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 そこそこ人がいるが、ここはみんな待ち合わせや個別で話すのに使っているから、注目は浴びな――い、かと思ったら意外と視線を感じた。俺と同じくらい集めているレクスを見て、ゼクスとバレたというか、久々に『顔だな!』と痛感した。

「レクス?」
「――兄上!?」
「ああ。PTで話そう」
「その前にフレ」

 と、フレ申請が着たので、『ゼクス』の方で登録した。それからパーティを組んで、今回は、レベルを公開にしておいた。

「うわああああああああああああああ!!! 本物! ほ・ん・も・の!!!!」
「あはは。ちょ、テンションが――」
「鴉羽使っているというか、ゼクスが鴉羽って本当なのか!? 鴉羽卿って、けど、別にいるんだろ? 情報ブログで見た事がある」
「うん、俺が鴉羽商會の鴉羽銘作ってて、鴉羽卿はな、ラフ牧師っていうフレだ」
「フレ!? え!? ラフ牧師って、ヨゼフの初期街のギルマスの!? そうなのか!? あの人が!? そんなの聞いたことがない。かつ、あの人のフレ!?」
「フレだ。うん、ギルマスだな。情報ブログとかあるとかすら知らなかった。ええとな、限定で一緒で、公開になってから再会した。鴉羽卿は、色々あってそう呼ばれるようになって、今回の名前追加で、本人も使っていいかって言ってたな」
「!!!! そうなのか!!! 聞きたいことだらけだから、後に回す」
「座ろう、とりあえず」
「ああ!」

 こうして俺達は移動した。なんだか嬉しいような恥ずかしいようなである。照れる。だが、弟とこういう形で仲良くなれそうでホッとしていた。

「あ、あのだな、ラフ牧師は、ゼストを知っているという噂だけど、本当か? ゼストを育てたとかって」
「ゼストがレベル低い頃に、一緒にパーティ長く――って、三週間くらい組んでたのがきっかけだ。その時に二枚目右を教えたって。その後は、ゼストがラフ牧師とかの手伝いにいったみたいだな」
「兄上がゼストと同じギルドで、ヨゼフからアイリスまで開放したゼクスでいいんだよな? 最初に全部を攻略した!!!」
「まぁな。そうか、ゼストを知ってるのか。じゃあルシフェリアとかもか?」
「知ってるって名前だけだ。誰でも知ってる! 伝説だ! ルシフェリアは、ルシフェリアは、俺の憧れだ! 俺は、ルシフェリアのステを出すために、一回リセットしてる」
「えっ、そうなのか!? ルシフェリアは俺の大学の同期で、一緒に始めたんだ。一番付き合い長い。現実で会ったことは一回も無いけどな」
「!?!?!?!!?!?」
「呼ぶ?」
「え、あ、あ、え、あ、会いたいけどな、心の準備が……っていうか、呼んだら来てくれるのか? そのレベルで仲良いのか? 今も親交があるのか?」
「まぁな。いや、普通だよ? 呼んだら、暇なら来てくれるだろうな。あいつしかも基本、この時間帯暇な気がする。ちょっと待ってくれ。心の準備とかさしていらないだろ」
「!!!!!」

 このようにして、俺はルシフェリアに連絡した。「弟と暮らす事になって、話してたらお前の話になったから来てくれないか?」と聞いたら、「ゼクスの弟!? 行かないわけがないだろう!」と行って、五分後には来た。

「朝ぶりだな。フレ作りをすると言っていたから何かあったのかと思ったら、まさかの急展開だな――はじめまして、ルシフェリアだ」
「朝!? あ、あの、レクスと言います」
「――ハーヴェストのギルマスだろ?」
「え!?」
「ハーヴェスト? ルシフェリアは、レクスを知ってるのか?」
「ああ、話したのは初めてだけどな」

 笑顔のルシフェリアに、レクスが完全に照れた。死ぬ程嬉しそうだ。なんだか良い事をした気分である。

「むしろ、知ってる人間の方が多い。ゼクスが、異常にギルドやプレイヤーを知らないだけだ」
「それは否定できないな……ルシフェリア、俺に教えてくれ」
「ああ。ハーヴェストは、ユレイズの大陸を最初に全て攻略したギルドだ。レクスは、死霊術師の上位だ。新職開始可能組だが、暗殺者経由だと聞いた事がある。三年近く動き無しが、ハーヴェストが出来てから攻略が進んで、一気に開放だからな。死霊術師とユレイズをホームにしてる者なら、特に全員知ってるだろうな。人望があって、ユレイズの初心者支援ギルドの筆頭でもあるし、あの辺りの上位は誰も頭が上がらないだろう」
「いや、そんな――」
「レクスはすごいんだな!」
「ああ、すごいぞ。レベルもゼストや高砂なみに上がりが早い。職も複合も、だ。レクスの習得方法は、俺のギルドの奴も参考にしている者が多いな。公式の、ギルド掲示板のハーヴェストで惜しげもなく公開している。俺も中級クラスになって複合が取れるようになった奴に勧めている。直接一度話してみたかったんだ。まさかゼクスの弟だとはな。攻略速度とスキルの上げっぷりには、納得の一言しか出ない」
「ぶは、最後はいらない。どういう意味だ」
「褒めている」
「本当か? じゃあなんでニヤっとしたんだよ!」
「いや、顔も似てるが、そこも似ていたからとしか言えん」
「ぶは」
「良かったら、フレになってくれ」
「えっ!? いいんですか!?」
「敬語じゃなくていい」
「あ、は、はい――……わ、分かった!」

 と、俺の時とは違って、レクスが嬉しそうに緊張しながら、ルシフェリアからのフレ申請を受けたようだった。パーティにはもうルシフェリアも入っている。その後――俺よりもレクスはルシフェリアと話し始めた。ルシフェリアもそうだ。というか、俺について行けないプレイヤーや情勢(?)、ギルドの運営だとか、初心者支援だとか、聞いたことないフィールドの話だから、俺は聞きながら勉強した。「そうなのか?」とか「複雑だな」とか「全然知らなかった」としか言えない。レクスが驚いていたのだが、ルシフェリアが「こいつは本当に知らん。教えてやれ」と言っていた。ルシフェリア、ありがとう! なんだか気が合うようで、すぐに馴染んだ。後は、ステの話で、ルシフェリアも自分のをモデルにしたと、ここら辺で聞いたら、尋常ではなく嬉しそうだった。ラフ牧師の話だと、ルシフェリアをモデルにして頑張ってルシフェリア・ルビーを出して開始する人は、かなり多いと前に聞いたのだが、三分の一入っていたら多いし、ゼスペリアの青より出ないし、完全に同じはほとんど見たことがない上、レベルが上がる前にリタイアが多いらしい。上げるのが難しいそうだ。ルシフェリアも、自分が会った中で、レクスが一番レベルが高い後輩(?)だと言っていた。

 レクスは、キャラレベルが724で、死霊術師が702で、暗殺者が514だと言う。また聖職者が420で、錬金術師が400だそうだ。後者は、死霊術師を出すのに必要である。そして俺もちらっとしか聞いたことは無いが、限定開始組と比較しても、これは高いはずだった。限定組は、キャラは700代が結構多い。レクスも、だから聞いたのだろうなと、これを考えた時に思った。かつ限定組は、職が500前後で止まっている例が多い。一個が500前後で、もう一個は300、他は200代が圧倒的だ。それでもかなりの高レベルである。ルシフェリアと二人でレクスがスキルの話をしている時は、俺も話が分かった。というか、それに限り俺のほうが詳しい――というのを、ルシフェリアが言った。

「ゼクスはな、俺とゼスト、クラウもハルベルトも、基本的にスキルを聞いている相手だ。俺達は、生産もすごいと思うがそれ以上に、スキル関連と攻撃系のプレイヤースキルがすごいと思っている」
「え!?!?!?!?!?」
「ゼストの師匠は鴉羽卿ではない。ゼクスだ。それは俺もそうだけどな」
「!?!?!?!?!?!?」
「いやルシフェリア、ハードル上げないでくれ」
「事実だろ? お前がいなかったら、ゼストは今、まずいないだろう」
「そうか? たまたまだろう」
「少なくとも、俺は詰んでいた」
「ルシフェリアが? どこで?」
「マイセスの次からずっと、ほぼお前だろうが、倒したの」
「それはまぁな。けど、ルシフェリアとかが道を探してくれなきゃ、俺には無理だ」
「えっ……それは、真面目にか?」
「ああ。ゼクスが開放したに等しい。兄弟そろって開拓者だ」
「「ぶは」」
「お前達が兄弟だと分かったら、大騒ぎは間違いないな。ハーヴェストのサイトには書かないのか?」
「――書いて良いのか?」
「へ?」
「良いだろうな。三人で撮るか?」
「本当に!?!?!?!!? お願いします!」
「んんん?」

 こうして、よくわからない内に――あ! キャプションを撮ったのだと発見した。照れる。そして俺は、ハッとした。

「あ、待って。もう一回撮ろう! 俺、今、お兄ちゃんの良い所を見せるべく、レクスに余ってるレクスが使える装備と初心者用装備を用意して終わったんだ!」
「え!?!?!?!? いや、それは――」
「貰っておけ。ラフ牧師なんか全身オートクチュールだ。どんどん言ってやれ。直接誰も依頼してくれないと泣いている暇人だからな」
「うっ、あ……え!?!?!?!? 待ってくれ、使えるって、こ、これ、鴉羽銘だろうが、全部……しかも、オシャレは、ルシフェリア銘!?!?!?!? 他の初心者装備も、鴉羽商會だと……このレベルの鴉羽系は、今はほとんど回ってない……」
「格好いいだろう!」
「なんだと? じゃあ俺もこれをやる」
「!?!?!?!?!? あ!!!」
「何をあげたんだ?」
「ん? ああ、俺しか持ってないが常に付けているネックレスだ」
「あー、お前が好きなルシフェリア・ルビーの威力を上げる、それか! 首の!」
「それだ。ああ、これだ」
「い、いいのか!?」
「ああ。貰ってくれ」
「本当にありがとうございます。ルシフェリアも兄上も!」

 レクスが感涙してしまった。こうして三人で、もう一回キャプションを撮った。今度は楽しかった。テンションが上がっていたから、笑顔が溢れたのである。その後、また少し雑談をした。それから、ルシフェリアがギルドに行ってくると言い、「俺もレクスとフレになったと言っていいか?」とか、「ゼクスと兄弟だったと言っていいか?」と言ったら、レクスが照れながら頷いていた。俺には聞かないのだ。まぁいいけどな……。そうして俺達は、ルシフェリアを見送った。