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その後、レクスが、ホッとしたように息を吐いた。
「うわあ、緊張した……」
「えっ!? そうだったのか!?」
「ああ。ルシフェリアの出現で、兄上に対する緊張が解けたが、正直、ゼクスが目の前にいると思ったら、頭が途中から真っ白だった。一度解けたが、鴉羽装備でまた呆然とした……本当に良いのか?」
「実は俺も、廃人と思われないか最初は頭が真っ白で、その後はレクスが有名人と聞いて一瞬頭が真っ白だった。かつ、俺のコミュ障がルシフェリアのせいでバレて泣きたかった……が、装備は、喜んでもらえたなら、すごく嬉しいな。ルシフェリアの言う通りで、余ってるし、作りたいけど機会があんまり無いんだ」
「本当に感謝する……紹介してくれたのも含めて。憧れていたんだ、この首飾りとかな……何より、一回でいいから、話してみたかった。それが叶ったどころか、フレに……泣いていいか? うわああ」
「泣いていいけど、廃人とコミュ障を否定して欲しかったな!」
「ぶはっ、いや、そこは無理だろう」
「おい!」
「ただ引きはしない。尊敬する事はあってもな」
「ありがとうな……ちょっと気が楽になった。所でレクス」
「ん? なんだ?」
「ルシフェリアも言ってたけどな、俺はギルド情報とかを知らないんだけど――それ以前に、フレを作りたいんだ。ゼクス記号の方で、リア充になりたい! さっき初心者支援でフレ作りとかパテ探し方法の話をしてただろう? 経営目線じゃなく、俺に普通に教えてくれないか? 俺、まず、どこでそれを頑張るかから考えてて、今日は朝ルシフェリアとハルベルトに相談して、とりあえずレリーダ? とかって流れで、奴らに適当に流されたっきりノープランなんだ」
「ちょ、兄上、それは事実なのか? 先程から思っていたんだが、真面目に?」
「うん。俺、フレリス、九人しかいなかった。レクスが十人目だ……」
「ええええええええええええええ!? 俺は、じゃ、じゃあ、手の指の数に入ったのか……俺は、自分がすごいと改めて思った」
「すごいって、そんなに沢山いるのか?」
「いや、幸運がすごいなと。そんな相手と兄弟とか、すごいだろ?」
「コミュ障っぷりがか? レアですごい?」
「レアの方だ」
「そう言ってくれると期待した」
「ぶは。うーん、ルシフェリアとの話は、まず、同レベル帯のフレ作りだからな。特に初心者は、緊張してパテが組めなかったり、少しレベルが上がってくると、同じレベルはライバル視で組まなかったりだとか、そういう事だ。同じ職で同じくらいの方が、相談しやすいはずなんだが、相談できる親しさになるまでが時間がかかる。ギルドが同じであってもだ」
「え……そうしたら、俺はどうしたらいいんだろう……野良パテか辻治癒? 武器配りはやめておいた方が良いと言われた。友達じゃなくて商人が寄ってくるらしい」
「ああ。貰っておいてなんだが、武器配りは勧めない。クレクレが寄ってくるだけだ。まぁ鴉羽クラスだったら……ちょっと何とも言えないけどな。ゼクスに鴉羽をもらった! という自慢の方が、武器自体よりも出そうだな」
「え? そうなのか? クレクレは説明してもらったから分かるけど」
「ランキング一位だが、全然見かけないからな」
「ぶは」
「名前変更も正解だろうな。何度か組んでから、必要があれば伝える方が良いだろうが――そのアバターだとバレるし、後二個は?」
「一個は今の俺」
「っ、それ、それもダメだろうな。兄上を知らない人間は少ないだろう。お菓子はどこにでも売ってるから、全国に兄上のポスターと電子広告があるし、ブランド好きは、高級層も安い方も、兄上デザイン物からモデル物まで知ってると思うぞ」
「……そ、そうか。後は、福の神みたいなのだ。これ」
「ぶはっ!」
「戻った」
「ちょ、兄上、インパクトがデカすぎた。なんなんだ、今の」
「ん? 限定の時に、これならみんなと仲良くなれるかと思ったんだ。なお、普段はこの十七歳でやってて、人に会う時と人気のある街は、福の神で歩いていた。けど福の神だと目立つけどゼクスだとは思われないようだった」
「俺も完全に、ネタかつコミュ重視の商人かなにかだと思うだろうな……」
「そういうスタンスで作ったからな、それはそれで良いんだ」
「あー、まぁな……そ、そうだ。キャプション、顔、隠すか? それで十七歳アバターが一番マシな気がするんだが」
「顔はありがたい気もするけどな、マシの説明を詳しく求める」
「美形であるのは、アバター造形かな、と、まず思う。次に、真面目にゲームしてる感があるのは、普通のネタが無い姿だ。そういう方が安心してやりとりしてもらえる。ネタは、二個目――今後は三個目のアバターだろうと思われて、高レベルと推測される」
「!? レクスは頭が良いな。それで!?」
「俺の頭がいいのか?」
「うっ」
「兄上が馬鹿だと言いたいわけではない。ちょっと抜けているかなという話だ」
「ぶはっ」
「それで、だなぁ……次に装備がゴリゴリ、つまり、鴉羽なんていうのは超高価でもバレるし、後は、オシャレがクオリティ高いと、バレる以前に近寄りがたい。レベルに関わらず、金があるのと、後は慣れてる感だな」
「すごい勉強になるな……」
「ただ、兄上が、初心者装備で街につったってたら、確実にナンパの餌食だから、それもやめろ。アイテムあげるからついておいで、と、言われても行ってはダメだからな」
「い、行かないけどな、ナンパって、俺は男だ。逆ナンするほど女の子もいなくないか?」
「美少年アバターは、女子が作りやすいんだ」
「え!?」
「かつ、VR内なら、男でも良いという男もかなり多い」
「ええええええ!?」
「気をつけろ」
「お、おう……」
「それから辻治癒は、低レベルスキル、これは良いか?」
「ああ。MPもったいないしな」
「ぶはっ、いや、バレないようにというつもりだった」
「あ」
「効率的で何よりだ。意外と無駄に高いのを使って高レベルアピールする奴が多くて、辻もあんまり好かれない場合がある。後は、上位になると、面倒でそのままいつもの。兄上はこれを想定した」
「俺、スキルはなんかこう、一番合ってるのを選ぶタイプだ」
「それは流石としか言えない。本当にルシフェリアの師匠なのか?」
「んー、普通のフレだけど、これはルシフェリアに教えた」
「師匠的なフレから学んだ事として、ルシフェリアが同じ事を言っていたと聞いた」
「え」
「すごいな……尊敬しなおした」
「いやレクス、俺のハードルあんまり上げないでくれ」
「はは、大丈夫だ。リアルのモデルの時点でもう際限なく上がっていたからな。こちらは嬉しい上がりだ。あちらは、そうバレると、サインを求められるからな」
「……」
「貰ってこいと何度言われた事か……まぁいい」
「なんかごめん」
「兄上は悪くない。イケメンの兄というのは、嬉しいからな――後は、野良だな。これは、何かによる。レベル上げ野良パテは、兄上が上がらないから不審だ。即座にバレるだろう」
「う、うん」
「支援野良が一番良い。ただしこれは、ギルドに入っていて行い、そのままギルドに勧誘という流れが多い。逆にソロで支援すると誘われる。今、入ってないんだろう? 先程の話によると。俺の所に来てくれるなら、それも大歓迎ではあるが」
「入ってない……むしろ誘われて困ってみたいレベルだけど、勇気ないしなぁ……レクスの所は、どういう所なんだ?」
「検討してもらえるだけで涙が出てくる程、兄上達クラスから見ると初級だろうな。ただ、俺としては、悩みも多いが充実しているし、ルシフェリアに名前を覚えてもらえる程になっていたと確認できて嬉しかった。もしかしたら、くらいに思っていたからな。そうだったらいいのにな、レベルだ」
「実力だろう。確認できたなら良かった。何人くらいいるんだ?」
「900人よりは多いな。1000は行ったことがない」
「ぶはっ、え!? えええ!? 多くないか!?」
「――ルシフェリアのギルド人数を知ってるか?」
「へ? 230人になったと聞いたのが最後だ」
「ぶはっ、おい、それは一体いつだ? 2000人以上いる」
「ええええええええええええええ!?」
「入れるだけで名誉なんだよ、黒き紅翼は。紅き黒翼銘の武器を持ってる以上に」
「知らなかった……すごいな。だって、このゲーム、23000人とかだろ?」
「新規参入で、今、50000目前らしいぞ」
「え!? いや、だとしても、多いだろ。それさ、ギルドに入ってても、ルシフェリアを知らなくないか?」
「だろうな。だから俺は非常に幸運なんだ。しかも会うだけなら兎も角、あちらからフレ申請だ。ルシフェリア側からフレなんて、ほぼありえない。そしてこちらからは、神様相手だからはばかられる」
「なるほどなぁ。全く知らなかった」
「まぁギルドを自分で作るという方法もある。ゼクスのギルドとなれば、一瞬で1000は行くだろうな」
「え、いや、それは無理だ。俺、管理できない。そして、そんなに来るだろうか」
「来る。確実に来る。俺と同じレベルでも、作ったら三日で1000行く場合は多い。レベルというのは、顔の広さとゲー歴だ」
「そうなのか。ええと、三年くらいで、人望?」
「人望か、どうだろうな。まあ、それで話を戻すと、人数はそういう感じで、拠点はユレイズの初心者の次の街で、ギルド名は、ハーヴェストだ」
「なるほど。他の大陸には、行かないのか?」
「今は、三分の二が、新大陸を見に行っている。三分の一は、ユレイズに残っているが、そちらは、ユレイズの新規の支援だな」
「それだって600人と300人か……」
「まぁな。ただし今回は、勧誘は見送っている」
「じゃあ俺は入れない……」
「初心者は、という意味だ。本当に考えてくれているのか?」
「え、だめ?」
「いや、大歓迎だが……実感が無くて」
「じゃあ続けてくれ」
「ああ。理由は、十年になる手前に、アバター目的や名前目的で、あえて先に開始した初心者組が、ユレイズには大量にいるのが一つだ。手前というのは、一週間以内程度だ。かなり駆け込みで始めている。十年記念の新規参入イベントのアイテムなんかより、そちらの方が利点があると俺も思う」
「なるほどなぁ」
「ちなみに、ギルド内部のレベルは、700以上は6人、それ以下で500以上が11人、300代が350人前後、200代が数十人、100代が圧倒的で、他は50以下だ。700以上の中の3人と、500以上の中の5人で作った」
「そうなのか」
「ちなみに、限定組はゼロだ。公開テストの最後が1人、500の5人の1人だ。後は全部、公開後で、5年以内だな。ただし、廃人は山程いて、INしてるだけの人間もいる。それが悪いわけではないけどな。クレクレは禁止、シテクレも禁止。同レベル帯でのパーティ推奨。ただし自分からの支援も推奨。頼まれたりで困っている場合は、こちらで注意を入れているが、あまりない。そういう場合は、事前に抜けていくな。アイテムは倉庫貸出がある。兄上に貰ったのは、もう貸出ていて、全部もうレンタル中だ。700レベル武器までレンタル用が10、全部の職分各10合って、俺は泣いたし、ギルメンも感謝しつつ恐れおののいている」
「お、おお……助かっていたら嬉しいけどな、レクスが仲いい相手ならオーダーメイドいつでもやるからな。レクスのもいつでもな。けどさ、予想外に多くて、絶対足りないなと今思った。ラフ牧師の所に支援用レンタルで渡した数が各5だから、かなり増量したつもりだったんだけど、すごく多かった」
「はは、ありがとう。その内頼むかも知れないが、もう十分すぎる程だ。まぁ――ラフ牧師は、ハーヴェストクロウ大教会だろう? あそこは、旅立ち推奨で、支援内容も、初心者限定だからというのはあるだろうな。俺の所は、中級者支援もあるし、フレがどこかを抜けて探しているというので入るパターンも多い。ユレイズでどこかを抜けた後の第一選択肢とも言われている。イメージで言うと、ラフ牧師の所が終わって次の次くらいに俺の所という感じだろうな」
「そうなのか。高砂がクラウと始めたみたいなもんか?」
「ぶはっ、万象院を知ってるのか? クラウは兎も角、高砂って」
「うん、俺の貴重なフレだ。ラフ牧師の弟子で、俺がラフ牧師と知り合いで、クラウもそうだったから、連れて行ってから仲良く遊んだな。今は装備を適度に作ってる感じだ」
「えっ」
「ん?」
「高砂とフレ!? 真面目に?」
「うん。なんで?」
「あの人多分、ゲーム無いで屈指の恐れ多くてフレになれないし、強すぎて、ある意味ルシフェリアやゼストよりも有名人だ」
「そうなんだ? 確かに強いな。たまに今も高砂と遊ぶんだけど、二人だと大体どこでも五分くらいでボスが終わる」
「ぶはぁああっ、俺、高砂にフレがいるって知って衝撃的だ」
「え、俺よりはいると思うぞ? 呼ぶ?」
「今度にしてくれ。今日はもう心臓が持たない」
「あはは。じゃあ今度な。ええと、戻ると、レクスの所に行った場合、俺はどういう感じになる?」
「俺は普通に、兄上と住む、断られても頼んで居座る、と、ログアウトして、次のインで、兄上がクラウンズ・ゲートをやっていてゼクスだと名乗ってるけどどう思うと言い、本物だったと言い、ルシフェリアが来た、装備くれた、ルシフェリア帰った、装備倉庫に入れる、そしてキャプション見てくれ、という流れで顔込みで全部ギルチャで言ってるし、既にユレイズ中に伝わっているのは分かる。キャプションは、とりあえずルシフェリアだけだ。兄上の顔の問題があるからな」
「ぶはぁっ、顔はグッジョブ、他はどうなんだろう。それ、さ、どんな反応されてるんだ」
「まず装備は死ぬ程喜ばれて、レンタル中というか、みんな本物だと観察して、俺もそうだが近くで初めて見たと話している。ユレイズには、鴉羽の持ち主は、これまでゼロだ。通行人以外は」
「そうなのか」
「高くてな。かつ、持っているようなランカーはユレイズにいない。後は、どんな性格かとか、スキル内容は、とか、そういう話だな。会ってみたいというのも多い。ゼスペリアの青や、匂宮の朱、万象院の緑という伝説をみたいというのや、ロードクロサイトや鴉羽色相が見たいとか、これらを全部持っている唯一の人は一体どういうのをやってるんだろうか、とかな――あのだな、イリスって知り合いだよな? 桃花源で」
「あー、イリスはな、母さんの所のデザイナーだよ」
「ぶはっ」
「俺、イリスとアメリカでエクエスタってゲームの服を中で作ってた。ちなみにルシフェリアはさっきのGUIの特許でご飯食べてる。エクエスタでルシフェリアとイリスを合わせたのも俺。イリスに関してはリアルで知ってる」
「ぶはあああああっ」
「このゲームのデフォルト初期装備の十分の一くらいは、イリス作だ。仕事の方」
「!?!?!?!?!?」
「その確認で開始で、後はハマってそのままだな」
「そ、そうだったのか……死ぬ程驚いた」
「あはは。それで一緒に桃花源を作ったんだ」
「なるほどな。いやな、聖職者ランクで、高砂が僧侶で名前が出始めた頃から、時東という聖職者がいたのか知ってるかと思ってな」
「ああ、名前は知ってる。会ったことはないけどな。見た事があるだけだ。この前もランキングにいなかったか?」
「いた。前回発表で13位、最高1位で、常に15位以内だ。結構ランクを見るのか?」
「ええとな、キャラ職ランクは、何回か連続で入ると鴉羽の武器を買ってくれるという話で、入っている人の職と名前を、誰かがチャットで俺に教える。6割くらいその名前の人か関係者が買っていく」
「ぶはっ、そ、そうだったのか」
「あはは。うん。ゼストとかルシフェリアとかだと、直で依頼が来るけどな。後は、時東という人は、生産の薬剤関係で、一部イリスより先にカンストで、当時俺は、ほとんど変化が無かったから覚えているというのもあるな」
「なるほど、そういう経緯か。ちなみに色相を知ってるか?」
「いいや。けど、テストの頃からいたから、あの頃はスキルの一覧みたいなの合って、内容考えると、二枚目の左は、かなりロードクロサイト色相だろうなと思う。そんな話をイリスと当時した気がする。ルシフェリアと俺がロードクロサイトだから、イリスがそうかもって話して、ルシフェリア――あれ、そう言えば見に行ってみようとか言ってた気がするけど、行ったのかな」
「――行ったそうだ。一時期同じギルドにいたらしい。直接勧誘だ」
「あ、そうだったのか」
「ただ、その後、多すぎてクラウ&高砂とルシフェリア経由で親しくなっていたから、そちらへ行ったそうだ」
「ほー!」
「が、高砂達の崇拝されっぷりが合わず、高砂とタメ語で話すと裏でキレられるのがだるくて、高砂にそれを言って抜けたらしい」
「ぶはっ」
「仲は悪くないが、フレじゃないから、会ってないらしい。たまにメールが来るそうだ」
「あはは。高砂、地味にメール好きだよな。チャットだと返せないし、チャットする時間があるなら直がいいとかな」
「みたいだな。会う場合は、メールで日時を決めて直のようだ」
「なんか想像がつくなぁ」
「二枚目は、その通りでロードクロサイト色相だ。全色だ」
「ああ、そうだったのか。Otherの青緑使えるようになるから、ゼスペリアの青とか実はあんまりいらないんだよな。個人的に、回復は、青よりロードクロサイトが大きいと思うんだ。複合が上がる程な」
「そうなのか!? 事実か!?」
「俺はそう思うよ。自分でやった体感だから、検証とかしてないけどな」
「――時東もそう言っているが、ここまで賛同者ゼロで、それはイリスも含めて回復30位以内くらいの共通見解のようだ」
「だってな、みんな一定の回復量で上げるのやめるしな」
「ぶはっ」
「30位以内というか、イリスの例だけど、光攻撃を上げるとか、回復範囲を上げるとかに向かないか? それもまた良いだろうけどな」
「全くその通りのようだな。時東も、他のギルメンも、同じ見解だ。500以降は範囲、300からは光攻撃が多いらしい」
「まぁ、光攻撃無いとソロ上げがきついのと、300以下に行く時支援だと壁や戦力カウントされやすくなるのと――まぁ一つの目安なんだろうな、300。職スキルとか低くてもキャラ的なの。それで、500からは『え? 範囲回復ないの?』って言われるんだろ? 昔、イリスが、イリスのギルメンがそればっかり言われて愚痴ってばっかだと言っていたから、変わってなければそうだろうな。あのランクの30位中10人くらいは、イリスのギルドか、いた事ある人のような気がする。明確には覚えてないけどな」
「全部兄上の言う通りだ。意外と知っていたな」
「スキル関連は、な。人間関係とか、ゲームシステム外のコミュがわかんないんだ」
「なるほどな。むしろ俺は、それが正しい姿だと思うし、時東もそういうスタンスらしい」
「時東って人、レクスのギルメンなのか?」
「ああ。公開テストからやっている500レベル以上の1名で、一緒にギルドを作った初期メンなんだ」
「そうだったのか。世間は広いのか狭いのか」
「というか、兄上達が有名なのと、時東もな、兄上基準じゃなければかなり有名というのがあるんだ。俺より時東の方が有名だ」
「有名ってさ、ランキングに入る事じゃないよな? 人望? 効果? 歴史? その辺のこう、有名のニュアンスが俺には不明だ。詳しく。時東さんとかレクスというより、一般的な基準が聞きたい」
「自画自賛のようで嫌だが、客観的に見た場合のユーザースキル、つまり戦闘熟練度と、適したスキル選択、状況判断が前提だ。その上で、次に歴史だ。開放しただとか、な。最初にスキルに到達したとか、色を作ったとかな。後はそれらが優れた人物による評価だ」
「ふぅむ……俺、それさ、たまたまルシフェリアとかといたからって感じだな。スキル系は俺上げまくってるけど、知ってる人がほぼいないしな」
「まずもって、その前提がないような人間は、ルシフェリアと親しい位置にはいられない。安心しろ」
「あはは。そうだったのか。けど、あいつ、そういうので付き合い変えないぞ。攻略先を変えるだけだろうな」
「それは分かる気がする。ただしそれは、フレだからだ。ギルマスとしての周囲への対応ではない。同じギルドの頃は、そういうのを気にしなくて良いメンバーだったんだろう」
「まぁ気にするようなのは無かったかもなぁ。俺はだけどな」
「良い所だったという事だ。なんで解散したんだ?」
「んー、抽選で当たったから、今も称号グルがあるし、それあるからバラバラでもギルチャある感じで、という流れの中、みんなギルドを立ち上げる感じで解散して、作らなかった俺だけそこにいたんだけど、今回抜けた。ラフ牧師の所の称号グルを取るためで、取って抜けて現在だな」
「そ、そうだったのか……い、今もか……繋がりが……そして称号グルをラフ牧師の所以外に初めて聞いた……それは、桃花源か?」
「いや、あれは、お店グル――クラングルチャがあるから、あれも三人だけので常にあるけどギルドではないな。ギルドは、ゼスペリアの教会と言うんだ」
「ぶはっ、げほ」
「ん? え、どうかしたのか?」
「そ、それ、ゼストが『入れてもらえた!』と言っていた幻というか伝説というか、なんというか……え!? さっきからの話は、そこなのか!?」
「うん、そうだ。他に開放したギルド無いと思うぞ」
「!!! ま、まぁ、そ、そうだろうけど、うわあ……」
「なんかひいてないか?」
「凄すぎて言葉が出なくてな……ユレイズのボスの一人が、『まるでこの強さ……ゼスペリアの教会の騎士のようだ……』とか言って負けるんだ」
「ぶはっ、え、何それ知らないんだけど!」
「称号配布ギルドは、そういう使い方をされてる」
「知らなかった、なんだそれ、恥ずかしいな」
「いや……すごいよ、実際。メンバーもな。え、もう一回、誰がいたのか教えてくれ。最終的なギルマスだとか」
「俺がギルマスで、ルシフェリアとゼストがサブで、クラウ・イリス・ハルベルト・義兄弟の兄と弟が執権で、八人」
「ぶはっ……え、え!? 兄上がギルマス!? しかも、サブがそ、その!? いや、おかしいクオリティのメンツだろ。きっかけは!?」
「俺とルシフェリアとイリスが、ヨゼフのエルナについて、クラウ&ハルベルトのパテをルシフェリアが、義兄弟とオーウェンとミヒャエルという二人を加えたパーティもルシフェリアかな、が手伝って、その後俺がゼストと仲良くなって、一緒にみんなで攻略行って、ゼストが入った」
「ゼストブログの初期のフレって兄上……?」
「らしい。見てない」
「!!!!!!!!!!!」
「懐かしいなぁ」
「俺はもう、ちょっとどうしていいか分からなくなってきた……」
「ま、昔だけどな。かなり昔だ。十年前だ。お前七歳だからな」
「っく、そ、そう言われるとな」
「え、それで、お前のギルドの続きを求める」
「あ、ああ。まあ、率直に言うなら、俺達のギルドは、500以上の支援者がゼロだから、兄上が来たら、そこを頼むだろうし、兄上が来たらそれを頼みたいそのレベル層が入りたがるだろうな、という結論だ。ユレイズは、全体的に、後発高レベルが多いから、古参が手伝ってくれない。ライバル視される。無論、手伝い無しで自力で上げているのは前提だ。その上で、武器の補助やスキルの使い方相談という面だ」
「なるほどな。けど俺それ、別に入ってなくても、普通にレクスが誘ってくれたら遊びに行きたい。なんかな、何度もだな、みんなのように手伝いに行ってみようと思ったんだけど、ゼスト以外に、一回もタイミング掴めなくて、手伝ってる人の手伝いしかない。どうやってみんな手伝う相手をあんなに見つけてるのかが俺には不明だったのに、手伝いを頼まれすぎるとか言われてるのを見て、頭がハテナなんだ」
「――どのレベルの手伝いの手伝いだ?」
「いや、色々だけどな。基本、ルシフェリアで言うなら、ルシフェリアが単独無理とかだな。モブとの相性もあるし、回復有無とか前衛有無とか色々で変わる」
「だとしてそれ……職で800、複合も四個目以降3つ以上クラスじゃないのか?」
「ああ、そういう感じだな。なんで分かるんだ? まさに複合がそういう感じだ」
「ち、ちなみに、兄上って、複合はどうなんだ?」
「全完のはずだけどな、少なくとも、999のキャラキャップの職300キャップだと」
「!? へ!? 五個目いくつだ……?」
「382個だな。五個同士の派生は入れずにだ。入れると不明。あれ多すぎだ」
「……え、あのだな、一覧とか見せてもらえたりしないか? 秘密にする」
「ん? ああ、パテで開放閲覧で見られるよ?」
「いやそれは知ってるけどな、普通見たらダメなんだよ」
「そうなのか!? 俺はいいけど? 俺は人には見せてもらわなきゃいいんだな。覚えておく、ありがとう!」
「いいや、見てくれと言われたら見てやってく――……ぶはっ、ちょ、え!? なんだよこの派生数!? しかも、ちょ、レベル、レベル!? は!? なんだこのスキルレベルは!?」
「だ、だから廃人だけどひくなとあれほど……」
「え、これ、ギルドにキャプって送ってブログにも上げたら怒るか?」
「いや別にいいけど、上げてどうするんだ? カラフルな廃人だな、くらいだろ」
「いやいやいやいやいや、うわぁ――兄上、生産も見せてくれ。装備も。撮りたい」
「ああ、見ていいぞ。別に聞かなくていい」
「ありがとう! ちょっと先にブログ行ってきたいから、俺、一回外に出る。兄上はいるか? いるなら、またその後に会いたい」
「あー、じゃあ俺も出てご飯を食べる。レクスが終わるまで食べてるか長い場合お風呂にも入るから、声をかけてくれ」
「了解した。ありがとう!」
こうして俺達は、ログアウトした。