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 俺は、20店舗とレクスとの共同26店舗で、46店舗を今後やる事に決まった。

 完全俺単独の12店舗は、手付かずである。
 桃花源とイリス関連の8箇所は、昨日までに商品は大体出来ていて、俺が内部の建築スキルでVR内部から施設を納入していた。

 そう、建築スキルがない場合、お店は、経営スキルのデフォルト3パターンからしか選べないのである。

 俺は、ルシフェリアとイリスに頼まれた2パターンと、桃花源単独オリジナルを1パターン作って、二人に五日間で渡した。それでイリスとのコラボ用店舗の7店舗も7つ単独オリジナルだ。そしてこちらは、インテリアを売るので超気合を入れた。とはいえ、床と壁紙と天井からのシャンデリアだとかと窓、扉および、二階への階段と手すりに工夫をしただけで、家具類は後から追加だし、扉の数は増やせる。

 ちなみに、二階は経営スキル50レベル以上の生産建築100レベル以上じゃないと作れないから、おそらくかなりレアである。五日で10店舗パターンを作ったわけである。

 それで、どうしよっかなぁと考えて、アンチノワールはリアル店舗と同じ、黒騎士もVRショップとして大規模VRショップ街に出店しているものと同じにした。

 面倒だからじゃなく「あっ、これこれ!」みたいなのを狙ったのである。

 特にリアル店舗再現は、アパレル参入店は多くとも滅多に無いだろうから、逆にレアだろう。アンチノワール×黒騎士は決まらないので置いておき、アンチノワール商會(黒曜宮との)は、昭和レトロな本屋さんカフェみたいになった。

 暗い色の木の床とか、紙のランプとか、雰囲気がある。黒曜宮商會は、完全に本屋さんなので、古書店をイメージした。イメージは大正だ。これ隣の人困るだろうなと一人で吹いた。逆側のアンチノワールの店舗は、リアル店舗と同じだから、なんかこう、超ハイセンスなザ・若者みたいな感じである。

 アンチノワールは赤と黒、黒騎士は黒と銀と白と灰色みたいなイメージで、なんていうかオシャレな若者高値ブランドがアンチノワール、黒騎士は超高い若者ブランドみたいなので、前者はお金持ち、後者は大学生からリーマンのイケメンに人気だ。

 よくわかんないが、黒騎士はイケメンが持ってるみたいな風潮だそうだ。VR内のイケメンだから素は不明だ。アンチノワールは、人気ブランドの一つとして雑誌に出るので、そこの価格表と購買者データから若者のお金持ちと判明している。

 お金持ちというのは、アンチノワールは服が1着5万円〜15万円くらいなのだが、普通のブランドは、1万円くらいみたいだ。もっと高いブランドは、30万円以上とかなので、手が出る範囲のブランドがアンチノワールという感じみたいだ。だが、全身揃えるとやばい額ではあるようだ。普通全身で1万3000円〜7万円らしい。平均だ。

 今回は、アンチノワール商會に、ハンカチ系とお財布、カバンは飾る。売ってもいるが。それで独立店舗は、服ブースとインテリアブースが分かれている。それで、迷ったが、黒騎士とのお店に、靴・時計・傘・香水を置いた。

 香水は、薬剤の350で、課金で出現したのだ。それで、黒騎士独立限定店舗には、アースタロット・オンライン限定品として、香水がドーンと置いてあるが、薬剤350とか少ないだろうから、何店舗に香水があるか不明だ。

 実際の商品はまだで、置く場所と見本1個の他は、VRでサンプル複製を並べただけであるが。これから作るのだ。こうしてアンチノワールと黒騎士のゲーム限定店舗も作り始めて、アンチノワールは、ゲーム内のギルドホームとかに似合いそうな家具、黒騎士は香水とカバンの見た目変化を黒騎士×アースタロット・オンラインなイメージにした。

 黒騎士の独立店舗側は、VRの他の店と同じで、オリジナルのシルバーアクセとかだ。アンチノワールとの共同店よりもメンズな感じである。アンチノワールは、ジュエリーという感じでユニセックスな部分もあるのだ。男女両方に人気だったりする。

 鴉羽商會Ver黒騎士と、課金限定の鴉羽商會・鴉羽クラフト・黒曜宮クラフトの四店舗は、ちょっと悩んだ。先に、鴉羽商會と鴉羽クラフトを作り、こちらはゲームの無課金露店と見た目を同じにした。

 ガンガン作り、Ver黒騎士は、生産レベル350が必要な各職の靴と手袋に黒騎士デザインというか、黒の騎士マーク(チェスのエクエス)を入れたり、黒騎士マークの薬剤POTを置いたり、なんかこう黒騎士Verにした。課金限定の残り3は迷うとして、とりあえず一区切りとした。

 やばい、9店舗も作って、地味にサンプルを入れてしまった……気づいたら午後の四時過ぎだった。ちょっとずつは用意していたのもあったから、一気にできたとも言える。まだまだ手直しはいるのだが。

 そこから、ハーヴェスト&関連の26店に取り掛かった。とりあえず、武器系1パターン、装備系1パターンを作り、初心者・200〜・250〜・280〜・300以上の5パターンの壁紙を作り、組み合わせで何レベルの何系か判明するようにした。

 それとは別に各10職は、10パターン作った。レクスとゼストと義兄弟二名とルシフェリアの所は、彼らのサイトデザインを閲覧して、それっぽいのを作り、レクス以外には送信して意見を聞いてみたら、逆にクオリティが高くて吹いたと言われた。

 義兄弟はなんか二人で恐縮しました系の返答で対応に困った。貴族系と和服系とゲーム風は、こちらも3パターンではあるが、アースタロット・オンライン風の進化なので、すぐにできた。ハーヴェストは迷ったが、武器と装備を手広くやっている裕福な貴族イメージの、キラキラした洋風のケーキ屋さんみたいなのを作っておいた。

 それで必要かなと思って、黒十字同盟のゲーム内店舗を半接続で視覚のみで見に行き、かっこいい黒いゴシックな家風だったので、それも再現しておいた。レクスとレクスフレは、何が良いか不明だから、赤と黄色で同じ建物を作っておいた。

 理由は、どちらがどちらか不明だが、内部商品が金&赤モティーフと金&黄色モティーフと黒銀だったからである。黒銀は本店があるのだから、と、言う大雑把なチョイスだ。

 ここまでサクサク終わって、七時手前になった。

 新しいコーヒーを入れてタバコを吸っていたらレクスが来た。吸いながらでもOKだと言うので、微笑してから、見本店舗として、グレーアウトが3つだが、それ以外の43店舗と、他メンバーが手入れもしている状態の桃花源1店舗&イリスとの共同7店舗を画面に出した。

「商品、まだ入れるてなくて悪いな。それで、この右下四つがハーヴェストとお前ら用。お前らのは、使わなくても良い。建築スキルで建てられる。なお、変更修正も承る。良かったらだけどな」
「兄上有難う!!!!! うわああああ!!!! 黒十字同盟もだが、俺のサイト風だ」
「あはは。そっちも、どうだろう? 他三ヶ所は、四人とも良いらしいからこれで行く」
「俺もこれで良いというかこれが良い!!! ちなみに赤が俺で、黄色が琉衣洲だ。琉衣洲がフレだ……内部の商品を見たのか?」
「ああ、そうだ。赤と黄色と本店かなと思ってな。良かった」
「兄上、ほんっとうに感謝する!!!!」
「いやいや」
「他の職や、武器店もさすがとしか言えない。プロだ……プロだ。生産の神様だというのもわかるが、プロだ……こんなに格好いい見た目の杖とかあるんだな……しかもレベル350武器……350武器自体が出回っていないのに……かっこいい……」
「あはは。一個しか作ってないけどな。作るの時間かかるから、場合により、七月最初の一週間は、展示にして商品ロックかけるかもしれない。今はまだ検討中なんだ。それで、俺的には、まずは、職以外の武器&装備の店の内容物の検討と、ハーヴェスト本店というか、そこが『ハーヴェスト』でも良いけど、そこの内容物を検討したい。それと、黒十字同盟との共同店の相談。レクスは何したい? 俺のは後回しでも大丈夫だ。ただ、決めるの早い方が、用意できる可能性が増える」
「その二つの検討は今夜やる。俺の方は、黒十字同盟との共同店の件と、後は、俺個人とフレ個人の店の相談だ。質問もいっぱいしたい……」
「分かった。あはは、そうか。俺に分かる範囲なら何でも聞いてくれ。じゃあ共同店から話そうか。どうしような?」
「黒騎士とコラボで装飾具が出したい。ちなみに俺達が好きなシルバーリストがこれだ……兄上自分の店に出してるか?」
「そのリストだと、俺が出品予定なのは、二個だけだ。この指輪と、こっちの指輪だな。ゴツイ系とゴス系は、東京VRシティと首都VRの二箇所でしか黒騎士は出していないんだけど、俺が今回こっちで出すのは、今のVR仮想店街の全箇所にある普通の黒騎士だから、シルバーはシルバーなんだけど、若干シンプル傾向かもな。リストは、こういう感じだ。それでこう、アクセ以外が結構多い。だから、そのシルバーリストは全部良いぞ。俺側で二個を下げる。まだ用意してないし問題ゼロだ」
「あ、兄上、有難う……うわあ、大人かっこいい……が、俺と琉衣洲は、ゴツイ系が好きだ。ちなみに俺達の装飾具レベルだと、150レベル前後まで有効なのが作れるから、初心者から150くらいのまでの汎用かつオシャレな実際に効果ありの装飾具になる。魔術師と死霊術師に特に効果がある。在庫も露店用に大量にあるし、種類も俺が渡した好きなデザインリストの356種類分ある。300種類にしようとしたら決まらず、350種類にしたけど悩み抜いて356種類になった……勿論5種類くらいOK貰えたら良いと思っていたんだ」
「あはは。気に入ってくれたなら嬉しい。じゃあ356種類のデザインデータを送信する。一回ハーヴェストに送る。経営者情報のレクスアカウントで見てくれ。黒騎士のオフィスに行ってくるから待っていてくれ」
「兄上……有難う……」
「いやいや」

 こうして俺は一度席を立った。ゲームですごいと言われるのはなんとなく分かったが、デザインを好きだと言われるのは、すごく新鮮で嬉しい。ネットで評判を見ることはあるが、口頭で言われるというのは、あんまり無いのだ。

 そこから、CCでレクスのデザイン室、宛先はアースタロット・オンラインのハーヴェストと経営者の俺とレクスの各アカに送った。

 自分の分はまだあんまりやってないのだが、それはまぁ秘密だ。俺用はバックアップである。それから戻って、タバコを銜えた。

「確認してもらえるか?」
「ああ……有難う……夜、フレとも確認する。店舗も。適用内容は、俺達で決めていいのか?」
「うん。全部自由で良い。俺も楽しみだ。完成したら見せてくれ」
「分かった! 頑張る! それで――……先に相談なんだが、俺は自分でデザインした武器をやっぱり売ってみたいんだ。単独の。素材も使うかもしれないし、素材を使ってもボロボロかもしれないが、やりたい」
「良いんじゃないのか? 楽しいと思うぞ」
「あ、ああ! 有難う! 後は、低レベルのスキル書に絞る。それでスキル書の装丁をハーヴェストのマークにしたい。マークは今後考えるとして、兄上のデザインが良い」
「分かった。マークも一緒に考えよう」
「有難う。それと、フレなんだが、フレはな、チョコレートやケーキ系料理の中の魔術師特化品とコーヒー、魔法石系の魔術師特化装飾具と、武器の魔道書を置きたいらしいんだ」
「素敵だな。魔術師なのか?」
「暗殺者と魔術師を上げているんだ。俺も暗殺者も上げている。それで、料理は70だから生産スキルがあるのと、VR学の自宅専攻でVR環境を少しやっていたそうで、料理のデザインが多少できると言っていた。あいつの『多少』は、俺から見ると『かなり』だから、問題ないだろう。魔法石系装飾具も50レベル以上だから、品自体は大丈夫なんだが、ここの見た目で、あいつは一つ悩んでる。また、武器は、レベル15だ。職30レベルくらいまでの武器が精一杯だ。この商品構成は、理想らしい。置きたい武器は、ちなみに200レベル以上が使える魔道書だ」
「料理は良さそうだな。一個ずつ聞くと、装飾具の見た目は、どんなものを希望してるんだ?」
「オリジナルでデザインしたいらしい。ただ、料理は、他のデザインと印象が違うし、他のデザインは一つもやった事が無いと言っていた。黒騎士のゴス系はあいつ、ゴツイのは俺の趣味だ。そういうゴスロリ風を多分作りたいんだと思う。ケーキにも合いそうな」
「そうだったのか。へぇ、レクスはゴツイのが好きなのか?」
「まぁな」
「そしたら、フレもさ、作ってちょっとずつ出して行けば良いんじゃないのか? 自宅専攻出来たんなら、社用ので良ければ、VRアクセの学習マニュアル、俺持ってる。素材はついてないけど、素材は指輪は指輪でアースタロット・オンラインの指輪と変わらないし、オリジナル色彩とかなら、今から開始ですぐにできるはずだ。俺が父上に頼まれて、ルージュノワールの新入社員用に作ったやつだけどな。これ。レクスも良かったら」
「兄上有難う!!!!!」

 俺はレクスに送信した。ルージュノワールというのは、亡くなった母上のオリジナルブランドで、経営者が父上の所だ。レクスがキラキラした瞳をしている。

「絶対琉衣洲、壮絶に喜ぶ……」
「それは何よりだ。ちなみに、魔道書か。売るんじゃなく、ロックを掛けて飾る、という手も俺はあると思うけど、悩んでるのは何に関してだ? あくまでも理想か? それともこれから武器レベルを上げるのか?」
「多分、理想だ。武器レベルよりあいつは自分のキャラ職をおそらく上げたいはずだ。こう、スイーツと装飾具と、あとは、雰囲気として魔道書が欲しいという感じだ。だから初級で装丁だけ凝っても構わないみたいで、だが装丁スキルが無い、というのがある。兄上に装丁をお願いしたいという話だったんだが――高レベルの魔道書を飾らせてくれるならば泣いて喜ぶだろうな」
「そうか、なるほどな。じゃあ、装丁を5パターンくらいと、350レベルの魔術師武器の魔道書――15種類存在するから、それは逆にデフォルト装丁の方が目をひく気がするから、デフォルトで飾るか? オリジナル装丁にするなら、それでも良いかもしれないし、その時はデザインする。ちなみに、俺個人でオリジナル装丁は作る。後、魔術師の店には3冊か5冊くらい、あ、種類な、飾ろうかと思ってた。売るかはまだ考えてない」
「頼む兄上、15種類貸してくれ、というか、俺、2種類しか存在を知らなかった……そんなにあるのか、すごいな……」
「2種類って、ハルベルトのブログか?」
「そうだ。各職の武器のページだ」
「あはは。アレな、俺とルシフェリアがハルベルトの誕生日にプレゼントしたんだ」
「え!?!?!?!?!?!?」
「懐かしいな――ええと、」
「待ってくれ、それってつまり、兄上は、ハルベルトの昔のギルマスで、ゼストとルシフェリアがサブマスだったギルドの、つ、つまりゼスペリアの教会のギルマスって事か!?」
「うん、まぁな。昔の話だけどな」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ハルベルト、ブログにそんな事書いてたのか?」
「ああ……尊敬するフレにもらったって……兄上……兄上は、伝説だったという事だ……聞きたくて聞けなかったが、キャラと職3以上カンストか……?」
「まぁな」
「!!!!!!!!!!!!!!」
「歴が長いからな。レクス、相談が取り急ぎ大丈夫なら、ハーヴェストについて決めよう。狩りとかの話は、今じゃなくても大丈夫だが、お店開店は時間が決まっている」
「あ、ああ……びっくりしすぎて言葉が出ない……だめだ、待ってくれ兄上、俺、心臓がやばい……」
「飲み物持ってくる。アイスのローズヒップティとか飲まないか? 美味しいよ」
「飲む……」

 俺は、なんだかこう、いつになく真剣だけど冷や汗状態なレクスに苦笑してから席を立った。