始め、会長が出したのだと分かった。しかし会長はすぐに硬度を取り戻したらしく、抜くでもなくそのまま動く。会長は荒々しく、獰猛な肉食獣を彷彿とさせた。俺の首筋に後ろから噛み付き、ニヤニヤと笑っている気配がする。それから俺は、抱き起こされた。後ろから腕を回され、下から貫かれている。
「おい、抽斗にカテーテルがある」
「あー、いいかもね」
「!」
その後、会長の手で太ももをM字に持たれた俺は、水栄の手で陰茎を持たれた。水栄がもう一方の手で、ローションをふんだんにつけた細いカテーテルを、俺の鈴口にあてがう。
「ひっ、いや、いやだ、あ、あ、あああっ!!」
尿道を侵すように、細いカテーテルが入ってくる。するとイきっぱなしの感覚になった。
「!!!!!」
カテーテルが、前から俺の前立腺を暴く。体を硬直させ、俺は目を見開いた。全身が緊張して、汗ばんだ。そんな俺を見て、微笑んでから水栄が手を離した。代わりに、会長が動き始めた。中で思いっきり前立腺を突き上げたのだ。
「いやあああああああああああああああ!!!!!」
俺は絶叫した。前と後ろから同時に前立腺を暴かれる感覚に、頭が真っ白になった。会長は前立腺を突き上げたまま動かない。
「いいな、締まる」
「へぇ、かわって」
「ああ」
続いて引き抜かれた直接に、俺が求めていた水栄のものが入ってきた。こちらにも前立腺を迷いなく突き上げられる。しかも水栄は会長とは違い、俺の体を熟知しているから、クリティカルに刺激された。俺は号泣するしかない。
そのまま交互に体を暴かれ、俺の中は、二人の白液で染め上げられた。
「会長、生徒会補佐、1枠空いてるし、どう?」
「ああ。ストレス解消枠に丁度良いな」
俺はおぼろげな思考で、それを聞いていた。
三年生でも、生徒会補佐にはなれる。これは、本来の用途としては、前代の役員が、補佐となって仕事を手伝うためのものらしかった。しかし――生徒会補佐に任命されて、俺は、生徒会補佐の実態を知った。
生徒会補佐とは、生徒会役員の、性のはけ口だったのだ。
親衛隊も暗黙の了解としているから、生徒会補佐と生徒会メンバーが行為をするのは、黙認しているらしい。場所は、生徒会室内の仮眠室。補佐もまた授業出席免除がある。
その日から……俺は、生徒会室で、飼われる事となった。