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「え、早くないか?」
「おう。近所で接続してたからな」
「そうだったのか」
「――兄上、本当に高砂先生と時東先生と、ゲーム内外で知り合いなのか?」
「う、うん。あ、っと、お久しぶり、です? いや、あれ?」
「別にゲーム通りで良いよ」
「あ、うん。有難う」
こうして、中に案内した。そして粗茶を出した時だった。
「時東、もう話したの?」
「――おう、ベンチャーの方を」
「――そう」
「何のお話ですか?」
「ああ、お兄さんをね、社員にどうかという話。レクスくんも良かったらバイトを」
「え!?」
「時東、『方を』って違う方もあるのか?」
「んー、なんだよ、鋭いな」
「ぶは、え、いや」
「――なんかな、榎波の家がレストランで、橘の家がコーヒーの輸入してるから、奴らももし、俺と高砂のリアルの心当たりが当たってるんなら、雇っても良いなっと、な。後はラフ牧師、この人、雑用係を探してる。ただし手取りは会社員なみ。社保もある。さらに英刻院閣下。彼は仕事はまだ内密であるが、まっとうな会社の経営者で、こちらも社員を探していたから雇っても良いそうだ。みんな、お前を心配してたな」
「そ、そうだったのか……なんだか、有難いな」
「牧師? 閣下? あ、あの、兄上のどういう知り合いだ?」
「「「ぶは」」」
「あ、ええとね、ゲームの中の呼び名なんだけど、雇える範囲に在住か、VRで可能な仕事なんだよ」
「あ、そうなんですか――思っていたよりも、兄上は人望があるんですね」
「「「ぶは」」」
「おう、俺の恩人だよ、憧れ。ゲームで」
「俺もそうだよ」
「お前らやめろ、やめてあげてくれ」
「「「ぶは」」」
「本音だけどな」
「うん、俺も――後は、俺達もそれぞれの家でも雇えるし、昨日史上初めて俺にルシフェリアが会いに来て、君の心配をしていたからこの話をちらっとしたら、ルシフェリアもそうだったら、雇うって」
「えっ!?」
「アンチノワールだろうってルシフェリアも思っていて、さらに昨日確信だって」
「そ、そうか……」
「――ちょっとぶしつけだけど、聞いていい? 話変わるんだけど、ゼクスって食べてる?」
「え?」
「俺も気になった。確実に病院で見かけた時よりも、十日前後で体重落ちてるだろ」
「え、いや」
「――食べてないんだ。兄上は、昨日久方ぶりに、シチューを茶碗いっぱいのみだ」
「あ、あの、急いでいただけだ」
「食欲はあるの?」
「ある! ちょっと節約を心がけているだけだ!」
「「「……」」」
「細かったのが、今、病的。VRだと、まるで作りものみたいだなって思って終わったけど、顔色とかあっちは補正はいるし皮膚までだからね、今、完全に目の下クマ」
「そ、それは、昨日遅かったからだ」
「普段は寝てるのか?」
「兄上は、葬儀以来、ほぼ寝ていない。昨日久しぶりに、四・五時間寝ただけだ」
「レ、レクス、そ、そんなことない。お前がいない時に寝たんだ」
「ほう? ハロワは?」
「え、あ……」
「――実際、六年以上ひきこもっていたが、いいや、ひきこもる前も十年近くほぼ外出していなかったわけで、体力もゼロに等しいからかもしれないが、ふらついている。貧血もひどそうだ」
「……」
「っていうかさ、なんでひきこもったの? 聞いて悪いかもしれないけど、俺的に来てないって聞いて驚いたんだけど」
「実は俺も兄上の理由を知らない。母は、家にいてOKだから、俺にも触れるなと言っていた」
「――俺は若干知ってるが、言っていいのか? というか、俺も確信は無い」
「……」
「いじめとかじゃないでしょ? ゼクス、ゲームと一緒でのほほんとしてて、人気だった。頭もいいし、運動もできたし」
「おう、それは俺も知らない。いじめていたとしたら、俺」
「時東は性格悪いからね」
「おい」
「性的暴行とか? 俺、ゲームではチラ聞きしたんだけど、最初のギルド引退風にいなくなったのさ、告られて、断って気まずいからじゃなくて?」
「……いや、なんというか、まぁいいだろ、そういうんじゃない。両方な。断ったけど」
「なんだと? 俺はそれを知らない。知りたい。え、誰に?」
「俺口軽いから言うけど、ルシフェリア・ゼストの両方」
「はぁ!? そ、それは、抜けるわ」
「……」
「どんな人なんだ?」
「二人共に伝説級の有名プレイヤーだけど、ゼクスはもっとすごかったんだよね。今も二人よりすごい」
「そ、そうなのか。女の人もやっているんですね」
「「「ぶは」」」
「いや、あの、言いづらいが、両方男で、お前の兄は、猫アバターだった。二足歩行」
「ぶはっ、え、獣趣味?」
「「「ぶは」」」
「いやその、腕前とか優しさかな? きっと」
「「「ぶは」」」
「ルシフェリアは一緒に始めたも同然で、ずっと好きで、ゼストはゼクスに憧れて初めて、実際に会って惚れて、ゼストとゼクスが仲良くなってルシフェリア嫉妬で、両方告った」
「高砂やめろ」
「ごめん」
「――なお、俺達同じギルドだったんだが、俺と高砂以外の二名が同じように告った直後来なくなったから、リアル事情ではなく、それは口実説が濃厚だったんだが、まさかの事態でもある。あちらもゼクスは断ってる。あちらも二名、男だ」
「そ、そうだったのか。兄上は、もてるんだな。猫か?」
「猫だよ」
「ぶはっ、だめだ、すいません、俺、ツボに入って」
「いやそれ、現実から見れば、まっとうだろうな……――俺が知ってるのは、ゼクスが倒れて、俺の病院に来たと聞いた時で、守秘義務があるからそこまでだったが、以後の欠席後の不登校は、病欠だったと聞いていたんだ、最初は」
「「っ」」
「六年生からは知らんが。少なくとも五年後期はそうだったはずだ。俺も、その後は気になっているし、今も具合が非常に悪そうだから、医師として聞きたい。どうなんだ?」
「……あのな、話すと長いけど、その内言ったほうが良いと思ってはいたんだ……あの、その、あのな」
「おう」
「俺、俺とレクス異母兄弟で、亡くなった母上は、レクスのお母さんだけど、俺の産みの母親ではないんだ」
「「「え?」」」
「小5の時、聞いていた血液型と違って、俺が聞いて分かったんだ。俺は、Oマイナスの希血で、母親はABだった。レクスはA型だ。お父さんがO型でも、俺はO型じゃないはずだし、仮にかなり少ない確率でOが出ても、マイナスは出ないそうだ」
「「「……」」」
「それでな、倒れた日、俺は――リアルでも男に小五なのに告白されて、断ったら、刺された」
「「「!?」」」
「大したことない傷で、ちょっと血が出ただけなんだけど、倒れて、ショックでからかと思ったら、俺、貧血らしくて、それでだった。しかも稀血だから、危なかったそうだ」
「「「……」」」
「五年の休みは、その貧血治るまで休みという話だ――そして治って行こうとしたら、外に、ストーカーが出た。警察指導で監視カメラ付けたら、俺を刺した人で、警察指導で自宅からでなかった。それが六年生。相手、俺が外に出ないから動かなし、当時はストーカー規制法が無かったから、捕まえられなかった」
「「「……」」」
「俺は暇だからゲームを始めてた。そして中学校から行こうという話になったら、入学式の日誘拐されかけて、今度は母さんが刺された」
「「「……」」」
「そのままひきこもりだ。ストーカー規制法が出来て、そいつは捕まった。その頃には高校生だったし、入学してないから行かなくて、そのまんまゲーム。そしたらどうやって特定したのか知らないけど、ゲームに出て、俺の事ずっとPK。それで最初のギルドを抜けたんだ。他のメンバーは関係ない」
「「「!」」」