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「うむ。びっくりしたが、納得もした。所でゼクス、ならば話が早い。生産を極めるために、薬学を学ぶが良い」
「いやちょっと待ってくれ、納得の仕方がおかしい。俺も納得したけどな、そうか、似ているとは思ったが、本人だったのか。名前が同じだからそう感じるのかと思っていたけど、違った……けどな、あのな、俺もう極める所、ないし!」
「発想や応用として、POTを使ったり販売したりする上での組み合わせ的に知っておいて損は無いし、スキルとの併用の幅も広まるであろう! 安心して良い。暗記だらけで、一部が調合実習である。今回の流れで、ゼクスならば、半月で暗記が終わると確信した。問題は、調合実習。しかしながら、安心して良い。国際医師免許取得者は、即日で随時行える。この資格は、日本では年齢制限で取れないし、VRも関係ない。国際薬剤師一本、本日開始で三月いっぱいで、国際薬剤師が取れる。そうしたら、四月一日から自由だ。GWの新エフネス大陸の公開には、余裕で間に合う。しかしながら、やらぬならば、私はその頃連日プレッシャーをかけるであろう、やれ、とな」
「うっ」
「逆に今やるのならば、今後のデザイン面の仕事に関しても、ゼクスがゲーム多忙時は、周囲にそれとなく伝えてやろう」
「……うっ……も、もし、取れなくても、4月いっぱいで、中止しても良いか?」
「良い」
「が、頑張ります」
「うむ! 用意は終わっている。学習システムに行くが良い。なお明日からは、朝食後の三十分が終わったら、午前中はクラウンズ・ゲート。午後は全部薬学とする」
「はい!」

 と、決まった。父上とレクスは笑顔だった。さらに、ゼクスの敬語を中断させてさらに超親しげに変わったザフィスをチラ見した。気弱なのは変わらないが、断ろうとしていた。さらに「極めるものはない」とか言わせていた。明らかに、個人的にそこそこ親しい。ゼクスは席を立っているので、残った祖父に二人が聞いた。

「知り合いだったのかい?」
「うむ。私というか、共通のフレがいてな」
「お祖父様はいつからやっているんですか?」
「私は、閉鎖テストからだ。ゼクスの後だが――お前達が天球儀と青十字のギルマスならば、もっと前からだな」
「光栄だな、知っていてもらえて」
「俺もです」
「逆に知らないプレイヤーの方が少ないだろう」

 そんな話をした。だが、その後、お祖父様は大学に呼び出されて出かけて行った。ゼクスの論文がすごいという話である。あれは、医学部の院の先行も兼ねているため、取り合いらしい。それとなくそれを断りにも行ったのである。明らかにゼクスに行く気は無いし、もうVR医学専攻の院が、受かっているのである。どころか、修士資格を得ているから、別に行かなくて良いのだ。

 そこからまた、怒涛の勉強の日々が始まった。この月も9回外出しただけである。だが取材の時に『新しいことを始めよう』という記事作りになり、秘書が『デザイア設立』『医学部卒業』が昨年度、今年度は『デザイアとグループの共同VR医学製品』『薬学』と文章を作ったので、インフィニティがとくダネに盛り上がっていた。なお、発売号は、クエイクスは、バレンタイン特集でレクス&ゼクスを希望したため、チョコレートがいっぱい届いたが、危険物が混入していると大変なので、ゼクスには知らせずに破棄である。老若男女問わずに来ていた。

 そして三月、9回の外出後、ずっと勉強&実習だ。作って作って作ってである。途中で、卒業証書とか認定証書とかが届いていたが気にせず作っていた。結果、3月21日に、国際薬剤師が取れてしまったため、インフィニティに連絡して、薬学も前の年度の成果側に移してもらった。ギリギリ間に合った。前日発売号は、まだそのニュースではなくて、今年も新社会人用だったのだ。ゼクスが表紙なのは同じだが。なおこの月、日本でも各国でも年度を振り返る決済が出て、ここまでずっとエクエス・デザイアが1位、それが大ニュースになった。二位は、グループのVR医学で、エクエス製品を導入しての新手法によるランク独占である。三位と四位はハーヴェストの黒騎士委託とグループのエクエス委託だ。たまに二位から四位は混ざる。それで月の頭だけ、黒騎士が二位にくい込むが、売り切れですぐに落ちる。この繰り返しとなった。五位は時々で変わる。エクエス・デザイアは、もう、不動の大企業ポジションを確立していた。兄上のモデル人気は、まだ瞬間風速の可能性がゼロではないが、エクエス・デザイアは、もう無くてはならない存在感である。

 さて、三月いっぱいは、お休みとなった。朝食の時間が、十時半に戻った。だが、その時に、クライスとレクスは休憩として、ザフィスは同じとして、四人で固定の食卓となった。会社についての話をする。その後ゼクスは、二時まで仕事をして、一時間お茶で、三時になる。三時から翌朝の十時半までが、ゼクスの自由時間である。何がお休みかというと、デザインが自由なのと、医学系の仕事ゼロな点である。四月からは、ザフィスと一緒に、月に2回、外科手術が決まっていた。鈍らせないように、かつ磨くらしい。年2じゃない。月2だ。多い。もうそれは、お医者さんである。しかも日本ではできないから、毎月月末から頭まで、海外に行くのだ。そこで、4&5、5&6、という形となるそうだ。英語・ドイツ語・フランス語をペラペラにさせる計画らしい。というかもう、食卓のやりとりは、ドイツ語だ。レクスは、母親がドイツ人だったし、クライスはハーフだし、ペラペラなので、ゼクスも頑張るしかない感じである。イギリス英語もアメリカ英語も、である。大体が、ドイツかアメリカだが、必ずしもそうとは限らず、フランスやイギリスの場合もある。結果、ドイツとフランスとアメリカの雑誌は現地で撮り溜め、イタリアはドイツとフランスの時に来ることになった。さらに中国の雑誌が、アメリカにおいて撮影を希望して、そうなり、なんとロシアのファッション誌まで参加希望で、こちらが日本にくる。プラス、VR先進国のスウェーデンとスイスも、日本にくる。この二箇所と国際VRファッション誌は、日本で撮影するそうだ。やばいことである。そういう撮影日程なので、撮影は、月に15回となり、手術旅行は、頭3日後ろ4日の一週間なので、実質、3週間は、お仕事なのが、4月からだった。ゼクスは嫌そうだった。涙ぐんでいた。

 だが、4月は訪れた。早速手術旅行からの開始である。戻ってきて、週五日ほど撮影して、二日は休みというか、ザフィスとのデザイン、それを三週間やって、インフィニティの発売(完売)を迎えた後、翌月の黒騎士商品を決定して、また手術旅行となった。以後、この繰り返しとなった。5月の話題は、エクエスがトップ独占1年経過というもので、エフネス大陸についてではなかった。だが、家にいる時は、4月からは、十時から食事兼会議十一時から一時までの二時間がデザイン、一時から一時半までがお茶、一時半からは自由行動となり、撮影は大体、二時から五時の間には終わっている。週二日のデザイン時は、午前中の二時間に行うので、午後はフルで空きだ。その間に、ゼクスはゲームらしかった。瞬く間に時間は流れていき、夏が終わろうという頃になった。そして九月手前、ゼクスと祖父が、一ヶ月半、アメリカに、二週間程度ドイツにいると決まった。十一月のゼクスの誕生日前日まで、日本に戻らないとなったので、急遽、撮影をまとめて八月末と十二月頭に割り振った。理由は、ガッツリと手術および医学薬学研修である。これをクリアしたら、もう旅行は無しだと約束したらしい。クリアしたら、VR手術のみと決まったそうだ。

 さて、九月一日から十一月二十六日まで、アメリカに一ヶ月、ドイツに二週間、ゼクスは旅立った。怒涛だったのだが、なんと十月の二十五日に、『奇跡』として、超難関の手術に成功した大ニュースが飛び込んできた。執刀、半VR外科でザフィス&ゼクス。半VR外科というのは、VRで動かして、遠隔で手術するものであり、二人は、アメリカから、フィンランドの奥地の、VR医学設備は完璧だが、現地に医者ゼロという研究施設で、近所に住んでいたその設備開発研究者の子供の、交通事故により潰れていた脳と心臓を見事修復して、蘇生成功とし、さらに後遺症ゼロで意識が回復しているというニュースだった。脳をザフィス、心臓をゼクス――『実際の映像です』といって、操作が流れた。半VR外科なので、白衣だったのだが、クソかっこいい。しかも真面目に、これは二人共に天才である。ザフィスも顔もかっこいい。研究施設から見学に来ていた医師が、アメリカの二人の所にいて、知らせて、その場でザフィスとゼクスが対応したのだが、これはやらせではなく事実である。その後のドイツ、大歓迎され、さらに、帰りにフィンランドも回って、六の飛行機で七着のはずが、七の飛行機で、誕生日の二十八日に帰ってきた。もう、なんか、ヒーローである。誇らしかったレクスは、笑顔でプレゼントを渡して、それを撮影して、クエイクスの記事として、仕事をひとつ減らした。年明けに載る。