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しかも結局ソロだ。ゲーム外では、ちょっとやばいかなぁと、二十四歳からは、つまり三年前からは、モデルの仕事を増やした。といっても、月に1回やるようにしただけである。後は、年に一回、新作デザインを出すというのを繰り返している。つまり一年に十二回だけ仕事に行き、頭で考えておいたのを一年に一回、ネットで家族の会社宛に送り、それ以外は、宅配サービスのご飯と清掃業者に全部綺麗にしてもらうのと、お風呂、睡眠だけである。俺は、VR装置の部屋から出ないし、そこにはお掃除の人も入らないから、誰とも会ってない……。撮影なんて、一日三時間くらいだ。だけどそれでもどっと疲れる……疲れるとVRをやる……これのループだ。「彼女とかいないの?」「結婚は?」と、撮影の時にたまに聞かれるが、いないという現実がある。童貞で、一回も人と付き合ったことはない……。けど、あんまり女の人は得意じゃない……かといって興味ゼロでもない……男はちなみに論外である。恋人も憧れるが、まずそれ以前に、友達が欲しい。気づいてみたら、ゲームでもぼっちだった。なんという事だろうか……。
こうして十年目――俺にとって嬉しいニュースが入ってきた。なんと、アバターが一個増えるというのだ。俺の周囲は三個目、他の人は二個目、十年目から開始の人は一個という事だ。さらにこのアバター、もう一個名前をつけられるというのだ。ゼクス以外をつけられるという事だ。人とかぶってるのは勿論ダメだが。ラフ牧師は、『鴉羽卿にしていい?』というから、OKを出した。『卿』まで入っていれば良いみたいだ。鴉羽だけだと、銘で登録済と出てダメらしい。また、アドレス帳が増えるそうで、元々の名前と新しい名前で二冊になるそうだった。これにより、連絡先交換時は、好きな方で交換すれば良くなる。そう――ゼクスと言わなくて良いのだ、ずっと。両方に今後好きに追加可能だから、ゼクスで追加したい時は、そっちでも良い。様々な使い方ができるそうだ。なんかすごく嬉しい。友達を今度こそ心機一転でいっぱい作ろうと決意した。また――今更レベルキャップが発表されて、999だというのだ。これは、俺が998になった時に、一斉メールでその日にも着たのだが、公式で発表となったのである。俺のせいだ……と、思いつつ、999にしておいたのだが。職は950のままである。みんなに吹かれた。かつ、五個目までの複合スキルは、上が350、派生は320〜370の間が最高でスキルごとにキャップが違うというアナウンスも出たのである。五個目がまず基本みんな出ていないそうで、明らかに俺向けだった。だって俺には一緒にメールが来たけど、みんなは来てないというのだ。さらにみんな、300になってないという話だ。ゼストとルシフェリアがちょこっと300のがあるくらいだという。クラウと高砂も多分あるだろうし他もある人もいるだろうが、聞いた範囲である。もう、俺は、上げなくて良さそうなのだ。上じゃなく横を取るのを勧める口調のメールだった。「新しい幅を広げてみては!?」みたいなのである。うるさい。広げてるだろうが! と、笑った。俺以上に職の幅が広い人はいないと思う。うん、超虚しい。かつ、生産もキャップ開放のお知らせも追加も聞こえてこない。
追加されるのは、また、大陸である。今度のは、レリーダ大陸だそうで、マップは非公開、完全にイチからだそうだ。これを期に、ログイン時に、好きな大陸を選択可能になるという。クリアしてなくても他から開始できるのだ。ただし、クリアしてないフィールドには進めないという事である。後は、パーティ時にも、名前を好きな方で表示できるようになり、その時に持ってる職ならば好きなもの、レベルはキャラしか出なかったのだが、それも非公開にできるそうだ。レベル1から非公開可能である。ギルド名も公開と非公開を選べるそうだった。かつ、当選ギルドの称号配布が終わるらしく、俺は『ゼスペリアの教会』を一度抜けて、ラフ牧師の『ハーヴェストクロウ大教会』に入り、そちらの称号をもらって、グルチャの枠を一個増やした。是非にと言われたのである。これで俺は、『桃花源』『ゼスペリアの教会』『ハーヴェストクロウ大教会』の三つのグルチャが、個人作成の他に使える事になった。また、合同のお店を出す、クランシステムは終了だそうで、今後は、入っていたクランの銘は、入っていた人ならみんな使えるが、お店は無くなるとの事だった。今後は、錬金術師と生産のレベルを上げないと、そもそも『銘』を持てなくなるそうで、共同の『銘』や『ブランド』は、かなり高レベルが二名以上じゃないとダメであるようだ。まぁ俺とイリスとルシフェリアは、全然一緒に作れる。だが、さらに、『同じギルドの』と書いてあったから、そういう意味では困難である、という事で、解散までの間で、三人で記念にいっぱい作っておいた。あくまで記念だから、超役立つとかではないが、俺とルシフェリア共同制作の武器を作って二人で一個ずつとか、イリスと俺でカバンを作って一個ずつ、とか、楽しかった。お揃いの時計とかもある。なお、鴉羽商會のような個人の露店名はそのままで、銘にもできるままだ。ただし経団連に登録されていない露店は銘にできないそうである。今は登録がすごく大変そうだった。ここは俺達が楽だった利点だろう。