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 開始三ヶ月目の時点で、俺は全職をカンストさせた。攻撃系の戦闘スキルは、暗殺者と聖職者はカンストだ。他は五割から八割だった。生産は、前から持っていたものは、120くらいになり、新しいのは80レベルぐらいだ。これでもギルド内で、イリスと同着1位くらいである。四ヶ月目に、魔術師と錬金術師と僧侶もカンストした。新しい生産は100まで頑張った。イリスが一気に上げるのを試して、生産は150がキャップだと判明した。五ヶ月目に俺は冒険者も上げきり、生産一直線となった。全然上がらないが死ぬ気で続けて、既存が150になった。そして六ヶ月目に新しいのも150になった。暇だったので、学習システムも全部上げた。生産は二個同時上げや学習システムと並行が可能なのだ。調理と調合から薬膳料理、という流れだ。その合間に薬学部のお勉強も可能という流れである。ただ、どう考えても、俺とイリスのように全部自分でじゃなく、できる部分で協力してのはずだった。合成手前まで全部俺が用意して、ルシフェリアが武器を作る、という流れがかなり定着しているので間違いない。桃花源・銘である。職やスキルも、これはゼスト開始時点で明らかだったが、普通は自分のを伸ばして、他は欲しければ、で、別の人とパーティを組むゲームであるのは間違いない。つまり俺がやったのは、俺の意地以外の何者でもない。半年して気づいたのは、それである。一年半かかってやっと気づいたとか、俺は馬鹿だ……。友達作りに始めたのに……。

 まぁ、そう我に返った理由の一つは、追加されたマップが、今までのような街開放のための攻略ダンジョンとボスではなかったのも大きい。左側は、今後、月に一個ずつ、そういうものが追加らしいのだが、右は違ったのだ。だから俺達は、毎月頭に、新しい一個を攻略すると決めただけである。右には、なんというか、大きな街があった。そして地下に廃棄都市遺跡というダンジョンフィールドがあって、地下一階が迷路、二階がモンスターがいる場所、三階が入る度にダンジョンが生成されるらしい行く度に違う部屋、という形だったのだ。だが、これと言って強いわけでもない。敵のレベルは、120くらいだ。新大陸最初のダンジョンのフィールドのモンスターとあんまり変わらないのである。

 もう俺は、全部上げちゃったし、行ってない場所も特にない。やる事は、じっくり各地の風景を見て回る事とか、素材集めとか、オリジナルブランド物制作くらいとなってしまったのである……。ギルド内でも、これは俺だけだ。すごいと言ってもらったし、最初は達成感があったが、どちらかというと虚しい。ギルメンのレベル上げの手伝いばっかりしている。後はイリスと生産だ。だが、俺が手伝う機会はあんまりない。なぜならば彼らは他の人の手伝いに行くからである。俺も行こうかと思ったのだが、武器作りの方を求められた。俺とイリスしか上げていなくてイリスは回復POTをメインにしているし本人もそれが好きだからというのが大きい。桃花源は、もうかなり有名である。後は、装飾品の服を鴉羽商會で売っているのだが、結構人気である。これはテンションが上がる。俺デザインであるし、俺は元々デザイナーだ。しかしそろそろ名乗りづらい。今、だって、無職のようなものだ……。ゲーム以外、やってない。俺の周囲は、誰もそれを止めないのだ……。

 ちなみに課金アイテムがあるから、キャラレベルが、200になった人はいっぱい出てきた。だが、中身の職や攻撃は、ハードルが高いようだった。生産も勿論だが。しかし七ヶ月目くらいで、最初のヨゼフ大陸を攻略した人がちらほら増え始めた。ルシフェリアとゼストのどちらかと一緒のグループが多い。クラウ組も適度にいる。ハルベルトと義兄弟は、ルシフェリアと一緒か、ゼストと一緒か、というのが多い。パーティに一名入れて、ギルドパーティでみんなで攻略、というのが、圧倒的多数らしい。クラウが、単独でパーティに入り、単独で連れてくる、という普通の支援なのだが、逆に例外みたいになっていた。大抵回復スキルがある人がいるから、そこまでイリスは呼ばれない。俺は、ルシフェリアとゼストとやる事はほぼ一緒だし、クラウは滅多に自分の支援にギルメンを呼ばないから機会もなく、俺は全然どこにも出ない。寂しい。ゲームでもぼっちだ。武器作りや服作りは需要が消えないので、ひたすらやっている。だが他にやる事があんまりないので、廃棄都市遺跡の見た事がない都度都度できるダンジョンに、一人で遊びに行ったりが増えた。イリスは、フレンドを作って適度に交流をしたりしている。他に俺は、課金アイテムで、家を弄ったり、生産技能で家の備品を作ったりしてばっかりだ。ランプとか意外と売れたりもする。その後、生産用の畑などが課金で買えるようになったので、買えるものは全部買って、家を大きくした。これは生産をしていなくてもギルメンが全員やっていた。素材を渡して作ってもらえたりするからだ。倉庫とカバンの拡張も俺達は全員やっている。

 そうして一年たったら――恥ずかしい事態が発生した。

 なんと、各種ランキングが発表されたのだ。まず、ギルドランクとお店ランクは兎も角、個人ランクが悲しい限りだった。

 キャラレベル1位は、いっぱいいる。200レベルが上限だ。次の職レベルだが、一個一位は意外といる。ただ、全部一位なのは俺だけだ……。暗殺者一位の200レベルは、俺とゼストとルシフェリアとイリスと義兄弟二名。錬金術師は、俺とイリスとルシフェリア――これは生産に関わるというのもある。魔術師と聖職者は、ギルメン全員一位で200レベルだ。これに関しては、ギルド外にも一位がいる。僧侶は、俺とクラウが一位で200レベルだ。冒険者は、ルシフェリアと俺とゼストが一位で200レベル。一位の職だと、俺が6つ、ルシフェリアが5つ。ゼストとイリスとハルベルトが4つ。義兄弟二名とハルベルトが3つである。ここで結構きつい。ただここまでなら「すごい!」とも思える。まだ感激のすごい、だ。しかし、『習得スキル数』と『職業別スキル合計レベル』で、何個スキルをとり、それが一個どのくらいのレベルか平均を出せてしまう順位が出た。勿論、普通は平均を出しても、レベル200とレベル1の場合はレベル100としか出ないから問題が無い。けど、俺、全部のスキルを全部200まで上げているから、丸分かりだったのだ……すっごく恥ずかしい……。しかも、これ、俺が一位で、二位のゼストと三位のルシフェリアは、倍ぐらい違うのだ。四位のクラウが俺の三分の一くらいなのである。

 また、生産のランキングも、何とも言えない。こちらは、料理とか薬剤とかの総合各種は、やはり職業のように一個ずつ名前が出た。これは、俺とイリスが全部一位で、武器系にルシフェリアが一位でいる。そして個別が、習得数と合計レベルで、これも俺とイリスが一位だ。だいぶ離れて三位がルシフェリアである。俺達の六割部分くらいにルシフェリアがいる。その次の四位は、俺の十分の一ラインなのだ……。そして、戦闘系ランキングと生産系ランキングの両方の一位に入っているのは、俺とイリスとルシフェリアであり、他には誰もいないのだ……。かつイリスは生産、ルシフェリアは戦闘よりだが、俺、両方って、どんだけ廃人なんだろうという感じだ……。

 なお、お店のランキングの一位は『桃花源』『桃花源クラフト』『紅き黒翼』『ショコラ・クラフト』『鴉羽商會』である。全部俺達三人だ。ギルド露店と個人露店も出たのだ。また、碑銘ランクがあって、『桃花源』と『ルシフェリア』と『鴉羽』が出た。なんかこれ、すごく恥ずかしい。まぁ名前が出たルシフェリアほどでは無いだろう。

 さて、ギルドランクであるが、ぶっちぎり一位が『ゼスペリアの教会』である。何せこれは、ギルドホーム・敷地・資産の状態、露店状態がまず出る。それは兎も角、メンバーの合計などが出るのだ。人数ではなくて、レベルだ。人数や基本職業数も表示されるが、そうではなく、合計でキャラは1600レベル、というような表示である。さらに、ギルマス・サブマス二名・執権五名は、キャラ名とキャラのレベルと基本職と職内レベルが表示となる。俺達は、全部一位である。一位は、俺達以外は、キャラと聖職者と魔術師にぼちぼちいるだけなのだ……。ギルド一位に関しては、素直に嬉しいが、なんかこう、何とも言えない。すごいな、と、思った。正直。二位まですごく間が空いている。二位から十位くらいはまとまっていて、近接していた。十位以内にも、ひと組いたが、十位から二十位までは、公開後に作成されたギルドも半々くらいだ。前からいたメンバーと後から来たメンバーの両方がいるギルドも多い。

 また三ヶ月後に発表されるらしい。上げなきゃいい、と、ならないのが悲しい。だって俺はもう、全部上げているのだ……。ゼストとルシフェリアが気合を入れて上げるらしいから期待するしかない。ただ、「さすがはゼストのギルドのギルマス」とか「ルシフェリアのギルドのギルマス」とか「クラウのギルマス」とか「イリスのギルマス」と各地で言われているそうだ。と、彼らが教えてくれたのだが、本当かは知らない。

 これは、ゼストとルシフェリアが「これほど強い人がギルマスじゃないのは不思議だ」と言われ、イリスは「イリス以上に生産できる人がいるのか? 生産ギルドを立ち上げろ」という流れであり、クラウは自分が認めない相手には従わないかららしい。ハルベルトと義兄弟は、自分でギルマスをやったりするタイプではないそうだ。しかし他の四名は、なぜやらないのか不思議だったらしい。

 そう言われても複雑な気分である。さて、この時に他に明らかになったのは、万象院と月讀は、俺達以外に信仰している人がいない事と、公開テスト後の作成ギルドには出現しないという事だった。知らなかった。また、『緑羽万象院』『朱匂宮』『ゼスペリアの青』という言葉が、ゼストのおかげで評判になった。緑で一番強い、赤で一番強い、Otherの中で一番強い、という評判である。本当かよ。突っ込みそうになった。Otherはルシフェリアのルシフェリア・ルビーも強いが、回復・攻撃の両面だとゼスペリアの青らしい。ルシフェリア・ルビーも回復もできるが。また、短距離・超強力でも瞬発・持久力でも、単体・範囲でも、クラウがダントツで有名だ。これは二枚目の右側である。この説明の時、クラウが「ゼクスの右と一緒」と説明するから、それも有名になった……。現在それは、『鴉羽色相』と呼ばれている……。ちなみに沢山の色の左側は、『ロードクロサイト色相』と呼ばれるようになった。左は、公式がサイトにそう記載したのである。色見本だ。

 装備も俺は最高である。だって、俺が作ったやつが最高だからだ。なんかこう、なんだかなぁと思った。地味に、学習システムのランキングも出ていたのだが、最高学府・天才機関・医療院が全部習得最高評価であり、経団連は名誉会員という三名しかいない評価だった。俺とルシフェリアとイリスだけど……。俺は本格的に、何していいのか不明になった。みんなはこれをきっかけに、人気が再度爆発したらしいし、ブログを見る人が増えたりしたらしいのだが、元々の人気やブログも無いし、俺はそれは困るから顔だって目立たない感じにしていたのである……だからブログとか死んでもやりたくない……。

 という事で、俺も支援でもやろうかなと思った。フレも欲しいというのがある。月の頭の攻略以外は、フルで暇なのである。装備も装飾の服も薬剤POTもあるし、新フィールドの素材や薬も結構あるから、必要になったら放出するだけで良いのだ。どこに行こう……そう思って、とりあえず久しぶりに、前の大陸であるヨゼフ大陸に行ってみた。そして初心者の街に出かけた。