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「あ、わ、悪い」
「いや大丈夫だ」
「うん。さて、どうしよう? モンスターより危ないって想定外」
「うーん」
高砂が離してくれたので、俺は先を見た。
「ああ、すごい破壊力だ……」
「いや時東、同意だけど、道の話だから」
「っ」
「後で語り合おう。それはそうと、ゼクス」
「ん?」
「ギルド決まった?」
「いや、全然」
「俺達と作らない?」
「!?」
「へ? うん、今なら良いけど、お前はクラウ、時東はレクスは?」
「ゼクスの保護って言ったら二人共納得するんじゃない。むしろ行けって言うでしょ」
「ああ、良いな、それ。じゃあ俺、レクスに、時東に保護して貰ったって言い、クラウには高砂に保護して貰ったと言うな。今送っていいか?」
「うん。その話をしに、彼らが知らない場所に行きたい。座れる所」
「うーん、あ、アイゼンバルトの東突き当たりの湖の地下遺跡から飛べるヨゼフの神殿とかは?」
「なにそれ、存在を知らない」
「俺も知らん」
「じゃあ行ってみよう」
こうして俺達は向かった。ローブで顔を隠し、アイテム移動で到着した。湖で装飾具を落とし、入口をあけて進む。こんなのあるんだと高砂が珍しく感動していた。確かに綺麗である。そのまま神殿に出た。小さいが、応接間にフカフカのソファがある。俺はそこでお茶を出してから座った。二人も座る。
「うん、ここは、誰も来ないっていうか、存在を知らないだろうね」
「あはは。じゃあ、二人に送ってみる」
「うん。俺も送る」
「――俺もか?」
「無理か?」
「嫌なら別にいいけど、遠慮なら逆に迷惑だよ。そろそろ自分について考えたら」
「……送る」
と、なって、送った。俺には返信がない。だが、二人が黙ったので、二人は応対中だと分かる。俺はダラダラしていたのだが、二人がタバコを吸いたそうだったので、灰皿とタバコを出した。高砂は慣れた感じで手を挙げて吸った。時東は会釈してから、おずおずと、である。俺も銜えた。紫煙が舞う。
「――クラウは、クラウは良いけど、ギルメンは自分で説得しろって言うんだよね。それでギルメンは大反対で、それならゼクスを勧誘して入れるとかって感じ」
「高砂が勧誘するのか? お前のギルメンが俺を?」
「ギルメンがゼクスを」
「ちょっと興味ある」
「あ、本当? グルで良い?」
「うん」
「興味って内容だよね? それともギルド加入?」
「メンバー」
「ぶはっ、うん、つなぐ」
こうしてグルチャに入った。真正面で、時東が驚いている。
「こんにちは」
「「「「「「!!!!!!!!」」」」」」
「皆さん、ゼクスさんです」
「よろしくお願いします」
そこから――なんだか、勧誘されず、高砂とのフレとしての関係について聞かれた。高砂はキャラメルのような人柄であり、非常に梅酒に似た味わいで、まさに黒猫のようだと、本心を告げたら、みんな止まってしまって、高砂にまで突っ込まれた。
「え、なにそれ、どういう意味?」
「へ? そのままだけど? なにが?」
「褒めてる? 貶してる?」
「ありのままだ」
「わかんないから!」
「そっか……ええと、あのな。それで、箱のように、しばらく高砂に保護してもらいたいんだ。さながら緑羽万象院の俺と、列院総代である高砂の、青き弥勒っぽい流れで」
「「「「「「!!!!!!!!!!」」」」」」
「万象院、多分、俺達で組むと出るから、もっと極められる。そして俺の保護が終わる頃には、高砂は万象院そのものだろうな。今よりもさらに。あと、匂宮も、多分な、高砂だと条件的に、分家じゃなくてまだ出てないけど一番強い配下家出る気がする。この二個で闇の月宮取ると、俺が知る限り、一番強いけど、一番強い高砂がみたいな。楽しそうじゃないか?」
「「「「「見たいです」」」」」
「だろ? ギルメンで信仰変化するから、最初は無理だけど、いつか信仰上がったら遊びに来てくれ。それまで借りるな」
「「「「「……」」」」」
「じゃあな――あ、これ、そういえば、本尊本院に似合うと思って作った腕輪。記念にみなさんと高砂でオソロで。万象院の防御を上げるという珍しい腕輪だ」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
「――ありがとう」
「さて、行こう」
「うん」
「「「「「お帰りをお待ちしております。いってらっしゃい!」」」」」
こうして俺達は、チャットを打ち切った。
「すごいね、ありがとうゼクス。まとまるとは思わなかった、正直」
「え? 信者が折れたのか?」
「うん。ゼクスが笑顔で万象院にも利点があるのを、俺すら思いつかない方向で説明して買収もして完璧。あっさり」
「すごいな」
「時東はどうなったの?」
「ああ。しっかり守れとさ。逆だろうと突っ込みかけた」
「ぶは。それにしてもギルドかー! けど、なんで二人は作ろうと思ったんだ? 今日はその話をしてて俺を入れてくれたのか?」
「いや、俺は前からゼクスに言おうと思ってたんだけど、タイミングが無かった。今回探してるって分かったから、何日かして落ち着いたらと思ってたら、連絡集中しそうで同じ誘い大量に来るだろうししくじったなと思ってて、けど掲示板を見て、ああ避難に来そうだから、来たら即だなと思ってたら、思いのほか疲れてたから先にストレス解消にいって、そのままここ。時東には、ゼクスにギルド作ろうって声かけるからそうしたら入ってって一年くらい前に言っておいた」
「そうだったのか。じゃあ時東は今、一年ぶりに聞いたのか?」
「ああ、まぁな。完全に冗談だと思っていた」
「俺は冗談はあんまり言わないけどね」
「あはは。けどこのメンバー良いな」
「それは何が? 空気が?」
「まぁそう言うのもあるけど、レベル上げも充実しそうで、生産素材も集まる上作り甲斐のある職だというのと、攻略系も構成と状況判断的にサクサク行けそうで、かつお前ら俺と違ってゲーム内で良い意味で有名人だというから、色々とギルドについても分かりそうだし、パーティも空きが3だから人を入れやすいけど俺達のみでも行けるし、何よりスキル書のテストをしてもらえそう」
「なにそれ、俺達のレベルを上げてくれて装備も作ってくれてダンジョンも連れて行ってくれて、スキル書もくれるけど、完全にゼクスの前で他を防衛し、さらに支援系をやるなら自由だけどどっちでも良いとかそういう事?」
「ん? いや、なんかこう、頭に浮かんだフィールドでわくわく範囲殲滅するようなのを想定してレベルを上げると言ったけど、俺の派生上げとお前らの複合上げが終わるのは同じくらいの可能性はあるな。ダンジョンは、逆に俺があんまり行ったこと無いんだ。倒せるだろうけど道が不明とかな。だから俺を連れて行って欲しい。スキル書はあげるけど、代わりに結果報告を俺にくれ。求む、状況、みたいな感じだな。支援はな、今日ずっとレクスに聞いてたんだけど、俺さ、やってみたいけど何していいかわからないからやるならまぁ俺にも手法を教えながらやって欲しいですというのはあるかなぁ」
「すごく俺的にそれは理想のギルドだよ」
「あはは。けどあんまりハードル上げず、目指せ『普通のギルド』にしよう」
「ぶは、うん。そうだね」
「高砂と時東は何したい? 俺は、今言った感じだな」
「――俺は、正直に言えば、複合を上げきるのと、ロードクロサイト色相の調整をしたい」「それ良いな。調整どんな感じなんだ?」
「三極で、一部五極」
「わ、すごいな。五極なに? 青紫? 青緑? 赤紫? 黄色? これ全部?」
「っ、それ全部だ」
「おお! エスゼ値は?」
「2・2・6・5」
「すごいな! ルシフェリアより細かい」
「本当か?」
「ああ。しかもイリスより回復早いし、後は青緑を4まで行ったら、調整、四極専念じゃないのか? 俺も励む……! いいなこれ、俺はこう言う話をするのを求めていた……なのに、みんな聞かないし聞きにくいのに、今日のレクスキャプを喜んだと聞いた」
「俺も喜んだ一人で聞いてないけど、気持ちはすごく分かるよ。俺も最近全くできないから。時東もでしょ?」
「ああ。というか、極もエスゼ値も、まず通じないし出てこない。もうその言葉を気いただけて、五極がすらっと出てきて当てられただけで、俺は今日は良い夢が見られる」
「あはは。分かる、俺もこの言葉が通じるの嬉しい」
「ふぅん」
「高砂も恐らく一ヶ月後には聞いてないのに覚えてる自分に気づいて鬱になってると思うレベルだ。なんか横で討論してるとお前全部暗記してしまうタイプだ」
「ぶはっ、うん、まぁね。時東もそうだよ。そして二ヶ月目には何か討論に混ざってるんだよね」
「ぶはっ、すごい想像つく」
「いいな、俺はそういうのが理想だが、ああ、ハードルは下げて通じて満足としておく」
「うんうん。楽しみだ。高砂は?」
「俺はね、まず信者ゼロのフレのみで少し休みたかった。これが一番。二番目は、ゼスペリアの教会の人々を最初の頃見てて、ぶっちゃけ俺とゼクスでギルド作った方が強くなると思ってたから。回復がいれば完璧だと思ってたら時東を見つけた」
「ぶはっ、それさ、俺も思ったことある」
「あ、やっぱり? クラウとイリスの相性悪かったのがダメだよね」
「ぶはぁっ、まぁ、それはあるな。あの二人、職が逆だったら良かったんだけど、和服と聖職者服にこだわりあるからな」
「あはは。すごい説得力を感じるし、それ、考えた事無かったけど、上手くいきそう。あと三番目は、やるからには一位を目指したい。個人もギルドも。メンバー的にゼクスが欲しい。四番目は、強いけど気楽に話せる。ラフ牧師よりも」
「なんか嬉しいな」
「最後は、ゼクスは必要で、本人もどこかに行きたいのに、必要って言えない周囲と行き先迷子なゼクスを見てると、こう、あそこ行けばって言いたくなるから、言おうかなって」
「なにそれ、俺それすごく助かるんだけど」
「うん。だろうね。まぁこういう感じ」
「ワクワクする。ギルド名どうするんだ?」
「思いつかないんだよね。時東何かない?」
「アンチノワール」
「お、かっこいい」
「うん、それにしよう」
「おい、良いのか?」
「俺は良い」
「俺も。ギルマスどうする? 俺、サブマスがやりたいんだよね」
「じゃあ時東?」
「いやおかしいだろう。ゼクスか、誘った高砂だろう」
「ほら俺、後ろに隠れるから、執権か、頑張ってサブ」
「けどゼスペリアの教会の時、ギルマスが一番隠れてたよね?」
「ぶはっ、確かにそれはあるよな。他が強いとそこのマスターって呼べないとかなんとかな。あれ謎だよな。俺がやるとするなら、お前ら目立って俺を隠すんだぞ?」
「うん。何もしなくてもこの状況下じゃ、俺達ガン目立ちだと思うよ。ゼクス本人に声かけるより、俺達の方が明らかに楽だし」
「高砂の言う通りだ。俺と高砂がサブマスで、ゼクスはギルマスをやってくれ」
「わかった。じゃあ俺はアンチノワールのギルマスのゼクスになる。作るな」
「うん」
「お前ら行動が早いよな……どうぞ」
「できた!」
「――おお! いいね、これ」
「ああ。実感がまだゼロだけどな。ギルチャが変わったのが不可思議な感覚だ」
「俺なんてギルチャもうずっとゼロだから涙が出そうだ。ホーム、俺が今あまってるのこれだから、とりあえず後で相談で最適なの建てるとして、どれか置こう。どれがいい?」
「ギルドホームあまってるとか初めて聞いたんだけど」
「俺もだ――しかも、すごいな。俺はこれ、二列目からの医薬品関連生産一式あるもののどれかが良い……うわぁ、これ、この合成機欲しかったんだ……」
「俺は、三列目の寺が欲しい。だから、そこからならどこでも良い」
「なるほどな。そうだなぁ、敷地がな、庭とかこういうのがあるんだ。それに合わせて決めよう。どこの庭セットがいい?」
「いやだから、なんでギルドの庭の予備とか畑を、こんなに大量に持ってるの? 明らかに作る予定だったとかじゃなく」
「だって、こう、なんかな」
「ぶは」
「俺は、右の二番目の上」
「あ、いいね――じゃあさっきのだと、俺、5列目の左から三つ目の家がいい」
「よし、こんな感じでどうだ? イメージ。後は街選び」
「俺は良い。理想だ」
「俺もだね。ゼクスに生産は期待してたけど、ここまでサクサクとは思わなかった――そうだなぁ、ヨゼフかなと思っていたけど、この神殿みたいな隠しダンジョンがあるなら、どこでも静かに過ごせる可能性もあるから迷う」
「新大陸はどうなんだ? 俺は、まだ見ていないんだが、三つ先の街くらいなら、人気もないんじゃないのか? 聞いた話だけどな」
「あー、なるほどね。ゼクスはどう思う?」
「俺、新大陸に行ってみたい。見て決めても良いし、なんかこう適当に設置して、本気で建てる時、移動でも良いしな。いっぱいあるし、最終的にアンチノワール独自を作るから」
「ぶはっ、いや、あ、そっか。うん。その発想は無かった。それ、そっか。あまりか」
「スケールが違うよな」
「あはは。普通に建築上がってる奴が少ないからそう感じるだけだ。とりあえず、行ってみるか? 今なら、人いないかもしれない」
「そうだね」
「ああ」
こうして俺達は移動した。ガッツリ俺はフードと口布である。