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 リビングに戻ると、レクスがソファにいた。

「兄上、冷蔵庫の中身と、卓上のコーヒーサーバーの状態を知りたい。それと家倉庫の料理も一品。お腹は減っていない。味が知りたい。食べ物と飲み物の」
「ああ。ちょっと待っててくれ」

 頷いて、俺は冷蔵庫を開けた。俺が入れておいた生産素材(食材)と加工後の料理がいくつか入っている。お腹は減っていないというから、チョコレートセットとアイスティを出した。倉庫からは、ポテトチップス(コンソメ)を出した。それとカップを持ち、ソファに行く。そこで、コーヒーサーバーからは、ホットコーヒーを出した。カップ二個、グラス二個、真ん中にチョコとポテチとなった。

「ポテチが倉庫だ。冷蔵庫が、チョコとお茶。コーヒーサーバーは今の通りだ」
「有難う。兄上も確認してくれ。こちらが、俺が持っていた露店で売っていた炭酸水(美味)と緑茶(普通)とオニギリ(微妙)だ。紙コップと割り箸は、使ってくれ」
「ああ、有難う」

 味の確認、か、と思った。五感がリアルだというから、美味なども美味しいのだろうか。なお、ポテチとオニギリはHP、チョコはMP回復アイテムだ。飲み物は全部、何らかの状態異常解除だが、別に飲んでも害はゲーム内では無かった。かかってなければ効果なしなだけで、摂取はできるのだ。

「……ん? 炭酸水は、ま、まぁ、普通? 緑茶は……俺には緑色の水に思える。オニギリは、悪い無理俺これ。自画自賛だけど、コーヒーは、なんかこう、俺が家で淹れてる豆に匹敵するくらい美味しい。アイスティは、ちょっと高めのカフェで出てくるレベル。チョコ、なにこれ、美味い……駅前のケーキ屋さんのより美味い……ポテチは、うーん、普通だな。美味いけどな。普通に美味い。カルビーみたいな。ちなみに全部、(極上)だ」
「……兄上の評価で正しい。なんだこのチョコ、美味っ! コーヒーとすごい合う!」
「だよな!? ニューヨークチーズケーキ食べないか?」
「食べる」

 こうして俺達は、多分レクスは味の比較をしたかったんだろうに、お茶会に流れた。しばらく二人で、美味い美味いと食べていた。それからレクスが我に返ったようだった。

「ちなみにな、なんでも(普通)であっても、美味いのと不味いのがあるらしいんだ。前々から、同じ普通でも、効果が高いのと低いのはあるらしかったが」
「ああ、それな。料理スキル高ければ(普通)が出るんだけど、個別が高くないと効果下がるんだ。多分それだろうな」
「なるほど……それでな、炭酸水(美味)のみが、俺のギルメンの口に入ってギリギリ許される味だという。緑の水も、喉の渇きは癒えるが。それで、街のNPCショップの飲み物は全部、色付きの水らしい。お湯もあるが。逆にこれは、露店は、不味くて飲めないのが大量らしい。(普通)なのに、だ。つまり、生産者は、個別が低かったんだろう」
「うわぁ……それを買い占めた人は可哀想だな」
「――いいや。そうであっても、喉が乾いて死ぬよりは良いだろう。そういった不味いものですら、既に取り合いになっているそうだ」
「え」
「明日からは、より激化するだろうな。宿の取り合いよりも。宿は数日なら野宿できるからな。さらに露店価格は、もう高騰しているそうだ。聞いていなかったが、兄上の露店はどうしているんだ?」
「ああ、俺、最近占めてて、やってないんだ。ルージュノワールしか。ルージュノワールは、レクスを招待した時に閉めた」
「そうか、幸いだったな。飲み物と食料の備蓄はあるか?」
「まぁな。俺とお前が救助を待つ間くらいは心配ゼロだ。客間二名くらいも大丈夫だ」
「まず、自分が安定してホッとした。兄上有難う」
「いや、良いよ。俺こそ、ベンチできょどる以外の何もできなかったから、なんというか――こっちで俺は頑張る」
「あはは、そうか。しかし、テレビなんてあるんだな。映ったのか?」
「ええとな、ゲームだと、街人数カウントだとか、そういう、広場の情報が流れてたな」
「何? 見てみよう」

 という事でつけてみたら――驚いた。各大陸の各街の人口、死者数・死因、宿の空き状況とNPCショップの販売状況、クラウン・クエストの進捗、各大陸クエストの進捗、フィールド開放状況なんていうものが出たのだ。広場情報どころではない。チャンネルを回しながら、二人でしばらく無言になった。死者がもう350人以上いる。死因は、自殺(ログアウトのため/夢だと思って/鬱で)とPK(事故含む)とフィールドでモンスターに負けて、の、3つである。なんだこれ……。

「見られて良かった……が、テレビの普及率はどうなんだ?」
「分からない。俺は持ってる。俺が関わってる四ヶ所のホームと、フレ二名のギルドにもあげたのがある。レクスにも、一個あげるか? ギルド用。今はクランだろうけどな。メールで送れるなら、一個設置した方が良いだろう?」
「ああ、頼む。できれば、友人とのクランにも置きたいんだが、二個ないか?」
「ある。待っていてくれ」

 こうして一度立ち、倉庫窓口で二個出して、レクスにメールで二個送った。かつ、ふと思い立ち、ゼストとルシフェリアとヴェスゼストとラフ牧師と英刻院閣下にも送った。クランでみんな見られるが、各自のギルドにもあった方が良いと思ったのだ。フレ二名のアルトとクライスにはメールだけしておいた。クラウにも昔あげたはずである。他は、大規模ギルドじゃないから後回しだ。チャットでは、テレビで見られると文字発言しておいた。