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ギルドも大変だなとしみじみ思ったが、俺は、あれ、どこかに入るはずが、何故よくわからない運営について話しているのだろうかと我に返った。けど、役立っているならば、兄として嬉しい。ちなみに、レクスが持っていった家は、薬剤・料理・装飾の生産設備がある。無いけど家が豪華なのもあったが、レクスは迷わなかった。これを考えるに、時東さんはオリジナル設備を持っていそうだから、ギルド内に持ってない人が結構いるんじゃないかなぁと漠然と思った。装備も、鴉羽を初めて見たと言っていた。この辺は、後発組だから、既存の抜けた人の設備とかが無いからである気がする。かつ、新しい方に航路を取っているから、今後もあんまり増えないだろう。難しい問題ではある。一番は、そういうのある復帰組の合流だったりするのだ。久しぶりにやるか、タイプだ。彼らはどこかに入りたいのにフレは高レベルだから連絡しにくかったり忘れられてる恐怖がある。けど、後発とは出会いがあんまりない、という流れだ。俺はこれに近い。久しぶりにやってる人、とかの募集が実は良いのだ。義兄弟・弟がそれをやっていて、かなり良い感じのメンバーが集まっていたのを覚えている。
さて、一時間して、レクスが戻ってきた。顔がうっとりで、うるうるキラキラした瞳だ。
「兄上! 本当にありがとう! ありがとうございます!」
「いやいや。おかえり。どうだった? 武器と鍛冶の生産設備とかもあるから、バランス見て言ってくれ」
「!!!!!!!!!!! 欲しい!」
「これ一応、庭あれば設置可能な総合設備と関連技能のアイテム倉庫だ。良かったら」
「ありがとう! 送って設置させる!!!」
「いやいや。あとそう、思い出したんだ――」
として、義兄弟・弟について話したら、すごく大きく頷いていた。
「なるほど! それ、かなり良いし、まさにその通りだな」
「うん。オーウェンとそれで再合流って聞いた」
「そうだったのか!?」
「そうそう。今はオーウェンがマスターだろ?」
「ああ。かなりの人望だ」
「あはは。良い人だったのを俺も覚えてるなぁ。なんかサクランボの素材もらった。懐かしいなぁ」
「そうか。素材……実はな、後発が詰まるの、生産がかなり多いんだ。設備もそうだが、素材も無い」
「ぶは。んー、テストから組もな、詰まってるというか、捨てた組が多いな。マゾイからな。俺とかドM評価だ」
「あはは。それは思う」
「おい! 後は、素材か。これはな、ぶっちゃけ僧侶が欲しいよな」
「そうなんだ……なるべく範囲が長短が行けて威力が高い」
「うん。俺もそれ、クラウがいて、途中から高砂とラフ牧師が合流して僧侶3と俺も僧侶あるから、そこでドカンと取ったのが効いてる」
「うわぁっ、理想だな。というか、強すぎて、そのメンツで素材集めは逆に驚く」
「ははは。後はまぁ、スキル書で強制的にレシピ出して、高経験値が効率は良い。素材も実はそっちが手に入りやすい。しかしスキル書は料理ばっかりだったりするよな。しかも超高いんだろ?」
「そうなんだ。死ぬ程高いのに料理のみだ。稀に薬剤。さらにどれか高くても、高レベルのスキル書を書くスキルは上がってないやつが多い。そして執筆と製本のスキル書は、俺は見たことも聞いたこともない。素材は、伐採からなんだろ?」
「うん、伐採だな。後建築で紙作ったり」
「そこからか!? はぁ……」
「実はスキル書は全部存在するんだ。ただしな、グル組んでないと使えないとか、同じギルドじゃないとダメとか、パテ必須とかが多いから、生産上位で固まってやってるパターンが多くて出回らないんだ」
「そうなのか!? 知らなかった!!!」
「うん。軽く師弟制度みたくなってるとイリスに聞いたよ。一回入っちゃえば面倒見がすごく良いグルはいっぱいあるみたいだけどな、入れてくれるまでが長いそうだ。ちなみに後発のみとか、一年以内開始もあるけど、全然聞かないだろ?」
「あ、ああ……知らなかった……!」
「うん。秘密にする人も多いみたいだな。よくわかんないけどな。まぁギルド規模の拡大方法としては、復帰組の他に、生産組のグルを取り込むっていうのは、かなり良いみたいだ。生産設備貸出をきっかけにして、後は素材集めを手伝う。で、素材がある場所でクエ詰まってる人々に声をかける、という流れもあるみたいだ。これもハルベルト」
「そうなのか……なるほど、グループごとか……」
「それに秘密生産組は、実は教えるの好きだったり、レベル上げ詰まってるとかもあるからな。本当に生産好きは、ひたすら売ってる気がする」
「ぶはっ――……やばい、ギルチャは家に喜んだ連中が埋め尽くして、グルチャはブログ見た組が埋め尽くして、個別が死ぬ程来る。俺、これは、未知の体験だ……大陸開放時より全部すごい……」
「そうなのか? そっちに専念しても良いからな? 俺暇だから」
「ありがとう、そうする時は言う」
「うん、気を使わなくていいからな? しかしさ、思ったよりゼストとかルシフェリアがすごいっていうのは分かったけどさ、俺のフレ作りはどう思う? 俺、こう、個人名とかじゃなく、聞いたことある大きな流れは今話せたけど、いざこう自分がってなると全くわかんない。個別、死ぬ程くる数いないしさ……どうしたらいいんだろうな」
「いや、想像以上に兄上がやばかったんだ」
「そうか?」
「ああ。まぁ、これはもう、ゼクスと名乗ったら、遠巻きだ。畏敬の念だ。だって、高砂の信者が『高砂様の友達はレベルが高いんです』とか言ってるレベルだ。あそこが認めるとかあり得なかった」
「ぶはっ、絶対それさ、高砂は心の中で爆笑してると思うよ」
「あはは、かもな。今日、思ったより怖い人ではないと思った。近寄りがたいと想像していたからかもしれないが」
「話すと優しいんだよな――けど、遠巻きかぁ……それ、困るな。畏敬の念かは分からないけど、俺だったら廃人としか思えないだろうな……普通に俺がやってたら、俺は俺を遠巻きにするだろう……」
「うーん、俺ならとっくに誇って教祖になってるがな」
「あはは、俺はそれはできなさそうだ。なんかこうさ、ほんわりしたノリで集まるようなフレってどうしたらできるかな? イメージとして、レクス×2、ラフ牧師、高砂、くらいで良い」
「俺が入ってるのが嬉しいな。俺タイプでいいなら、うちのギルドのサブマスの一人がそういう感じだが、俺は弟だからというのがある。俺は弟じゃなかったら今頃意識ないから、やつも無くなる可能性があるな」
「ぶはっ、弟で良かった。んー、どうなんだろうな。どうやって仲良くなったんだ?」
「俺が最初に入ったギルドで一緒になって、二人で抜けて、他のフレと時東とかと作ったんだ。ギルド経由、だなぁ」
「なるほどな。けど、俺がレクスのギルドに入って誰かと抜けたらまずいだろ」
「ぶはっ――うわぁ、その展開は何とも言えないな。考えていなかった。そして兄上がまだ俺のギルドを検討していてくれた事実に嬉し泣きしそうだ。設備とかなんにもないって話してるも同然なのにな。わかっててくれたりとか、良い人すぎる……ありがとう。そもそもいきなり家に来た俺に普通に住んで良いとかな。俺は今夜は、その説得を覚悟して朝出かけたから予定が夜、無かったんだ」
「そうだったのか。あはは。そこは、クラウンズ・ゲートに感謝だな。設備とかはな、これは逆にレクス達が気を遣いすぎなんだよ。前からやってる奴らは、よこせというからな。特に生産組は。まぁ色々あるのかもしれないけどな、案外気にせず接して、上目線とかで良い時も多いんだ。実はあっちも恐る恐るだからな」
「そう言ってもらえると気が楽だ」
「ギルドもな、俺、結構レクスの所興味あるんだ。いつになく。ただ、逆にそんなに騒ぎになるとか思って無かったから、事実ならレクスに迷惑をかけるのが怖い。なんかいきなり高レベルのお兄ちゃん来ましたとか、やりにくいだろ。しかもギルマスに偉そう、みたいな」
「兄上、全然偉そうじゃないけど、ここから変わるのか? 今の所、嬉しい迷惑しかない」
「ぶは、嬉しい迷惑ってなんか新しいけど和んだ。え、なんかわかんないけど、ギルマスって普通こう、大規模だと神様なんだろ? 俺、小さい自分の内輪しか知らないからさ」
「あー……なるほど。兄上が来たら、確かに俺は、神様じゃなく御使いになるな」
「ぶはっ、その表現っ」
「今もう既にそうなってるも同然だけどな。グルとか、限定から今日開始まで幅広くいて、よくやった、よくぞ公開した、もっとやれ、とかそういうのだ」
「あはは。ゼクスプラス記号名とかいる?」
「80人以上いる」
「ぶ、ぶはっ、ま、まじか」
「今なら記号で来ても絶対にバレない」
「あはは、すごい誘惑だな。恥ずかしいし照れそうだからヤメとくけど」
「ふふっ、謙虚だよな。俺なら見に行く、絶対に」
「ぶはっ。うーん、どうしような。まず、とりあえず、フレ作りだよ。グルで何ならぼっちらしいけど、どうしたらいいかって聞いてくれ」
「ぶはぁっ、それはやばい。立候補が多数になってパンクだ」
「あはは。あーあーあー、困ったなぁ。ちなみにオススメの大陸あるか?」
「それは、ユレイズ一択だ」
「理由を求む」
「――まず、ヨゼフは、超新規ばっかりだ。ラフ牧師のブログを見てチョイスが多い。フレというより、生徒が100人とかになるだろう」
「ぶはっ」
「次にアイリス。実は古参が一番多い。即座に宗教ができるだろう」
「ぶはっぁ」
「その次のアイゼンバルト。ここは、ゼストやルシフェリアといった伝説のプレイヤーギルドが多く、みんなの憧れの地につき、ゼクスバレしたら遠巻きだし、多分すぐにバレる。兄上は嘘が下手すぎる」
「ぶはぁっ、やだな、それ」
「だろ? そして新大陸。今は新規と復帰組と名前変更者で溢れている。一部が既存ギルドからの見学者。フレがいっぱいできるが、すぐにインしなくなる連中が三分の二くらいと考えられる」
「あー、なるほどな」
「その点、ユレイズは落ち着いてきた所だというのが大きい。バレても、俺がいるから多少の親近感を持たれて馴染める可能性もある。話しかけられやすい。兄上から見たら初心者、全体では上位に片足くらいだから、マナーもそこそこで、質問系雑談が多くなり、そういう話ができる上位古参は常に求められている。生徒よりは、弟子、さらにフレになる可能性があるし、既にいる古参とも話が合う場合もあるだろう」
「すごく共感できた。ユレイズか。良いな、あんまり行ったこと無いから、それも良いな。楽しそうだ。ちなみに、どういう雰囲気だ? 空気っていうのかな。ノリとか、行動とか、印象的な街とか」
「リア中高のガチ組が圧倒的多数。ニート・無職がそこそこ。後はごく一部の二十代後半から三十代半ばの人々。ガチ勢以外は、ディアバルト開始の中高生が多い。ニート系は、ヨゼフが多い。大人は、今は多分、ほぼ新大陸だろうな。常に新天地を求めてるのは実はこの辺だ」
「俺もそうだしな。しかも朝は行く予定だったとか」
「ぶは。けどなあ、案外実年齢が上の方が子供っぽいんだよな。落ち着きはガチ勢やニートの方がある。ユレイズは、大人も落ち着いてる人が多いがな」
「ああ、なんか、わかるかもな」
「だからまぁ、ノリは高い時は高くなるが、基本は落ち着いている。後は、ソロが意外と少ない。ソロをやりたい奴は多いが、できるレベルが少ないというのがある。レベルを上げる場所は常に模索中だな。まだそれは明確にはなってない。印象的な街は――ゼスペリアの教会について語るボス?」
「ぶはっ、ボスはいらない!」
「あはは。まぁ悪い意味なら、露店があんまり役に立たない。みんなアイゼンバルトに買いに行く。生産はかなり急務だな。全体的な底上げとして」
「そうなのか。地味にきついな」
「そうなんだ。代わりに、他には無い、武器レンタル露店という代物がある。お金を払って借りて、後で返す。返さないと掲示板で警告」
「う、うーん。掲示板か、新しいな。けど面白いといえばそうだな。ギルド貸出が多いイメージで、聞いたことがない。レクスの所は貸してるんだろ? 足りないって事か?」
「足りないというのもあるし、流通武器数がまず少ないから、助け合いをギルドを超えて、というのもある。正直武器はアイゼンバルトでもルシフェリアの所くらいしか確保はできていないと思うぞ。みんなアイリスに買いに行く」
「そうなのか!? 知らなかった……」
「中位程度の武器がほとんど無いんだ」
「ああ、なるほどな。生産はそこが上がりにくいから止まるし、あとはすごく上ばっかり作るしな」
「それだ。まさにそれ」
「実は俺、売るのは人任せだったから、売ってみたいから、俺的には、欠点ではないな。価格調査とか楽しそうだ。他は? あと、総人口と職比率」
「それは良い知らせだ……店だけでも出して欲しいレベルだからな。ええと、先に人口などだと、3500人前後が定住していて、今出かけている組のような、意外といない連中が500前後、ディアバルトからの通いが700前後。四分の一が俺のギルドだ。ギルド総数は50前後。後一箇所が1000ちょっと、もう一箇所が600後半、その他は10人から30人くらいで多数だな」
「すごいな、四分の一とか」
「はは。職比率は、冒険者と、暗殺者からの転職組忍者が多い。後は全体だと他の大陸より僧侶が多い方だ。ただしレベルは高くない。冒険者も盾より双剣か瞬足の細い剣が多い。鉄槌士は、ほぼいない。ただしこれは、アイゼンバルト以外ほとんどがそうだ。ユレイズ開始とアイゼンバルト開始が半々だな」
「ほー! 行ってみたいけど、今行ったら目立つか? かつ、お前と一緒って目立つって事か? 目立たない服装とかあるか? 福の神?」
「むしろ目立っても、今なら視線は来るが声は来ないからいいんじゃないか? それで一人の時に福の神なら誰も気づかないだろ、とりあえず」
「あ、それもそれで良いかもな。連れて行ってくれるか?」
「大歓迎だ」
「わーい」
と、こうして俺は、ドキドキしながら、レクスについて行く事にした。