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さて、月初めの攻略を終えて、三ヶ月目に入った。テストを入れたら二年三ヶ月である。今回、あと三ヶ月後に、レベルキャップの開放があるというニュースが飛び込んできた。やっとこう、やる事が出来そうである。すごい楽しみである。ギルメンも周囲も、レベル上げの熱気が高まっていた。武器も飛ぶように売れるし、POTの需要も半端ない。様々なレベル帯でそれは同じだ。なんていう三ヶ月間に、いくつか事件(?)が合った。
一つは、リアルが多忙につき、クラウがしばらく休止というものである。もう一つは、イリスとハルベルトが派手に喧嘩して、二人共ギルドを抜けるというものだった。イリスとは桃花源と『ゼスペリアの教会』の二個のグループチャットで常に話せる。ハルベルトとも『ゼスペリアの教会』のグルチャで話せる。抜けるという決断がしやすかったのは、それも大きいだろう。喧嘩の理由は、『回復に呼ぶな!』『POTを作らせるな!』というのがイリスの主張である。というか、イリスは自分がというよりも、ハルベルトがギルドに支援要請を結構するのがイラっとしていたようだ。なおこれは、口には出さないがゼストと義兄弟の弟も同じ見解だったようである。ルシフェリアと義兄弟の兄は、どちらとも言えないという感じだったようだ。俺は何にも考えてなかった。ギルマスとして仲裁を、なんていう前に、二人共抜けると結論を出していた。これは元々、ハルベルトは支援ギルド、イリスは聖職者&薬剤POT生産のフレとのギルドを検討していたかららしい。イリスの周囲は、全く同じ悩みの回復役と生産者が結構いたようだった。
なので、レベルキャップ開放の時から、攻略が、俺とゼストとルシフェリアと義兄弟になった。誘ったのだが、今回はパスするという双方からの回答だった。逆に必要な時は声をかけてもらうという形になった。また、ギルドランクのメンバーから二名が消えたので、周囲は騒然となったらしい。なお、この時には、ギルマス1、サブマス1、執権1でギルドが作れるように、また制度が変わっていたから、ギルドの消滅は無かったし、全員抜けても俺達の所は残るので、そこは大丈夫だった。
キャップは、全部がレベル350になった。なんだか切ない気持ちだったが、気を入れ直して、ここから俺は、またレベルを上げる事にした。半年で、キャラと暗殺者、錬金術師、生産の料理と服飾と武器、薬剤がレベル350でカンストした。後は学習システムも大丈夫だった。しかし中々全部は厳しい。聖職者は、特に上がりが遅い。そういう仕様みたいだった。一年後に、なんとか職を全部と、生産の総合的なのを全部、生産個別だと料理と薬剤と武器と服飾に必要なのを上げた。結果的に、防具と装飾具も上がった。ただ、個別スキルレベルは、6つの職で4つくらいしかカンストは無い。マゾゲーである……。一年目の結果発表時に、それでも俺は、全部一位だった。カンストしていなくても、である。キャラカンストが、俺達五人の他には、そもそも三名しかいなかった。フル課金でもそうであるし、キャラだけ上げても職と職ごとの攻撃スキルが上がらないと弱いというのは、もうみんな知っていたからというのもある。この場合、フィールドのモブはよってこないが、戦った場合、全然攻撃が効かなくなるのである。さらに経験値の入りも悪くなるから、上げすぎない方が良い場合もあるのだ。暗殺者に関しては、五人とも暗殺者であり、一位だった。聖職者は、俺とゼストとルシフェリアが一位で、義兄弟は五位である。重複しないので、二位から四位は別にいる。義兄弟は、同じところを目標に止めたから同じ順位なのである。二位は、時東という人で、三位はイリスだ。四位は、ドドンとラフ牧師である。流石だ。錬金術師は、一位が俺とイリス、二位がルシフェリアだ。生産の関連だ。僧侶は、一位俺、二位がラフ牧師で、ここもドドーンと来た。ちなみに三位は高砂という人であり、クラウは名前が無いかと思ったら、七位だった。五人しかクラウを抜けなかったという事である。冒険者は、俺とルシフェリアが一位二位で、魔術師は、俺とゼストが一位、二位がルシフェリア、三位がハルベルトだった。みんな、一位なのはカンストである。生産は、俺とイリスが総合は全部一位だが、個別は習得数も合計レベルもどちらも違った。直接聞いているから知っているが、イリスは武器系は全部捨てている。薬剤がすごい。そちらを極めるそうだ。
そこからまた、俺はスキルと生産の残りのレベル上げを頑張る事にした。そして、ゼストとルシフェリアは、しばらくはレベル上げを休むという予定通りの宣言をした。一年はレベル上げを重視予定で、その後は休むと言っていたのだ。義兄弟は、ちょっと前から既に休んでいる。こうして各自バラバラに行動を開始して一ヶ月半後、クラウが復帰した。と言っても、完全休止ではなくなったという事であり、前のように廃人というわけではない。なんかこう、大学生だったのが、就職した、という感じみたいだったが、あんまり聞かなかった。俺は、一回だけモデルの仕事をしたら、なんかテレビにいっぱい流れたから、もうモデルだとみんな知ってる。デザイナーだというのも、報道されたのだ。写真しかとっていないのだが、「これは誰だ!?」という流れで開始である。家族が会社のお菓子の新商品の宣伝に使ったのである。まぁ課金しているから、貯金が増えるのは良い事だ。この流れで、義兄弟が中学生だとか、ゼストは俺と同じ歳だとか聞いた。ゼストもルシフェリアも無職だと言っているが、ルシフェリアは特許で食べているから、何してるのかは不明だ。ただ、別にこう、聞くほどではない。俺も聞かれたく無いからだ。
俺は、クラウがいる時は、クラウとレベル上げが多くなった。一人の場合は、一人でレベルを上げている。スキルと生産だ。素材集めと消費とも言える。今までもこういうのは多かったから、適度に生産の話でイリスと話すこともあれば、俺は別に手伝いをしてもしなくても良いのでハルベルトに頼まれたら出かける場合もある。それはルシフェリアやゼストの場合もそうだ。後は、俺と義兄弟二名の組み合わせが結構増えた。二人と一緒にレベルを上げるのもよくある。他には、定期的にラフ牧師の所に遊びに行っている。ラフ牧師も結構気軽に「POTくれ!」とか言うようになって、なんだか逆に俺は嬉しかった。その流れで、クラウとラフ牧師も面識が合ったから、二人で会いに行った。そうしたら、僧侶三位だった高砂という人がいた。この月の発表では既に、クラウが抜き返していたから、俺・クラウ・ラフ牧師・高砂の順で四位までだったので、トップ勢揃いとなった。なお、五位がルシフェリアである。高砂は、クラウのファンで、ハルベルトブログのクラウのステータス紹介を見て始めたらしく、一枚目と二枚目がほぼ一緒だった。違いは二枚目の左側と、三枚目の配布部分などだろう。俺もゼストにリスペクトされていると言われた時は嬉しかったが、クラウも嬉しそうだった。
高砂は、開始してすぐ、ラフ牧師に声をかけられて、少ししてからラフ牧師のギルドに入ったそうだった。俺が燭台をあげた後に入ったらしいから、まだ一年くらいなのである。それでこのランキングだから、ゼストより上がるのがさらに早い。課金を抜きにしても、「ゼクスレベルで上がるの早いんだ」とラフ牧師が評していて、俺は吹き出した。複雑な心境だ。さらに、ラフ牧師は僧侶でもあるし、クラウと同じ『鴉羽色相』だから使い方も上手いしということで、ギルメンとギルマスというより、弟子と師匠みたいになったようだ。レベルが上がっても、ハーヴェストクロウ大教会にいるそうで、執権だという。クラウが珍しく可愛がる感じになり、クラウと高砂も師弟みたいになった。高砂の目標がクラウを抜く事だというのもクラウは気に入っているようだ。クラウは自分にも他人にも厳しいのである。高砂もそうだった。四人で遊ぶ事も増えて、四人で新規追加ダンジョンを攻略したりも出てきた。正直毎月の追加分は弱いから、ゼスト達と合流しなくてもあんまり問題ないのだ。この中で、俺は高砂ともフレになった。「なって」と言ったら「いいの?」と言われた。ラフ牧師と同じ反応だと驚いたら、クラウとラフ牧師が笑っていた。恐れ多かったらしい。見た目では全然分からなかった。高砂にもオーダーメイドで作ってプレゼントしたら、貰えないと言われて、「じゃあ俺が貰う」とクラウが言ったら、高砂が受け取った。吹いた。以後、高砂は、ラフ牧師と同じくらい俺に「POTちょうだい」というようになった。笑った。ただ、クラウとラフ牧師が、俺のリアルアバターを見た事があると話していたから、高砂が見たいというので見せたら吹かれた。
「モデルのゼクスと、名前と顔が同じだけど、それって作ったの? そんなわけないよね、時期的に」
と、困惑されたものである。ラフ牧師も言わなかったが同じ事を思っていたそうで、確認の意味もあったのだろう。プロのデザイナーのデザインなんだから服の趣味もいいはずだと褒められ、「なのに何故福の神をデザインしてしまったのか」とクラウに言われて三人に吹き出された。照れてしまった。そのまま半年くらいが経過して、高砂がついにラフ牧師を抜き、また、僧侶一位が俺・クラウ・高砂になった。聖職者一位は、イリスと時東という人も一位になった。それ以外は、目立つ順位変動は特にない。レベルは全体的に上がっているが、持ち上がりか、並んで抜いても飛び抜けないという感じである。俺は死ぬ気で一人でも頑張って、生産をまず最初に全部カンストさせた。そこまで上げて何に使うのかという感じである。今回こちらは、レベル200がカンストだったのだ。つまり50ずつしか上がっていないのだが、それでもここまでかかったのである。スキルに関しては、膨大な量があるため、もはや虱潰し状態で、ガンガン取っていった。それでもこの段階で八割くらいがカンストだった。二年目終了目前に、やっと全部がカンストしたのである。こんなのは俺だけだ。もはや意地しかなくて、特に意味はない。