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こうして、ギルドもゼロで、俺は本格的にイチからスタートを決めた。名前に悩みながら、それ以上にアバターに迷った。友達が出来そうなアバターを考えたのである。女の子にしようかなというのは無かった。俺には女の子らしいロールプレイは無理だ……。オジサンを持っているから、子供もいいかなと思ったのだが、なんかこう、慣れている体型の方が動作が楽だと聞いて、俺は人に会う時はオジサンだったが大多数の一人の時は、リアルそのままの姿に慣れきっていたので、自分と同じ身長体重は変えない事にした。というか、リアルをそのまま読み込んで、十七歳の時より大人っぽくなっていると改めて思ったというか、まぁ二十七歳のオジサンになっていたので、アバターはこれで良いかと思った。名前はアバターにつくというより増えるだけだから、オジサンアバターで名前を新しくしてもおけるのだ。それにもう十七歳の時のを見ても俺だと周囲は分からないような気もしたのである。だからそっちを使っても良いのだ、と、なんか俺は思ったのだ。若い頃をやり直そう、くらいのテンションでもあったのだが、今思えばやめておけば良かった。だってあの頃、その外見で友達ができないって思っていたはずなのだ……うう。しかし、名前……と、名前の方にその時は悩んでいた。そうしたら、『?ゼクス?』とかだと、逆に本人バレしなくないかとラフ牧師に言われた。吹いた。なんか、俺の名前が有名だから、そういう感じでつけてる人が、初心者にかなりの数いるというのだ。ラフ牧師は、そういう人は『ゼクスその百八十二だからハチな』というようなあだ名を付けるらしい。なんか五百人以上見たとか聞いた。現在のゲーム人口は、28000人だというが、それでもかなりの比率である。ゼストとかルシフェリアもいるそうだ。吹いた。なお、ハーヴェストクロウ大教会に一瞬入って称号をもらって抜けた時に、実際に確認もした。その時点で誰かに似たような名前が九名いた。確かに呼ばれる時も良い。そこで俺は、『ゼクス★.。.:*・』にした。意味あるのかと吹かれたり、ラフ牧師と同じ見解をされたりだった。真面目にいるらしい。こうして俺は新スタートを切ったのである。
さて、友達を作るかと思ったのは、十年と三日が経ってからだ。一応、様子を見ていて、どこの大陸でどうしようかな、というのから考えていたのである。はっきり言って、あんまり行ったこと無いのだ、各地に。追加されたのが多すぎるし、ダンジョン攻略とか、手伝いでしか行ってなかったのである。必要時はソロで倒して目的地に行って生産素材を確保という感じだから、次の街に行くためにとか、全くない。十年前のワクワクはもう無い。人数的にも広さ的にも、日本なら市町村、他国なら国レベルの規模である。アイテムがあっても移動だけでも大変なのだ。という事で悩んでいたら――親から衝撃的な連絡が来た。
「え?」
『だから、しばらくレクスを家に泊めてあげて。とりあえず二年!』
「あ、う、うん」
という事態になったのである。思わず反射的に頷いたのだが、その後すぐに電話が切れて、ポカンとした。え? なんで? と、思ったのである。部屋はあるし、ご飯は届くし、お掃除と洗濯は業者さんが来るから、問題はゼロだ。いつ来てもらってもOKである。が、これまで日本に来ても、他の家族の家や、経営しているマンションのどこかとかだったと思うし、二年なら、自分の家を借りても良さそうだ。というか、持ってないのだろうか? 持ってなかったっけ? と、悩んだ。全然連絡してないし、最後に会ったのどころか、話したのがいつかも不明だから、考えてみると分からない。それがいきなり、泊めてというか、これ、一緒に住むって事である。んんん?
腕を組んで、改めて考えた。俺は、コミュ障である。レクスとなら上手く行くだろうか? わかんない……。さらにいったとして、コミュ障だとバレたら、ひかれないだろうか?
不明だ……。ど、どうしよう?