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なお、今後のアイテムデザインの提携の話と、俺のお祖父様の会社の話までした。いらないだろ。さらにそっち経由だろうが、さっき会社に提出してお休みとした、今年のデザインも出した……俺がずっとゲームにいるとか言った。おい。しかもルシフェリアのコメントも公式に出た。GUI開発者として、友人として! 俺の大学の専攻とかいらないだろ。十三で医学部とか自分でも引くのに! これにはヴェスゼストもポカンとした。なんか俺、天才ゲーマーで、リアル天才とかいう話題になってて気まずい。金・美貌・才能、全部あるとか。いやあの友達がいないんですが的な。これを呟いたらレクス達が吹き出した。
その後、俺の知らない芸能人も続々と登場。クラウンズ・ゲートは楽しいとか、自分同様短時間やって交流スタイルから『ゼクスと同じように極めるまで!』とか。うるさい。俺のログイン時間とかいう死ぬ程プライバシーが公開された。俺は泣きそうになった。だが、50000人時点で、50位くらいだった。ちょっとホッとした。一位じゃなくて良かった。許可者にお祖父様の会社がある。馬鹿。なんかハルベルトのインタビューが更新されて、開始当初からの話とかが出た。やめろ! ゼストとの出会いとか師匠だったとかやめろ! 当時の雑誌とか出さなくていいから公式! ずっと最前線にいたとか止めてくれ! そこ、俺しか立ってないから!! 俺がちまちまそう言ったら、なんかゼスペリア大聖堂は笑いに包まれた。俺は必死なのに……。さて、満をじしてゼスト登場。おいおいおい、リアルは小説家! なんだと!? 俺、その本読んだ! っていうか、一緒に写真撮ったことある。前に作家の指名だとか言って頼まれて、本屋さんでその本持って広告に出た。お前だったのか、超有名エンタメ作家よ……。その話をゼストもしている。写真持ってるよおい。なんだこのリア充メンバーみたいな話になっている。それは俺も思った。ラフ牧師とゼストと一緒にいたら、俺、確実に目立たない。ちなみにラフ牧師の主演ドラマの原作がその小説だ。うわぁ。ドラマの衣装は一部俺。恥ずかしい……。
「なぁ、これさ、いつまで続くんだ? 俺もう嫌だ」
「兄上、思うに今夜盛り上げ切れば、明日は参入組が本格的に初めて落ち着くだろう」
「そ、そうか?」
「ああ。俺もレクスと同じ意見だ」
しぶしぶ俺は頷いた。なんか知らない人がいっぱい俺の『鴉羽商會』の武器についてとか語り始めた。プロゲーマーだそうだ。スキル習熟度だとか、俺が見たことない統計とか出てきた。服のオシャレ装備を次に出てきた人が語った。みんなの憧れとかなんとか。ゲーム内価格が出る。義兄弟のインタビューも出た。そうしてゼスペリアの教会のNPCが出て、俺が作成したインテリアとか出た。お父さんの会社が先程インテリアの発売を決めたとか言い出した。運営は俺がやってると今日知ったけどゼクスというランカーが予想外のレベルキャップに到達したからとか話している。これはみんな知っていたから同意だ。そのまま段々ゲーム内の話にシフトして、攻略の思い出とか、感動とか、後は上手いとか強いとかかっこいいとかいう話になったり、ステータスの話になったり、出すまで一ヶ月とかそういう話になった。ゼスペリアの青の合成者とか言われた。これにはヴェスゼストも感動していた。朱匂宮とか緑羽万象院とか、そういう話も出た。もう止めて。
「俺、ちょっと出かけて良い?」
「ん、ああ」
俺はレクスに頷き、消えた。疲れた。行き先は高砂の家だ。疲れた。ここは基本誰もいない。ノックした――ら、高砂が出てきた。いつもいないのに。
「あ、悪い、いたか。出直す」
「いや、いいよ。大騒動で避難でしょ?」
「そんな感じだ……俺、疲れた。びっくりした……」
「まぁ入りなよ」
こうして中に入ったら先客がいた。俺を見てビクッとして硬直してしまった。
「あ、お客様なら、本当に……」
「大丈夫。その内紹介しようと思ってた。時東だよ」
「あ、ゼクスです」
「え……時東だ」
「お邪魔します」
「――『仮想現実における痛覚遮断コントロールと幻想性の表現によるペイン緩和システムの応用』を書いたゼクス=ゼスペリア?」
「へ? そうだけど、なんで知って――ああ、さっきルシフェリアが余計な事言ったからか……時東さんはお医者さんなのか? ん、時東? あれ、タイムクロックイーストヘブン博士って、時東修司先生って聞いた。あれ?」
「知ってるのか?」
「うん。論文は全部読んでる。お祖父様が――俺の祖父が実現化してて、俺は機械にペイントしたりだけだけどな」
「っ、あ、その」
「本人みたいだよ、ゼクス」
「あ、そうなのか! 奇遇だな。お世話になってます」
「い、いや……」
「あと、レクスがギルドでお世話になってる時東って時東先生だろ?」
「そうそう。紹介しようと話していたらモデルバレで、これは紹介できないかもなってなったらゼクスが来た感じ。俺は来ると思うって話してたんだけどね」
「うん。はぁ……」
「いいんじゃないの? その顔で歩けば。俺はこの方が良いんだけど。時東はどう思う?」
「えっ、いやっ、あの」
「もう一個はな、こっちなんだ。福の神」
「ぶはっ」
「それでこっちがレクスのオススメ」
「うーん。俺は子供好きじゃないんだよね。十年前なら兎も角」
「あはは」
「けどおっさんよりは良い」
「ぶは」
「……俺は鴉羽アバターしか知らなかった」
「あはは。とりあえず戻した。具体的な案としては、ローブでフル装備で顔を隠して偽名」
「ああ、そこら辺だよね、落としどころ」
「だろ? なんかとりあえず、ガツンとレベル上げに行き、全てを忘れたい」
「だろうね。行く?」
「行きたいけどいいのか? 俺、一人でも大丈夫」
「むしろ行きたい。俺、このメンバーで組んでみたかったんだよね。どこ行く?」
「人気のない所だから……ワルバライディアスの峠は?」
「人気ないっていうか、みんな到着できないチョイスだからそれ。まぁ行けるかもね、よし、送る」
「ありがとうございます」
「えっ……本当に良いのか? というか俺死ぬだろ」
「大丈夫。俺も死ぬ」
「いや死なないだろ、二人共。わー! やったー!」
こうして、俺達三人は、マイセスの街から繋がる隠しダンジョンに向かった。そこをさくっと攻略して、ひっそりと存在する細道を殲滅しながら通り抜け、峠入口に到着した。アイテムとかはない。スッキリするのが目的だからだ。俺がガツンガツンと倒し、高砂は見ていて時東はなんかポカーンとしていた。
「ついた。行こう!」
「うん」
「あ、ああ」
ここからは、俺が前衛、高砂ドカーン、ちょっとしてから時東が回復に慣れた。慣れる速度は流石だ。っていうか、イリスより上手い。誰一人死なずに一時間かけて次のフィールドに進んだ。レベルがちょくちょく上がる。スキルだ。派生である。ここは上げやすいのだ。人も俺達しかいない。雑談しつつだ。
「なんていうか――俺は、このレベルのフィールドを、こんなにホッとしながら雑談できる余裕を持って訪れる日が来るとは思ってなかった」
「時東、それは分かるよ。っていうか、俺はそもそも、ゼクスに初対面時に焦りクラウがいて気絶するかと思った」
「だろうな」
「んー、そうなのか? 俺、なんかよくわからないんだけどな。あ、なぁ、時東、これとこれ使ってみて。その方がいい気がする」
「鴉羽装備……」
「時東、俺なんかもう催促するし、オーダーメイドだから」
「……けどな、これは……」
「うん、すごいよね」
「……欲しい」
「どうぞどうぞ」
「ありがとう……」
ふふふっと思いながら進んで、さらにフレになってもらった。ど緊張された。そうしたら俺も緊張してしまった。が、敵は倒してまた次に進んだ。細い道である。しかも下は絶壁。落ちたら死ぬのだ。そうしたら街からである。そして――!
「あ!」
高砂が俺の服を踏んだ。俺は派手に転倒! とりあえず高砂を安全地帯に飛ばして、地を蹴って戻ったら、高砂に突っ込み抱きとめられ、慌てて起き上がったら滑って今度は時東に抱きとめられるというアクロバティックを披露してしまった。
「あ、危なかった……!」
「ごめん、本当ごめん」
「いや、良いけど。なんか俺、今ならサーカス団に行ける気がした」
「いや本気でごめんね」
「ああ、いや、こちらこそ。時東もごめん。もう大丈夫だ」
「あ、ああ……」
「? 大丈夫だぞ?」
「う、うん」
「――時東。ゼクスはもう一人で立てるみたいだから、離していいと思うよ」
「えっ!? う、あ、はい!」
「わっ」
時東が突き飛ばすように俺を離したから、俺はまた、今度は後ろから高砂に抱きとめられた。ギュッとされて、動きがやっと止まった。