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 さて、12月28日から、ゼクスは、ゲームにひきこもったが、いつもの事だから、変化は不明だ。1月が来て、この1ヶ月間は、デザインスキルのアップに関して、ゲーム内部の話題が傾いた。2月の登録開始から、外部も入ってくる。その日から、専用倉庫を『経営スキル』を挙げると入手できて、こちらも課金でも手に入る。3月から、ゲーム通貨とリアルマネーの置換露店を実際に出せる。オリジナルデザインは、そちらにしか置けない。そして4月開店である。これは、1月から練習開始可能で、かつ生産スキルを企業側も少し上げる事が可能で、そこプラス2月いっぱいが商品用意期間であり、3月からモデル展示と販売テストと言える。VRシティとは異なり、複製制限が独特で、高レベル武器は複製できなかったりする。できても2個までとか5個までとかである。さらに、品質がプラス1〜9まであるのだが、9という最高品質の武器も、複製困難である。逆にオシャレ装備は、シティよりも緩くて、何着でも複製できたりする。これらは参入時であり、投入している『資産』の金額により、経営スキルが上がっていれば、何着でも、であり、上がっていなければ、複製はできない。無論、無料側でも店舗経営や売上数からレベルは上がっていく。5万円の『デザイン適用』が、レベルを上げない場合で無資格時の参入側の最安値で、これは、持ってきたデータをデフォルトのレベル1商品に、適用可能なデザインスキルとなる。なお3万円が『経営スキル』の入手であり、出店代である。これだけは、払わなければ、出せない。この時点で、倉庫1個とお店1個が貰える。後は金額を増やすか、レベルを上げるか、だ。

 2月になり、登録開始となった。ゼクスは、3万円払ったらしい。資格はあるから問題無いのだろう。それを聞いてホッとしつつ、レクスは「兄上は、1店舗なのか? 良かったら何店舗か出してくれ」と言ってみた。するとゼクスが微笑した。課金代から店舗代が出せるから、もっと出せると言っていた。そう――ゲーム以外でゼクスはお金を使わない。ゲームの月限度額の30万円は、だが毎月使っている。買い溜めみたいだ。夢だったらしい。月末になると、無理にお金を使っているのが分かる。といっても、ゲームに課金しているだけで、ゲーム内貯金みたいなものだ。リアルマネーとの置換も、それを利用して行うため、それで店舗も増やせるし、経営スキルも購入可能だ。「五店舗やろうかと思ってな」「多いかな?」と言っていた。少ないほどだが、レクスは嬉しいから是非やってくれ、というにとどめた。3月が待ち遠しかった。兄上に「最初は、商品をロックして、売る前に周囲の様子を見ると良い」と、レクスは教えた。じゃないと売り切れだという確信があったからだ。ゼクスは、「勉強になる……」と、言っていた。

 こうして、3月が来た。三月一日、レクスはドッキドキだった。兄上、どうなんだろうなぁと思っていたのである。この日まで、公式側も閲覧できないようになっていたのだ。各企業の秘密もあるからである。そして結果――度肝を抜かれた。

 1店舗目――黒騎士の装飾具店。ここまでは予想内だったし、『レベル360装飾具』というのも、兄上は生産が高そうだから、そこまで度肝は抜かれなかった。既存デザインからオリジナルデザインまで、50商品ある。各99個。複製はできないので、そう、1個ずつ作ったとしか思えない……全部プラス9だ……その部分は、唖然とした。しかし、まだわかった。理解できなくはない。経営者『ゼクス』である。販売元は『エクエス・デザイア』となっている。

 2店舗目――アンチノワールのギルドホーム店。レクスは、意味が分からなかった。『建築スキルの成果物を売る人』は、想定はしていたが、実際に見るとは思わなかったのだ。さらに『アンチノワール』である。黒騎士のライバルになるかなと思っていたが、そうでもなく、月に2個くらいの新商品追加でおさまっている、あの人気ブランド、あのアンチノワールの内装そのまんまのギルドホームなのである……。え? 経営者は『ゼクス』であるが、販売元は『ギルド・アンチノワール』だ。ギルド露店とする場合は、そう書くのだ。アンチノワールがギルドでゼクスがギルマスとは聞いていたが、ポカーンである。しかも、ギルドホーム、500人収容可能な、つまりレベル200以上なのだ。というか、2軒、3000人収容可能という、レベル360のギルドホームがあるので、これもカンストなのだろう……。なお、30人が50個、50人が50個、100人が30個、300人が20個、500人の家が10個、1000人が5個、2000人が3個、3000人が2個の、8商品の合計170個がある。そこに42商品各99個として、内装のみが売っていて、これも完全に、アンチノワールの既存作かオリジナル新作である。デザインを外部から入れているので、パクリとかではない。内外共に、VRデザインは、パクリ防止フィルターがあるのだ。本物である……兄上、アンチノワールも兄上だったのだ。なおこれらは、商品棚のマークタッチで、モデルが見られる。

 3店舗目――鴉羽商會の武器店。実は、レクスはこれに一番ポカンとなった。ゲーム内部の幻の生産者、神、それが鴉羽であり、鴉羽武器はみんなの憧れかつ、伝説だ。見てみる。碑銘『銘・鴉羽』であり、本物だ……。レクス的に、黒騎士だのアンチノワールだのより、これが欲しい……。全て360レベル武器、プラス9である。50商品、こちらも――99個ずつ。しかも全部オリジナルデザイン……。どう考えても1個ずつ作ってるわけだが、今回に限り、99個しかないのが辛い……。全10職の武器が5種類ずつだ。経営者は『ゼクス』で、販売元は『鴉羽商會』だ……個人露店名だ……登録制だから分かるが、本物だ……しかも、武器デザイン……死ぬ程カッコイイ……。

 4店舗目――黒曜宮クラフトというスキル書店。実は、スキル書とレシピ書は、ペンネームなのだが、唯一のカンストスキル書製作者のペンネームは『黒曜宮』なのである。超有名だ。スキル書界の鴉羽である……。たまにしか出ないが、360カンストだと分かっている。この人物しか、360レベルのスキル書は書けない。そのスキル書、レシピ書が、50種類、99個、オリジナル装丁で売っている……。料理15、薬剤10、回復5、各職それ以外に2種類ずつで20、合計で50種類、99個、全部360スキル書だ……。経営者『ゼクス』の販売元『黒曜宮クラフト』であり、これは、ペンネームと一緒に作れる『出版元』で使われていたものである。

 5店舗目――最後は、『桃花源』という、伝説の露店名……鴉羽とルシフェリアとイリスが三人いたという、伝説の店名だ。共同のお店クランだという。ルシフェリアは武器、イリスは復古聖遺物という装飾具と薬剤POTで有名だ。何を売っているのかというと――どう見ても黒騎士のデザインのルシフェリア武器(銘・ルシフェリア)と、エクエス・デザイアのパッケージの薬剤POTである。さらに、黒騎士デザインの、復古聖遺物、銘・鴉羽。プラス、ヴァイオレット・ムーンという、これまたVR大手ブランドのデザインの復古聖遺物。こちらの銘・イリスだ……。どころか、『インフェルノ・パラノイア』という、アメリカで大ヒットの絶大的なゲーマーに支持を受けている、あちらの露店に参画しているVRゲーム武器デザインベンチャーの武器、こちらは、銘ルシフェリアと銘鴉羽が売っている。レクス、冷や汗をかいた。経営者は『ゼクス&ルシフェリア&イリス』であり、販売元は『桃花源』だ。

 6店舗目ではないが、隣には、『ヴァイオレット・ムーン』と7店舗目『紫月』で、経営者『イリス』があり、8店舗目は、『インフェルノ・パラノイア』かつ9店舗目に『エンジェリカ』で、経営者が『ルシフェリア』に二店。エンジェリカは、ルシフェリアのギルドだ。紫月は、イリスのギルドだ。これ、やばい……。なお、抱きたいランキングで、三回ゼクスに抜かれて復帰した1位――イリスである。モデルであり、俳優だ。また、インフェルノ・パラノイアは――エクエス・デザイアが抜き去った、当時の1位か2位固定だったVR環境システムの開発会社の代表が趣味でやっていた会社であるから、それはルシフェリアという事である……、凄すぎる……え?