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「俺達はこれからどうする? 俺としては、一週間くらい救助を待って、ここにいたい。もしそれでも来なかったら、その頃には、セントラルの広場も落ち着いていて、移動できるんじゃないかと思う」
「俺は、琉衣洲とフィールドに行って、実際の強さや体感を確認してきたい。兄上には、心配だからここから出ないで大人しくしていて欲しい」
「え!? だってさっき、行かないと……」
「兄上に話してから行くと昨日約束したからな。それに今すぐという事ではない。午後だとか」
「午後!? 変わらない! ダメだ!」
「兄上はここにいてくれ」
「ダメだ! お前らが行くなら俺も行くけど、お前らも行っちゃダメだ! モンスターも危ないけどさっきの話だとフィールドの出入り口はもっと危ないという話だったぞ!」
「俺達は平気だ。兄上は危険だ。よって兄上はここにいてくれ」
「ダメだ! レクスも琉衣洲も行っちゃダメだ!」
「――何故だ?」
「死んだらどうするんだ!?」
「死なない。装備も十分だ」
「そういう問題じゃない! 頼むから!」
「悪いが決めた事だ。止めるならば、ここを出ていく」
「えっ!? じゃ、じゃあその後どうするんだ!?」
「ギルドに合流する」
「……レクス……お願いだ、やめてくれ……」
「では、まずはフィールドの様子だけ見に行かせてくれ」
「……」
「すぐに戻る」
「……どうしても行きたいのか?」
「ああ」
「じゃあ俺も行く。一瞬だけ行って、一瞬で帰って来よう」
「――兄上は来なくていい。心配だ」
「は!?」
「兄上に何かあったら俺は後悔する」
「ふざけるな! 俺のほうが心配してるんだ! 装備を整えてくるから、待ってるんだぞ!」
「――ああ」
あ。俺は倉庫の前で我に返った。行、行くことになってしまった……。英刻院閣下にバレたらボコられそうだ……。だが、まぁ、行ってみよう。一回行ったら、もう行かないかもしれない。さて、装備はカバンにいつものは全部あったのだが、念のため、ダンジョン本気クリア用の、クソ強い武器も持った。靴も悩んで、速度重視がいつもだが、攻撃力もある靴に変えた。よし、頑張ろう……怖いけどな。飲み物も持ち、逆に不要物は倉庫に入れて、俺は戻った。オシャレ装備は、二人に合わせて、ルージュノワールのコートにした。インナーは、私服調で、俺のは貴族セットではなく、リアルコーディネートである。
「行、行こう……!」
「「ああ」」
こうして俺達は外に出て、鍵を閉めた。家は今も俺達以外には見えない。さて広場の方を見ると、俺には昨日と変わらないように見えた。ただし装備だけ、昨日よりも着替えている人が多かった。転送鏡は混雑中なので、俺達はセントラルのフィールド出口へと向かった。芝を突っ切ると、直ぐだったと言うのもある。道に出たら、俺達に視線が集中した。居心地が悪い。ルージュノワールの服で揃えているからだろうか?
「す、すごい視線だな」
「兄上と歩くといつもこうなんだ。リアルの話で、顔の件だ」
「あ、ああ。そうか。装備や素性がなくても、確実にそうだろうなと納得できる」
「だろう?」
「お前ら何言ってるんだよ? そんな事より、PK魔が出たらどうしよう……俺から離れてはダメだからな」
「ああ。兄上、絶対に俺達から離れるな。そうでなければ変質者に、殺された方がマシな目に合わせられるかもしれない」
「え!? ご、拷問とかか?」
「拷問に等しいかもな。一瞬でヤられるだろう」
「へ? 一瞬で殺されるって、殺された方がマシというか殺されてないか?」
「ヤるの意味が……」
「琉衣洲、兄上はこういうタイプだ」
「な、なるほどな。レクスも苦労してきただろう」
「ああ」
「何の話だ? あ、ついた……よ、よし、外に出よう」
「「ああ」」
こうして俺達は、何とか無事にフィールドに出た。フィールドの方が無事では無さそうなのだが。見れば、まばらに人が居る。俺達は、右に進んだ。まずは一番弱い、レベル2のモンスターを1体、視界に入れた。弱いから寄っては来ない。
「よし、やってみる」
「俺も行く」
「え!?」
ついた瞬間レクスが地を蹴った。琉衣洲もいない。モンスターに視線を戻したら、既に倒れて、地面の上で、スっと消えていた。アイテムは、パーティを組んでいるから分かるが、最後に倒した琉衣洲のカバンに入っていた。なんだか……超余裕だった。すごい。
「「……」」
「お前らすごいな」
「――むしろ前よりも動きやすい」
「というか……レクス、武器と装備の性能じゃないか?」
「俺もそう思う……凄すぎて感動した。奥に行こう」
俺は、あげて良かったのか悪かったのか悩みながら、超高速で走り出した二人を追いかけた。泣きそうだ。俺の方が早いんだけど、動揺がやばいのだ。二人は、フィールドの一番奥に行った。俺は愕然とした。50レベルだ……高砂達のより強い……。しかも集団で、3体1組みだ……俺も倒すのだろうか?
「行こう」
「ああ」
だが、俺が聞く前に、二人は消えた。瞬きをしたら、倒し終わっていた。二人共、一体ずつを暗殺者スキルで倒し、真ん中は魔術と死霊術だった。冷静に観察している自分がなとも言えない。見た瞬間に考えてしまうのは癖のようなものだ。そのまま、俺が見ている前で、二人はバッタバッタと倒しまくった。なんだこれ、すごいな。