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 そうしたら――レクスが脱力して、ソファに深々と倒れ込んだ。

「え? だ、大丈夫か? どうかしたのか?」
「きききききき緊張した!」
「え!? お前、顔に出ないんだな……? 本当に?」
「いやむしろ、緊張しすぎてテンションを上げて乗り切った……俺、大丈夫だったか?」
「普通だったと思うけど、どうなんだろうな? 俺には分からなかった。というか、緊張する要素とか、あったか?」
「――じゃあ、普通に、相手が一般人で考えてくれ。兄上は、俺の友達が四人来ている所に加わった時、どうだ?」
「ごめんなさい、五分でトイレに行くと席を立って消えます」
「ぶはっ、いや、そこまでじゃない。俺は、会えたのは嬉しいんだ。会いたかったからな。話してみたかったからな! 本音だ! 兄上に、俺の緊張感を伝えたかっただけだから、もう呼ばないとかは言わないでくれ」
「う、うん。そう言ってもらえて良かった。緊張してたというのも分かった。そうだな、俺は全員知ってるから気づかなかったんだ」
「そういう事だ。うわぁ……なんというか、かなりこう、密度が濃い充実した一日だ……」
「俺もそれは同じだ」
「ちなみに、俺は、兄上に夜聞こうと思っていた事があるんだ。インタビューじゃないから安心してくれ」
「うん。なんだ?」
「――後発組とのレベルの兼ね合いをどう思う? 抜かれた場合だとかだ。兄上は、ランクから消えている間に誰に言うでもなく淡々と見えないレベルを上げて、また一気に復活だろう? だが、多くの場合は、抜かれたらそちらが気になってキャラを上げてしまうし、特に自分より遅い相手だと、長ければ長いプレイヤー程ライバル心どころか敵対心を持つようだ。兄上クラスの一部が違うだけだ」
「まぁなんというか、昔は、っていうと説教してるオジサンみたいでアレなんだけど」
「聞かせてくれ」
「ああ――なんというか『先に始めた奴には何をしても勝てない』という空気がゼスト開始時点であったんだ。ゼストが一回それを変えた。けど次は、『テスト時からやってた人は』とか『前回カンスト時からやってた人は』とかになって、ずーっと生まれるんだ。そうして、『そんなわけないだろう』と言って上げるのが、まぁ高砂のような、次の人だ。そうすると、ゼストや高砂のように、『すごい!』となるんだけど、また時間が経つと『前の大陸からやっていた人は』とかってなる。さらにここの段階だと、ゼストや高砂は自分達の期待の星で、自分達でもやれるっていう象徴だったのに、自分達はやれずに、後ろのゼストや高砂みたいなタイプに抜かれるから、ジレンマ。多分な、こういうのダルイから、ラフ牧師は、初心者限定支援なんだ。ルシフェリアは、そういう人全部の意識改革を目指して全体で上げたい感じだろうな。イリスは、そういうのじゃなく自分を持ってゲームを楽しめ、ただし本気で、というタイプだ。ゼストはやる気ある人だけ頑張れってタイプだな。ただしゼストは、パーティメンバーに一名やる気があって他にない場合なら、やる気ありとみなす。全員にないとみなさないのが、クラウ。まぁ、俺のイメージはこうだな。それで俺というのは、彼らの考えを聞いて、誰の考えのどこのギルドに行こうかなって考えていたら、なんかとりあえずキャップ開放が来たから、やりつつ考えるか、となったら、意地で、上げないとなんか落ち着かないとなってしまい、ここまで上げて、我に返ったら、なんかどこにも行っていなくて、レベルは上がってたという感じだから、前後左右の圧力は無く、話しか聞いてなかった感じだな。ちなみに、先発組は、『課金開始は上がるの早くていいよな』が口癖で、キャラしか上がらないと分かってから、後発への視線が厳しくなったって聞いたなぁ」
「そうか……――ちなみに、兄上は、その中だと誰なんだ? あるいは他でも良いし、自分の考えが、もし現実の動向でなくとも何か他にあるなら聞きたい」
「正直、俺は、友達が欲しくてゲームを始めたから、最初みたいに、みんなで雑談しながら、開放が来たらガッツリやり、それ以外は各自やったり強力したり、なんていうのかな、ルールとか別になくてもみんなある程度配慮しあえる上に交流重視で、時々ガッツリが良い。贅沢かもしれないな。なんだろう、やる時はやるけど、厳しくないです、みたいなの」
「それは非常に理想的だ。そして少数の同レベル帯で似た目標があると、そうなれる可能性が高まる。ただし、大規模になってきた場合、困難も付きまとう。どうしたら良いと思う?」
「ギルドに正解とか無いし、俺は経験無いに等しいから、あくまでも想像だけど――そうだなぁ、一つの基準は、楽しいか楽しくないかなんだよな。ルールがギチギチでも守るのが楽しいという人もいるし、目標が無い方が楽というプレッシャーに弱い人もいるだろ? かつ、大規模は、パーティに固定ができると、それがある種のギルドみたいにもなるから、内部にギルドが多数ある感じにもなる。必ずしもダンジョン攻略とかでギルドにいる必要がなくてチャットでも良いなら、個別でギルド作ってもらって、全体はグルというのも手で、これは一回ハルベルトとゼストがそれぞれの所でやって、両方成功したけど、規模は最終的に戻っていってまた大きくなったみたいだ」
「そうなのか? ゼスト達が? 知らなかった」
「んー、ギルドランクは、本人達いる所が出てたし、仲もいいし、ギルド人数減ったのがちょっと話題になったくらいで終わってたからな。他にも、幹部でそれぞれに分けて独立したのがルシフェリアと義兄弟二箇所。イリスの所は、レベル帯と職で独立とかあったみたいだな。これはギルド公認で」
「全く知らなかった。順風満帆のイメージしかなかった。悩みはあるだろうと思ったが……そうだったのか」
「うん。それにほら、強くなると初心者や自分より低いレベルを手伝いたい場合と、ギルメンのレベルが自分と同じかもっと強い人の所に行ってガッツリやりたいタイプと、どっちも嫌な人の三種類は最低いるしな。みんな悩むようだ。ギルメンもな。お世話になったら出にくいから、出やすくするラフ牧師スタイルは、実は憧れられていたりもあるようだ。しかも抜けても会いに行きやすいからな、ラフ牧師は」
「なるほど、出やすく、か……抜けられないように、じゃなく、抜けやすい、か」
「まぁ、スタンスだよな。多いの重視なら違う。そして多いと幅が広がるのは事実だ。凝縮しすぎてて、内輪すぎて、入りにくいとかもある。俺も、そういうのも苦手だ。小規模で内部グループとかあると、大規模と違って、ゲーム内にトイレ無いのにトイレを探して旅立つかもな」
「っく、はは、なるほどな。それを考えると、多いというのもやはり悪くないし、俺は大きくしていきたいと思うんだ」
「良いと思うぞ。規模が決まってるんなら、後は内容だろうな。効率重視で上げきってから楽しむか、努力していくのを楽しむか。支援が少なからず入るから、そこを決めないとならない。初心者のうちに苦労を、といって、初心者のレベルはあんまり支援しないという所もあるけど、そういう所って抜ける人多いな。これはさっきの話の、逆で『俺達は自分で頑張ったんだから』という風潮だ。かつこの頑張った人々は、その話をしている時点でも支援されないというより、頼むのが苦手というのもあって、支援求めない俺かっこいい、で、そのままで抜かれるパターンだろ? この層は、実はガッツリ押し付け的に支援して上げちゃえば、初心者支援とかに回って『俺達も手伝ってもらったから』となる人が多いって聞いたよ。だから、超高いレベルが初心者支援して、上位が中位初期くらいを支援して、以後中位の上くらいまでが、初期支援、中位上からを上位が支援のスタイルが一番いいみたいだな、規模の維持と空気を兼ね備えて考えた場合。これだと、レベルも順に上がるようになる。それで、上位下から中は、手伝ってた相手に頼られたままギルマスで円満独立が可能スタイルを作れば、出やすく仲もいいまま、人数も大体希望を保てる――って、ゼストとルシフェリアと俺で前に話したような気がするっていうだけだけどな。後は、ギルド内部に、役職を勝手に作ったりとかも盛り上がるとかって聞いたかなぁ」
「勉強になる。そうか、努力より効率でも、使いようによっては良いんだな。効率と聞くと悪いイメージが先行していた」
「まぁな。楽しく無い効率が多いからな。作業ゲーみたいな。楽しい効率も、強いの好きな人には当然あるんだ。そういう人って努力家だったりするから、逆に効率悪いけど切り出せないんだよな、多分。あと、やってあげる系の言い方とか手伝う系も避けた方がいいようだ。一緒に遊ぼう的なのから一気に行ったり、素材欲しいとかさ、なんかな、なんでこんなに気を使って手伝ってるんだろうってなって逆に病むのを注意する感じのようだ」
「ああ、なるほど。心当たりが死ぬ程ある」
「ぶは。あんまり無理するなと言いたいけど、無理できる人がギルマスやってる気もするから、レクスは頑張ってしまうのかもな」
「はは、かもしれない。少なくとも今は頑張りたい。失敗したりするとしてもな。日々失敗の連続だがな」
「そういうもんだって。俺よりは失敗してないだろ。俺、十年間レベル上げしかしてないって、すごくちょっと前に気がついて涙ぐんだからな」
「あはは。羨ましいが、俺だったら途中で交流していただろうな。やっぱり兄上はすごいと思うけどな」
「そう言ってもらえると気が楽だな。そういえば、どんな職がレクスの所は多いとか少ないとかあるのか?」
「最初は新職が多かったな。後は、一時期俺に聞きに死霊術師が増えたり、時東に聞きたいと聖職者が増えたりもした。これは生産の場合もあった。最終的に、冒険者と忍者が多くなって、今になった。理由は不明だ。死霊術師と聖職者は、俺達がいるからやりにくいというのはあるかもしれない。他のギルドと比べると、特に聖職者は、セカか第三選択肢ばかりで、メインがほとんどいないのが、特徴的だな。時東に問題があるわけじゃなく、ギルド外の聖職者はよく聞きに来ている。レベル帯が一要素かなとは思っている」
「そうなのか。後は、このゲーム何年くらいやってる人が多い? 後発だとして、イン率も分かるなら」
「三年以内が多い。イン率は、日参が八割。三割が廃クラス、五割が夕方から夜五時間程度だ」
「なるほどな。それは、聖職者メインは、詰まって飽きる頃だから、フレ経由とかでも聖職者あんまりいないと思うぞ。恐らく外部で聞く人は、もっと長い再開組だろうな」
「! あ、その通りで、再開らしい。俺も聞いたことがある。じゃあ、それでか? けど、どうして俺のギルドだけ?」
「多分な、着々と進んで有名になっていったギルドだからだ。停滞してると入りにくい。その頃は特にレベル停滞しやすいから、迷惑かけそうとかもあるんだ。実際入ってみると違ってもな。イメージの問題だ。意外とな、成功してると、聖職者と僧侶が来てくれないらしい。上げるのが止まる三年目くらい――250前後が多い。300まで行っちゃえば吹っ切れるけど、そこまでがきついんだ。三年目で250なら全然良い方みたいなんだけどな」
「兄上、それはある。俺のギルドも僧侶も少ない。ただ、成功というのは考えた事が無かった……そういうのもあったのか。なんだろうな、開眼した気分だ」
「あはは。いやまぁさ、お前のギルド成功してるから聖職者少ないとか普通言わないからな。ハルベルトが同じようなこと言ってて俺が言ったらゼストが自分の所検証して、それで『そうだったのか!』って昔なったような気がしたんだ」
「すごいな」
「ほら、遠くから見てると、なんとなく、分かる場合も逆にたまにあるんだろうな」
「なるほどなぁ……俺としては、増えて欲しいし、実は時東も自分に問題があるのかと気にしていたから、とても良かったが、増やす方法ってあるのか?」
「ゼストは、聖職者に多そうなOtherを適当に見繕って『紫系統Otherの人、話しましょう』みたいなグル作って、そこからフレ、ギルドの流れだったな。ハルベルトは、スキル名で、それ持ってる人話しましょう、だった」
「ぶはっ、詐欺っぽいな」
「グル名はな。けど、ネタで入ったら、ゼストがいたら吹く、らしいな」
「それはそうだな。頭いいな」
「あはは。俺も吹いたからな。みんなテンション上がってるから、フレになりやすいし、その場でギルド直もあったらしい。それで増やして、微妙な相手は、それとなく脱退の流れで、他ギルド紹介らしいな。紹介先も確保しておけとゼストはハルベルトに言っていた」
「ぶはっ」
「半年後、義兄弟・兄の所が聖職者だらけで吹いた」
「ぶはぁっ」
「奴は面倒見が良いからな。聖職者は、これでかなり来る。新職はな、そっから言葉は悪いが、使えない聖職者を転職させた方が早いし本人もやる気出すって聞いた」
「くっ、けど、それ、分かるな、俺も――こんなに明け透けに聞けたのは初めてだ。こういうのが聞きたいんだが、中々聞けないんだ」
「ああ、あるだろうな。ルシフェリアもさ、最初、同じ事言ってたんだ。で、俺がラフ牧師の所に連れて行ったら、それまで目上感で聞けなかったけど、聞けるようになったとか言ってた。実際の運営に関しては、俺よりラフ牧師の方が良い。ラフ牧師は、今ギルマスになってる連中もかなり知ってて今も交流あるから」
「そうなのか。今度聞いてみる。今は兄上に聞く!」
「あはは。まぁな、色々な意見をありったけ聞いて自分チョイスがいいよな」
「うん。後はな、さっき、手伝い方の言葉って言ってただろう? 俺達は、支援相手は兄上は見つからないというが死ぬ程沢山見つかるんだ。が、言葉が出てこない。やってあげる系か、支援する、か、手伝うよ、になる。これ、具体的にどうすればいいと思う?」
「一個は、クラウの所だけど、メール。今暇な人リストを送信して、手伝って欲しい人が個別返信。頼みやすいし断りやすいようだ。けど行き過ぎると、内々に信者できるんだろうなと今日思った」
「な、なるほどな、そういう流れか。内密だから余計にだな」
「恐らくな。依怙贔屓できないタイプだから、全部行ったと思うぞ、奴は」
「あー、なるほどな」
「もう一個は、誰もやってないダンジョンをわざといれて、イベントとして週1とかでダンジョン行く。初心者も経験として連れて行く。これで、気づかないうちに、詰まってる所全部終わらせてるギルドを見た事がある。イリスさんとかいう所」
「ぶはっ、それ、それは良いな」
「だろ? 初心者もいるし、他も行くし、自分も他行ってるし、頼んでないけど行くから『俺ここなんだ』って漏らしやすいし、っていう流れ。リサーチ力は問われるけどな」
「なるほどなぁ。勉強になる」
「あはは。俺、ここは、スペシャルゲスト、桃花源ですとか言って、ルシフェリアといっぱいいったぞ。イベント形態だと、外部もさらっと入りやすいんだよな。かつ、イリスを手伝うとかもできる」
「なるほど! それ今度やるから来てくれ」
「ああ、大体いつでも暇だ。真面目に。後はランダムで武器が当たるとか言って、必要な人にあげたりな」
「ぶはっ」
「誕生日プレでも良いんだけど、イベント景品とかも盛り上がる。五位まで用意だけど、入ってる人に適したので、四位だけ明らかに良かったり、その人しか使えなかったりな」
「あはは、なるほどな」
「仕込みだってみんな分かるんだけど、不思議と文句出ないし、文句言いそうな人が次に当たったりな。先に当たってたりな」
「ぶはぁっ」
「すごくどうでも良いのでも当たると嬉しいんだよな、多分」
「分かる気がする。後な、同レベル帯のフレ作りとパテ作りが知りたい。ギルド内の。職のバランスだと上手くいって無い気がするんだ」
「力技でもいいならだけどな、共同の家にぶっこむ。俺が建てまくって、そこに『ゼクスが建ててくれた!』とか言って、ゼクスが片っ端から20人単位くらいで押し込んでて気づいたら仲良くなってたり、他の家と連絡し合ってたり、気が合う同士で引っ越してた」
「! すごいな! え、それは、共同云々じゃなく、普通に一個欲しい……」
「今ある奴でいいなら、持っていくか?」
「あるのか!? へ!?」
「生産だからな。これ――リスト、これ!」
「!!! 1500人用のこれをくれ」
「ああ、いいよ。その内、オリジナル、作るよ? 暇だし」
「ありがとう!!!! 設置してきていいか!?」
「ああ。倉庫、これとこれとか持っていったらどうだ?」
「ありがとう兄上、俺泣きそうだ」
「あはは。いってらっしゃい。ここの家の内部魔法陣、登録していっていつでも来られる感じで行ってくれ、楽だ」
「本当に感謝する。行ってくる」

 こうして、レクスが出かけて行った。