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ちょっと遅れてレクスも入ってきた時には、エントランスというか従業員用の扉兼休憩室兼応接間の丸テーブルにお茶を置いていた。後はソファだ。そして座った。
「レクスも座ってくれ」
「あ、ああ……」
「ええと、大きいギルド二個の提携武器ブランドは、レクスの所とは取引してないのか? どういう所が全く分からないけど、見た感じ。やってたらごめん」
「あ、ああ! やっていない――……そうなんだ。取引をしていないというか、ハーヴェストは拒否された。理由は、三位から二位に上がって、一位と三位が元々いたからだ。はっきり言って、ユレイズではぶかれている。その二箇所からの圧力だ。よって、俺達は、自力で手に入れている」
「それ、龍と戦っていた錬金術師達?」
「そうだ。生産者繋がりでもあるそうだ。先方が師匠らしい」
「ふぅん。ここにいる僧侶は、ソロか? 古参ではなさそうだ」
「――その通りだ。俺と同時期に始めたフレだ。ただしハーヴェストに入るとやりにくいから、ソロ、という形だ。非常に強い。僧侶は多いが、言葉は悪いがまともなのは奴一名だ」
「なるほどな。魔術師三名は、お前かギルメン指導?」
「そうだ。最初は俺が、その後は魔術師スキルがギルドでは一番高い時東だ」
「あっちの薬剤POTは自作か?」
「ああ。こちらは購入している。隣の大陸だ。そちらは提携先がいくつからある。武器は、旅がてら買い出し組が出ている。アイリスだ」
「ちなみに、なんで一位と三位は合流しないんだ?」
「三位は下位で下僕、一位は支配者だ。レベルが上がると移動だ」
「恐ろしいな。潰さないで共存するのか? 偉いな」
「っ……それは……――潰せると思うか? 本音はそうしたい」
「俺の周り気に食わないと排除する連中しかいないからなぁ……俺個人はダラダラ系だけどな。やるんなら、余裕でやれるだろうけどな。その後の追放先手配とか、マシなのの保護だとか、受け入れ体制だとかは面倒くさいと聞いた事はある」
「……。正直、兄上からそういう言葉が出てくるイメージは無かったから、逆に頼りがいが増した。後は、観察眼」
「あはは。長くやってるとなぁ、色々あるのを見たり聴いたりはした、って、だけだけどな。所で、支配者って弱そうだけど、長いってだけ? 何かあるのか?」
「一番は長さだ。実際、キャラレベルが高くても弱い。ただし、うちはキャラレベルは低く、スキルや職は向こうとほぼ同じだ」
「ふぅん。下位の下僕は、他の下位よりマシそうだけど、強さ。それは?」
「下克上狙いだ」
「ぶは」
「後は、あちらはキャラレベルは、課金無しの効率支援がある。武器配布と薬剤POT取り放題倉庫もある」
「へぇ。あと、レクスの方もだけど、防具と体装備は?」
「無い」
「ほう。MPは?」
「休憩」
「んー、旅って団体で出られるんだっけ?」
「ああ。レベル上げの旅にも行ける」
「行きたい人は、どれくらいいるんだ?」
「――三分の一くらいだろうな」
「なるほどな。まぁ、さ。潰す潰さないは、とりあえず置き。生産用倉庫を大量に建てるだろ? 横に生産設備と敷地付きの。で、防具・体装備を用意。オシャレなの。並行して薬剤POTと移動ワープ。MPと解除も含めて全部中の上。後は、武器も用意。そしてこの武器は、ハーヴェスト銘が望ましい。防具からPOTまでを売って、経団連登録で良い。さらに、最後以外の全部の街に家を設置し、全箇所に拠点。カフェ掲示板無料倉庫付き。そこでレベル上げパテ募集全部で常時、素材はプレイヤー依頼形態で募集出す。報酬は武器。これで生産組中級者が勝手に集まってくるし、固定パテと復帰組も来る。後は、スキル書大量に放出。これを生産やるギルメンが適度に見ながら放置で、残りは全部、素材収集に旅立つ風に、レベルをガツンと効率で上げてくる――かなぁ、俺なら。全部品は用意可能前提で、レクスはどう思う?」
「やってみたいが、用意以前に、それらが揃っても、やり方が分からない。依頼形態は、見たことしかないし、カフェ経営や倉庫自体の貸出のイメージが沸かない」
「じゃあ、まず、この形態のギルドや街を見学に出かけて、それから考えて見るというのはどうだろうか?」
「ぜひそうしたい。だが心当たりすらない。例えばどこだ?」
「最初にやったのは、アイリスの右の一番奥」
「っ――到達する前に死ぬ」
「俺行ける」
「……あそこをソロでか?」
「ああ。レクスも行けるようになるだろうな、近い内には」
「努力はする――……それと、言いたくなかったが、ここまで考えてくれたから正直に言うが、一位と三位は、両方ギルマスがヴェスゼストのギルドのメンバーだった人々で、彼らの提携先の武器ギルドは、ヴェスゼストのギルドの執権経験者が作ったギルドだ」
「――? ヴェスゼストって誰だ?」
「へ?」
「聞いたことないけど、有名な人か? あの……悪い、俺、ほら、レクスについても知らず、ラフ牧師や高砂がそんなに有名とも知らず……」
「ぶはっ、え!? ヴェスゼストを知らないのか!?」
「全く知らない」
「ゼストが暖簾分けした一番弟子で、ゼスペリア教最大派閥のトップだ。今はゼストよりも影響力があるが、ゼストについては立てている。ルシフェリアとも争っている。クラウ達の万象院とは事を荒立てないようにお互いが距離を置いている」
「ゼストの弟子? じゃあ、ゼストに言ってもらえばいいのか。潰す必要とかないな」
「ゼストが言えるかも分からない。そのくらい強い」
「ぶはっ、そうなのか? え、見に行きたい」
「え」
「どこにいるんだ? そこに行ってから、アイリスに行こう」
「――アイリスにいる」
「あ、そうなのか? じゃあ丁度良いな。アイリスのどこだ?」
「……俺達の目的地だ」
「へ? うーん、聞いたこと無いなぁ……俺、あそこの地下に超いたんだけど。いつからその人はいるんだ?」
「二組目の到着組だというから、兄上達の次に到達のはずだ。以来ずっといるそうだ――恐らく六年以上前だ」
「えー? 俺絶対いたんだけどな。特徴とかは?」
「ゼスペリア大聖堂のギルドマスターで、赤茶の髪に緑の眼。見た目は兄上のリアルと同じくらいだが、兄上は若いからもうちょい年下のアバターだ」
「宗教書系スキル書を売ってるギルドだな。知ってる。そういえば昔、ゼストが、『ゼスペリアの青に関する宗教色強いスキル書を作れと言われて無理なんだけど』って言ってた事があるな。懐かしいなぁ」
「そ、それ、ヴェスゼストの福音付録ゼスペリアの赦祝か? ゼストが語ったとかいう」
「それだけど、あれ、書いたの俺だけどな。ゴーストライター」
「ぶはっ、は!?」
「けど、当時のそこのギルマスは、蛙のアバターだったし、俺が知る限り、俺は蛙しか見た事ない。名前もケロッぴだったと思う」
「へ?」
「んー、アバターは変更可能だけど、名前は無理だったぞ? パテはケロッぴだった」
「……悪い、分からない」
「まぁいいや。面白そうだし行ってみよう」
「あ、ああ」
こうして俺達は出かけた。アイリスに行くと、ざわざわっとした。そして大量の人が俺達を囲んだが――俺は慣れやすいので、そのまま歩いた。今度はレクスが動揺していた。さて、二人でダンジョンに入る。いっぱい付いてくる。アイテムで転移してるのに、彼らもまたアイテムだ。まぁいいやと、ちゃかちゃか進み、ボスを一撃で倒したら、シーンとしてしまった。が、無視して直進して、三時間で着いた。
「ここだ」
「いや、あの」
「ん?」
「倒せるとは思ったが、一撃って……」
「慣れだ」
「……そうか。最早何も言えない」
「それで、どっちだ?」
「ええと――……っ」
「?」
瞬間、レクスが右前方を見て硬直したので、首を傾げてそちらを見た。さっきレクスが言った特徴の人がいた。ズラッと聖職者が後ろにいる。聖職者は、真後ろの左右二名は見たことがあった。ケロッぴの付き人だ。
「何か御用ですか?」
「ええ。ケロッぴに会いに来たんですが……」
「「「ぶはっ」」」
俺が言ってから福の神になったら、ヴェスゼストと後ろ二名が咳き込んだ。
「は? え、ゼクス様って、鴉羽様?」
「ああ、うん、まぁ」
「「ええええええ!?」」
「……あちらでお話を」
ヴェスゼストがそう言ったので、俺は元の姿に戻った。瞬間その場が静まり返った。
「兄上、間違ってる」
「ん?」
「リアルになってる」
「あ」
俺は慌てた。やばい。が、もう遅い。すごいざわめきが広まってしまったのである。ゼクスって、モデルのゼクス!? え、本人!? 嘘だろ!? いやけど!? だ。俺は涙した。やばい。
「あ、あの、えっと、ちょ」
囲まれた。逃げられない。あわわわわ、となったら、ヴェスゼストがドーンと青Otherを放った。
「静まれ――行きましょう」
「はい!」
俺は感謝して走った。レクスも慌てて走った。こうして――俺達は、ゼスペリア大聖堂に入れてもらった。
「ありがとうございます!」
「いや……あの、一つ良い、ですか? 本物のモデルのゼクスがゼクスで鴉羽様なのか、え? ですか?」
「う、あ、の」
「――兄上はモデルでデザイナーのゼクスという名前だというのは、弟だから証明できる。だが、鴉羽かどうかを俺は知らない」
「レクス! 言ったらバレるだろ」
「兄上が迂闊だったんだ。しかも自分でアバターを全部公開したんだ。俺はもう知らん」
「えー!? っと……こんにちは、ゼクスといいます。あの、ケロッぴ……なのか?」
「っ、あ、ああ。そうだ」
「そうだったのか……誰かと思った。久しぶりだな」
「ええ。あ、あの」
「ん?」
「一緒にモデルアバターでキャプってもらえませんか……?」
「「ぶはっ」」
「だ、だめか?」
「いや、いいけど……じゃあ一緒に今後の対策を考えてくれ。ただでさえぼっちなのに、もっとぼっちになってしまう……」
「いくらでも! お願いします!」
そして何か、ヴェスゼストと撮影した。レクスが遠い目で笑っていた。かつ、レクスも、俺とヴェスゼストを撮影した。その後、三人で撮った。なんかよく分からない。
「俺今日はもう死んでも良い。ファンだったんだ」
「え、あ、そ、そうか。ありがとうございます」
「いや。ミジルダのネックレスから全部持っているんだ」
「えっ、本当か!?」
「ああ」
「あれ、どうだった?」
「リアルでは、大体つけてる」
「わー! じゃあ、これを貰ってくれ!!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ミジルダの時計だ。十字架バージョンだけどな」
「うわあああああ!!! 良いのか!?」
「うん」
「家宝にする!!!」
ヴェスゼストがうっとりしながら涙ぐんでつけてくれた。さらに本人とレクスがそれを写メった。すごいな。周囲の聖職者は、意外と笑顔で見守っている。
「あのさ、それはそうと、対策を考えてくれ」
「兄上。もう俺のブログとヴェスゼストのブログで公開する方向で行こう。限定からやってる廃だと暴露し、ぼっちで友達募集中で弟の俺が来た所からコラムにしておく」
「それが良い。鴉羽との出会いから書いておく」
「ぶはあああああっ! え!? 余計にフレできないだろ!!!」
「お、俺で良ければ」
「あ、お願いします」
こうして俺はヴェスゼストとフレになった。なんだか予定と違う。そしてヴェスゼストもブロガーか。かつレクスのブログにはコラムがあるのか? なんだろうな。
「それ本当に効果あるんなら、お前らすぐにやってきてくれ。俺がここを出る前に。悪化したら、俺、泣きながら地下にダッシュしてこもるから」
「「行ってくる!」」
そのまま二人とも消えてしまった。