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 イリスが専属モデルをしているファッション紙の『エターナル』という大学生向け、ヴァイオレット・ムーンが毎月取り上げられるオフィスカジュアル系の二十代前半会社員が読者層の『ブリーチ』と、シルバー世代向けの『エージェント』というリタイア組の娯楽雑誌で、ここはザフィスお祖父様のを要求されたので、装置の進捗とルシフェリアが作る意欲がある話をしたら、そちらに熱中していて「ああ、それはともかく」といったので、良いことにした。

 それから『円珠』という和装雑誌。繋がり不明だが、俺達は僧侶装備を出しているから、良いのかな? そして『ジルヴェリア』という――誰もが知るVR新聞の一面の広告欄全部。吹いた。しかも各地の新聞の折込チラシにもジルヴェリアは存在する。

 これ、いくらしたのかと聞いたら、あちらから頼まれたと言われた。イリスすごい……。イリスは、俺と違ってリアル人気モデルなのだ。最後が、『ヴァーパス』である。こちらは、VRゲーム専門紙の最古参だが、ハードルが高くて、あちらからの取材申し込み以外は載らないらしい。イリス情報だと、猟犬クラウンと、桃花源しか出ないらしい。ここでルシフェリアが呼び戻された。

 ヴァーパスと聞いてルシフェリアが焦っていた。ルシフェリアが焦るレベルのすごい雑誌だからだ。みんなの憧れなのである。俺も昔読んでいた。なお、レクスは帰ってこなかった。で、桃花源の三名のアバターで先に撮影して、ルシフェリアは帰った。

 ルシフェリア銘と鴉羽銘と桃花源銘の武器でそれぞれ撮った。背景が桃花源露店だ。衣装は、紫月×鴉羽クラフトである。

 他は、俺とイリスのリアル顔出し希望だった。俺、出過ぎじゃないかと呟いたら、実は芸能人がかなり起用されていて、明日からCMもガンガンだから、全然問題ないし少ないと思うと言われた。驚いた……。

 芸能人本人がユーザーの場合も沢山あるため、0時から事務所解禁で、公表する人も多いらしい。今のドラマの主役とかも出るらしく、ドラマ内商品のアースタロット・オンライン内販売とかもあるそうだ。想像以上の規模だった。

「もう一種の市場競争だよ」

 ボソッとイリスが言った。そ、そうなんだ……恐ろしい……。しかももう、十万店舗を超えたらしい。企業総計3000社、個人は40000人程度だそうだ……。

 日本人そんなにいないと話したら、老若男女が今やっているとスルッと言われた。VRブームがもう来ているみたいだった。

「そういえば、アンチノワールと黒騎士のサイトには広告サイトはったの?」
「はってない」
「はれよ。僕の所もはって」
「あ、うん。今はる。後、父上に、父上全部とお祖父様全部の頼んだ」
「グッジョブ! ねぇ、なんか宣伝思いつかない?」
「全然だ。今日はイリスと撮ったの以外は、レクスと戦闘動画とって遊んで終わった」
「――え、それ、逆にパーフェクトな宣伝じゃない? 僕も欲しいし、個人的に見たい。コラボオシャレ装備で、武器自前で、アイリス右ボス行かない?」
「良いよ。職割どうする?」
「ゼクス暗殺者、僕聖職者。イメージ的にも。リアアバ」
「う、うん……」

 こうして、装置再セットタイミングでダンジョンに向かった。ここは、2人パーティだと、伝説級のルシフェリア&ハルベルトが5分、義兄弟二名が8分という場所だ。さて、俺とイリス、三分四十二秒。楽勝である。そしたらゼストが来た。暗殺者二名の聖職者一名でやり、一分五十三秒。これは俺達も最高記録である。

 次に、全員聖職者でやった。五分八秒。これでも早い。次、俺ソロ。三分五十六秒。俺すごい。ゼストソロ。四分五十八秒。俺&ゼストで、ゼスト聖職者。三分三十七秒。ゼスト暗殺者で俺聖職者。三分二十七秒。俺達すごい。そしたらルシフェリアが戻ってきた。俺とゼストと三人。一分四十一秒で吹いた。ルシフェリアソロ、四分五十二秒。ゼストが悔しがって再挑戦。四分五十一秒。ルシフェリアは笑っていた。

 そこから俺&ルシフェリア、ゼスト&ルシフェリアで職を変えつつ超sんしたが、最速は二名だと、俺とゼスト。三人は俺暗殺者でゼスト聖職者でルシフェリア僧侶だった。安定している組み合わせだ。その後、二名は帰り、イリスは更新用加工作業に出かけた。なんでも、ルシフェリア・ゼスト・イリスのゲームサイトと桃花源に分散して動画を上げて、それぞれに誘致するらしい。

 俺の所は、バナーあるから良いだろうと言われた。一応、ルシフェリア&イリス&俺も撮影した。ただこれは、超和やかで、イリスがモデル風である。俺も笑顔、ルシフェリアは苦笑だ。

 さて、戻ってから、建築は全部ひと段落したので、庭なども終わったから、倉庫に入れて父上にドーンと送ったら「仕事が期日通りなのはゼクスだけだよ」と感涙された。それで、橘と榎波の話をしたら、そちらも父上とお祖父様グループでリンクを張ってくれるというので、二人に伝えたら、かなり焦ってほぼ同時に飛んでこられた。

 会社規模が違いすぎるから恐縮すぎると言われたが、俺的に逆じゃないかと首をひねったら、複雑な顔をされて、貼り返すからよろしくお願いしますと伝えられた。けど、リアルが入って、父上と橘のバランスが逆転した感がある。不可思議だった。榎波の低姿勢も初めて見た。まぁ良い。二人の言葉を伝え、父上の返事を伝え(感謝)、二人を見送った。

 そこにレクスがラフ牧師と戻ってきて、ラフ牧師の小説の表紙撮影が始まった。驚愕したのは、公式認定のアースタロット・オンライン小説だった部分である。本人は、エンタメ作家だ。ゼストの大先輩である。俺、サインを求めた。

 リアルで郵送してくれるそうだった。涙した。そこから――各職10個の俺コスプレVer表紙をバシバシ撮った。レクスはもう終わっているそうだ。後、ラフ牧師自伝、ゼストの回想録、ゼスペリアの教会の思い出、ハーヴェストクロウ大教会の歴史、ヨゼフ開放まで、とかいう実録エッセイ本のコメントと帯と、なんか写真。アバターで良いだろうに、リアル同期だ。ひどい。

 俺は軽く羞恥プレイだと思っていたら、「あ、これ、七月一日から本屋にも出るから」とか言うからポカンとなった。個人の印刷会社があるそうで、間に合うらしい。限定版のみ俺入りだから、余裕も余裕とか言われた。

 俺は、黒曜宮カフェにもサイン色紙を依頼して、貰った。ゼストにもペンネームの方で貰った。飾った。で、ラフ牧師もゼストも零時に作家側サイトで公表して、その時に自サイトと一緒に俺達の所をリンクしてくれるそうだった。

 そうしたら、俺にラフ牧師の本を読んでるソファVerとゼストのVerで、インフィニティに広告したのと同じセットのバナーをレクスが提案して撮影して、アンチノワールと黒騎士にもはる事になり、二人側もそれ使うという事になった。恥ずかしい……。

 しかも「明日の朝、6:40からの朝のニュースにゼストがブックランキングで出てこれ喋るから」と言われて、「明日の8時から11時は、俺がコメンテーターのニュースでアースタロット・オンライン特集で喋るから」と言われて吹いた。ちょっと、それ、やばくないか? リアルに思った。全国規模だ……。

 そう思っていたら、ヴェスゼストから珍しく連絡が来た。今忙しいだろうが、できたらいつでも良いから近々会いたいというので、今家にいて暇になった所だけど装置生産で手が離せないから、遊びに来てもらえるなら今がいいなと話したら、来てくれた。これにはラフ牧師も唖然で、超低姿勢で挨拶した。

 今現在、知名度だと、一位だろう。ヴェスゼストは、暗殺者が298な以外カンストで、生産も全部270以上、かつ、ゲーム内最大のギルドをアイリスで運営していて、ギルメンが2500人もいるのだ。ヴェスゼストはいつも通りの仏頂面だが、ただの人見知りである。ラフ牧師は、お暇した。

 レクスは、「あ、あの、良かったらキャプションを撮らせていただけませんか」と恐る恐る言った。ヴェスゼストはOKだった。なのでヴェスゼスト装備と俺が呼んでる伝説モデルを一式渡して、俺の猫、俺リア同期で撮影した。お礼を告げて、記念にあげて、それで要件を聞いたら、「リアで撮影して欲しかった……大ファンで、アンチノワールも黒騎士も全商品を持っている……ルージュノワールからずっとだ」と激白されて俺は吹いた。もう一個は、ヴェスゼスト装備を予約相談だった。泣かれた。

 嬉しかったので、アンチノワール×黒騎士の限定版の銀の懐中時計をあげたら、もっと泣かれた。ブログとサイトにリンク貼ってくれるそうで、というか「はってもいいか?」と聞かれて、超感謝してから別れた。

 なんか、ゲームだけでも尊敬してたのに、見る目変わったと言われて吹いた。レクスは終始緊張していた。緊張する要素とか、俺、ゼロだと思う。

「あ、兄上は、本当にす、す、すごいんだな……」

 帰ってからレクスが呟いた。笑っておいた。ゼストよりインパクトがあったみたいだ。ルシフェリアよりもだ。ラフ牧師をも超えたようである。