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まず、VRは、どのゲームも共通で、リアルと同じ身体情報が取得される。現在はその状態だから、アバター造形画面の映像も、俺は俺のままだ。そしてこのクラウンズ・ゲートというゲームでは、オリジナルそのままの姿と、内部限定の姿で、二種類アバターが持てるそうだった。オリジナルの方も、髪と目の色は変更可能だ。しかしオリジナルはそのままにした。使う予定も特にない。そして二種類目に、気合を入れて取り掛かった。このアバター作りに、アバター製作可能時間の二ヶ月を全部費やしていた人も結構いたから、俺のステータス決定の遅さは人目につかなかったというのもある。アバターは、悩みに悩んで、福の神のような小太りでお腹が出ているオジサンを作成した。親しみやすい感じで、デフォルトが笑顔だ。俺よりも大分年上の外見である。気合は入れたが、このデザインはずっと考えていたので、すぐにできた。
後は、基本職業と出身地が選べる。この二つで、デフォルトのスキルが変化する。
職業は、聖職者・魔術師・錬金術師・僧侶・冒険者・暗殺者の6つである。回復・後衛・生産・中衛・前衛・ソロ用と大別できる。どれも全てをできるが、あくまで初期だ。特に冒険者と暗殺者は、初期からオールマイティに色々できる。錬金術師は、生産が初期に有利という事だ。最初に持っているスキルの話だ。その中で、冒険者は前衛スキルが多く、暗殺者は全部一個ずつという話である。だが、6つのスキルが最初からあるというのは良い。ただし、威力はどれかに特化している方が強いし、結果的に全ての職業を習得できるので、何とも言えない。ただ、聖職者を選ぶと暗殺者の職業を習得しにくいなどがあるらしいので、俺は全部を最初から使える暗殺者を選んだのである。それに暗殺者は好きな出身地を選べるからだ。
今選べる出身地は、ゼルリア・ラファエリア・ロードクロサイトの三つである。これは、聖職者と僧侶がゼルリア、魔術師と錬金術師がラファエリア、冒険者はどちらかにランダムであり、暗殺者のみがロードクロサイトも含めて自由選択なのだ。先に始めたルシフェリアの話として、ロードクロサイトは人が少ないが、出身者が少ないから友達ができやすいとの事だった。出身地なだけで、開始地でも住居でもないのだが、話が盛り上がると聞いたのである。友達が欲しい俺としては、魅力的だったのだ。
後は、暗殺者スキルで、生産の『露店』を手に入れているので、生産物も素材も販売可能だから、好きな生産スキルを二個選べた。普通は露店ともう一つとなるので、最初から二個だというのは良い。総合として『料理』『薬剤』『装飾』『武器』『防具』がある。個別として『調理』『調合』『裁縫』『栽培』『採取』『鍛冶』『発掘』が現在合った。今後追加されるらしい。総合と個別の違いも現在はあまり良く分からないが、とりあえず装飾と裁縫を取得した。これは、薬剤系はイリスが、武器系はルシフェリアが取得していたし、料理は多くの人がやっていたから、試しにというのも理由の一つだし、後は好きだからだ。
名前は『ゼクス』である。本名だし、ルシフェリアとイリスもこう呼ぶからだ。そのようにして、限定テスト三ヶ月の中で、一ヶ月と少しが経過した時から、俺は開始となった。二ヶ月目までは作成可能時期だから粘っていた人も多かったし、都合などでギリギリに始めた人もいたようだ。予定として、一ヶ月はみんなでやり、そこで一度、テストは終了だという。という事でワクワクしながら開始した。
セントラルという大陸の、『初心者の街』と、その隣のフィールドしか空いていない。フィールドにはモンスターがいて、それを倒すと経験値がもらえて、レベルが上がる。レベルが上がると、スキルが増える。また、個々のスキルは、スキルレベルで威力が上がる。また、素材が落ちてくるので、それや生産個別技能で採取したりしながら、生産総合の料理などをして、露店に出すという流れだ。約50人いるようだった。募集が50人だったのだが、やっていない人やあんまりログインしない人もいるのである。後は、NPCと運営会社の人もいる。現在は、レベル30でカンストだった。
後はもうやるだけである。少数のあんまりやらない人と、残りの大半のずっとやっている人に別れた。普通廃人は珍しいというが、廃人しかいない。その中でも既にルシフェリアはずっといる人として認知されていたのだが、俺は、ルシフェリアよりもずっといる人になってしまった。アバターのオジサンは、みんなが覚えてくれた。みんな結構理想のイケメンを目指すらしいので、逆にオジサンは目立ったというのもある。開始速度を重視してリアルそのままにした人々でも、オジサンはあまりいなかったのだ。中でも三段腹はゼロと言える。