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『こんにちは』と言ったら、多くの人に挨拶された。
「いいなぁ。攻略クランにも入って欲しかった」
「それを言うなら、支援&初心者クランも欲しいよね」
「攻略クランがあるのか? 支援&初心者はないのか?」
「攻略はこれから作ろうって話してた所。今、みんなでクラン枠を空けてる。結構3つ使ってる人多いから」
「支援は無いけど、琉衣洲くんがいるから、他のギルドもやってるんだなと思ったのと、桃雪くんを見て、そういうのを見たほうがやりやすい新規さんもいるかなと思ってね。これからアステナを目指す組とか」
「桃雪は、それがあったら嬉しいです」
「……俺も、もしも作るならば入りたいと思う」
「そうだったのか」
俺は頷いてから、ギルチャで聞いてみた。
「なぁ、お前らはどう思う? 俺、入ってみたいけど、枠2個しかないから、ここが使えなくなる」
「――いいんじゃないのか? 入ればいいだろう。こちらは取り急ぎ無くても問題ない。ギルドのメンバー募集の時は、どこかを抜けろ。そして俺も全部に入りたい」
「俺も時東と同じ見解。ギルドでクランに入ってくれない? 生産同盟の露店クラン側にも、ギルドにも申請もらって。名前は相変わらず出したくなくて悪いけど」
「ああ、わかった」
今度はこちらに頷いてから、俺はグルチャに戻った。
「あのな、ギルメンと話したんだけど、露店グルにアンチノワールも入れてくれ。良かったら攻略も。それで、支援&初心者にもギルドで入れて欲しいから、作ったら申請してくれないか?」
「露店申請した。ありがとう、逆に。他のギルメン生産者の皆さんにもよろしくお願いします、橘です。あっちでも言っておく。わー!」
「――攻略が即効まとまって今できたから申請した。青薔薇騎士団」
「有難う。入った」
「アルト、私も入れてくれ」
「榎波も攻略来るの?」
「いや、アンチノワールの武力に興味があるから見に行きたい」
「だろうと思った。俺も同じ気持ちだから」
「ああ、楽しみだ」
「待ってくれ、攻略するとは言ってないからな」
「ゼクス、こっちもできたから申請したよ」
「ありがとう、クライス。じゃあここ閉じないと入れないから閉じようと思う。今日は来てくれて有難うございました。これからよろしくな」
「「「「「「こちらこそ!」」」」」
こうして、俺のクランは1つが閉じたが、3つになった。元々、桃花源とゼスペリアの教会はあったので、これで、5つ、フルに埋まったという事である。とりあえずそれぞれに『よろしくお願いします!』と挨拶して、『ちょっと休むのでまた後で』と伝えた。それから、ソファに背をあずけた。
「ふぅ。なんだかひと段落した。コミュニケーションって大変だな」
「ぶはっ、楽しそうだったぞ?」
「そうか? 楽しいけど、どこ見て話していいかわからない。俺、ギルチャすら不動の男だったんだぞ? 一気にこんなに大量に窓口開いたら、視線の向け方すらわかんない」
「「ぶは」」
「ギルチャすら不動……ゼクスっていちいち狙ってくるよね」
「ああっ、吹いた」
「お前らはコミュ障じゃないから俺の気持ちがきっと分からないんだ……いいや、俺はコミュ力は、なくはないんだ。ないのは、ぼっち脱出力なんだ。ゲーム内ではアウトドアだから一人でどこにでも行けるし、ひきこもりでもない。だけど『一人』、そう、これ! 気づくと俺、一人で熱中してるんだ。けど逆にこんなにいっぱい窓口が増えても困ると気づいた。今までは、ミュートにしなくてもほぼ無音だったけど、今はミュートにしないと声がするし、かといってミュートを解除しても話すタイミングがつかめなくてラジオみたいになっている……これ、どうすればいいんだ?」
「深刻に言われたのに吹きそうになった。うん、ラジオにしておいて、気が向いたらぼそっと言うだけで良いんだよ。挨拶すると、雑談にもなる。ぼそっといってから挨拶でもいいし、いつ聴いてるかわからない宣言をしておくのもいいし、適当適当」
「高砂の言う通りだ。なんとかなる」
「なんなかったら、フォローいれてくれよ……」
「「ぶは」」
俺は結構真面目に言ったのだが、二人は笑っていた。
「ちなみにこれからゼクスはどうするの? 桃雪匂宮さんの支援? アルト側で攻略?」
「桃雪とはアステナまで行くかもしれないけど、支援ってほどでもないだろうな。二・三日お散歩? 攻略は行く気ゼロだけど、強いボス出たら俺も見に行きたいとは思った。わくわく感がなんか出てきた」
「――しかしまぁすげぇメンツだし、ゼクスのすごさも再理解だな。まず、副。あれに様付されるレベルか。ヨゼフの梟だとか、古参も上級者も一線を置く上、本人は初心者から超上級連中まで顔が利く。それこそゼストやルシフェリアクラスの超上級を通り越した伝説の神クラスじゃなければ、ああはならない」
「まぁね。今、サブマスのはず。俺とは時期が掠った程度だけど、鴉羽卿から何度か聞いた。他もすごかったよね。生産同盟の橘なんて、副は戦闘&交流系の情報屋だけど、あちらは生産&交流系だから、近寄りがたくはないけど、神様クラスでも一目置くでしょ。橘自身も高レベル相手でも、本人が強いのもあるけど生産の強みがあるから対等だと評判で生産的な神様にしか下手に出ないけど、出てたし。普段から礼儀正しく優しいそうだけど、今回のは違った」
「全くだ。イリスと話しているのを見かけたことがあるが、イリスでさえ対等扱いだったからな。ルシフェリアと話すとしたら、お客様扱いだろう。桃花源のルシフェリアですら、だ。あとはまぁ、天球儀のクライス――を、過去に手伝ってあげた低レベルプレイヤーの一人的な認識だったのが吹いた。英刻院閣下を親しいお客様だったし今も仲良し、というのも驚愕したとはいえ」
「それ、本当に思った。クライス様ってレベルと実力で言うなら、俺と時東より上だからね。ギルド運営も影響力も。ラフ牧師と並ぶレベルだ」
「だよな。俺は名前見た瞬間に退出考えた」
「俺も俺も」
「まぁそれを言うなら、榎波もやばいかもな。存在感は橘同等とはいえ、開始時期と実力知名度は、俺と高砂と一番良い勝負だ。戦闘技能的にもな」
「俺は榎波の戦いを見てみたいんだけど、その榎波に見たいと言われるゼクスが怖い」
「それ、本当にそれだ。榎波が武器を欲する理由を一瞬で見抜く流石さも含めて」
「あれは俺が榎波だったら心臓がやばかったと思うよ」
「だよな。あいつが五複とか、あの職上げてるとか、誰も知らなかっただろうしな」
「言わない方が良かったか?」
「いやいいと思うよ別に」
「おう、気にするな――あとは、そうだな、英刻院琉衣洲。俺がギルドを抜ける前の情報で、ユレイズにいる、ギルマスがあちら、こちらの拠点でのギルマス代行と聞いたな。英刻院閣下の金十字から独立して、ハーヴェストのギルマスと二人で立ち上げて、立ち上げ先がユレイズ攻略だ。金十字は攻略組じゃないというのもあるし、仲も悪くないというか、英刻院閣下に逆らえる人間は少ないだろうが畏怖じゃなく尊敬側という事だな。金十字と琉衣洲が支援しちゃう性格だから攻略の検討に来たのに流れで手伝ってしまい今に至る系だろうなと俺は思う。攻略クランに入るのかさえ不明だ。良いやつだぞ、少ししか知らないが。まぁユレイズ開始若手なら、榎波は別格として、ハーヴェストの琉衣洲って言えば誰でも知ってるレベルで今は上位だ。超上級ではないが、十分上級だ」
「ふぅん。いい子ならいいんじゃない。人がいい人は嫌いじゃない」
「新規だという当選匂宮の初心者は不明だが、俺ははっきりしてて嫌いじゃない」
「同感。俺もあそこで、ギルド情報見てきたとか言う人好きだ。後は、青薔薇騎士団のギルマスか。アルトだっけ? あれは? 時東は知ってる?」
「確証は無いが、ゼスペリアの青を保持しているアルトいうプレイヤーをヴェスゼストがゼストのギルドから引き抜いた時、ゼストとヴェスゼストが大喧嘩、さらにヴェスゼストとアルトも大喧嘩してアルトはそちらも抜けた、という話を聞いた事がある。喧嘩理由は知らないし、同名なだけかもしれん」
「それが事実なら時期と本人の実力は問わず凄い存在だね。ゼスペリアの青で、ゼストのギルド経験者で、しかもヴェスゼストが引き抜くとか。かつヴェスゼストと喧嘩しても無事とかさ」
「その通りだな」
頷きあっている二人を見ながら、俺は腕を組んだ。俺は、「言わない方が良かったか」しか言っていないのに、二人はいっぱい話している。どうして俺は言葉が出てこないのか。うーん。しかし、黙っていたのに、二人は沢山観察していたというのがよくわかる。俺はこうなんか、普通の人の集まりかなと思っていたけど、違うのだろう。
「ゼクスはどうするつもり?」
「うん。これからは、お前らと同じ数くらいセリフを述べられるように頑張る所から始める」
「「ぶは」」
「どうやったらそんなに沢山話せるんだ? しかも俺なんて直接話してたのにお前達のように観察スキルないから、何一つ考えずに聞いていたけど、みんななんかすごい人だったんだろ? ギルチャで教えてくれれば良いのに……」
「あはは。ごめん、その方向で返しが来るのは、予想外とまでは行かないけど吹いた」
「まぁ、徐々にコミュ力高めろよ。付き合うから」
「うう……」
「ちなみにね、『どうする?』っていうのは、付き合い。あんまり密に支援すると、背後とも関わりが生まれたり、こちらが関係先扱いされるって事」
「関係が生まれた経験ほとんどないんだけど、それは何か良い事や悪い事があるのか?」
「例えば、ゼストとヴェスゼストがアルトの件で揉めたとすると、ゼストのギルドは以後、ヴェスゼストの方にアルトが行ったらアルトは敵。さらにヴェスゼストと喧嘩となれば、アイリス最大のギルドも敵で、アルトを擁護するというのは、この二名関連勢力全部を敵に回すに等しい。本人二名も敵に回す可能性まである。その場合、アルトの支援者および支援ギルドは、ゼストの力が強いヨゼフ・アイゼンバルド、ヴェスゼストが強いアイリスでは、もう呼吸するのも辛いレベルで、格安POTすら買えないかもしれないし、歩けばPKされる可能性もある――あくまでも例だからね。事実やゼストの性格とか抜いて」
「それで先程、支配独占系という言葉が出たのを考えると、今回の攻略連携者の特にソロと固定パーティの高レベルは、他で何かをやらかして逃げてきた連中もかなりいるだろうなという感想だ。悪いのがどちらかも不明」
「んー、俺はぼっちだから呼吸するの辛いレベルでこれまで誰も周囲にいなかったしPOTは全部自作で、ゼストやヴェスゼスト込みで敵に回して怖い奴とかゼロだけど、やらかして逃げてきたという事は、単純に他が合わなかったのか、それともコミュ障の俺には強すぎる個性なのかを見極めて付き合わなければならないだろうな」
「ぶはっ、つ、強すぎる個性……」
「いやまぁうん、そりゃそうだよ。俺だってやらかして逃げてきたも同然だから、何も言えないけど、ちょっと待って吹いた」
「だって他に表現が……」
「いや寧ろ斬新だから」
「全くだ。まぁ、俺もPOTは自作余裕だし、このギルドにいる限り、俺と高砂は別段購入面は困らない。PKに関しても、露骨にやってくるようなのは、返り打てる」
「うん、俺も大丈夫。敵も、今もう敵しかいないも同然だから、どこ封鎖されても良いというかもう封鎖されてる」
「ぶはっ、高砂、お前なにしたんだよ。まぁ、俺は封鎖はされてないが、元々受け入れられて無いようなもんだからな。しいていうなら、だいぶ昔にやらかしたに入るんだろうな。イリスとミナスと揉めてるから、直で」
「実を言うと、俺、クラウと揉めてる。ラフ牧師とは、揉めてはいないけど、多分ゼクスにさっきメールしてもらわなかったら、今頃もめてた。副が来たの完全にそれだと思う。ラフ牧師から聞いて偵察。元々俺の目撃情報でここにはいたと思うけど。ゼクスはその二名およびイリスとミナスが、俺達以前からの貴重な九名のフレか何かだと思うんだけど、そこも敵に回してくれると信じてるんだけど大丈夫?」
「ん? ミナスはフレじゃないな。フレに機会があったらなってもらおうかなと思う。それは兎も角、そのミナスもイリスもラフ牧師もクラウも、俺が知る限り、常に誰かと揉めてるから大丈夫だろ。例えば、イリスとルシフェリアなんて殺し合うのかと度々思ったけど、俺と三人で桃花源だし。俺そう言うのスルーだから、イリスが俺にボロクソルシフェリアについて語ってルシフェリアもそれを知ってても特に何事もないぞ。みんなそういう感じだ。ラフ牧師とか、俺に、クラウの前で、クラウの悪口を三時間喋り続けた事もあるけど、別に俺とクラウも仲悪くないし」
「「ぶは」」
「敵に回すわけじゃないけど、別に普通だぞ? 彼らのいずれかが俺の敵に回るとしたら、俺はほら、目の前のモンスターは殲滅してレベルを上げていくタイプだから対処するかもしれないけど」
「殲滅」
「ぶはっ」
「かといってお前らの肩を持つとかもないけど、倉庫はあるし、誰かに何かを言われたら倉庫の鍵を固くするとかも、ギルメンに関してサブマスと相談しとかならともかく、あんまりなくないか? クラウに『高砂に倉庫使わせるな』と言われても『俺のギルドだけどなんで?』みたいなさ。他もイリスに『時東をギルドから追い出せ』と言われたとして『じゃあお前はギルドを解散しろ』って言って良いのかという話だしな。かつ、奴ら、そういう事を俺に言うタイプじゃない。他の人には言うかもしれないけど、俺には言わない」
「すごく心強いよ」
「全くだ。ちなみに揉めたの知ってたか?」
「んー、時東がイリスの運命のライバルであり、ミナスの運命のライバルである、というのは、イリスとミナスから聞いたことがあったけど、揉めたっていう風には聞いたことないな。高砂が揉めたのも聞いたこと無い。あのさ、俺ずっと聞きたかったんだけど、俺はお前らにさ、『何かあったのか?』とか『大丈夫か?』とか『良かったら聞くぞ』とか言ったほうが良い? それとも『何があったのか詳細に話してくれ』が良い? 聞かない方が良い? 俺、空気読めないから、話す場合自分から一歩的にガッツリ話してくれ。聞いたほうが良いのか聞かないほうが良いのか不明な場合、基本俺余程興味ないと聞かないから。かつ、俺が興味あるの、生産とかスキルとかだ……愚痴を聞くのは得意だけど相談に乗るのは不得意タイプだと思っている。話すと楽になりそうなら俺に話、そうでもない場合は、もっと信用できる相手に相談した方が良い」
「運命のライバル、ぶは、あー、じゃあその内気が向いたら愚痴る」
「うん、俺もそうする。特に相談する事は無いよ。けど、ラフ牧師を真面目に敵に回せるというかスルーできると知って死ぬ程今ヒヤッとしてる」
「それはある。俺も言えるノリだったから伝えたが、内心ガクブルだった」
「お前らって実は小心者なのか?」
「「ぶは」」
「俺の数少ない人生経験的に、あーいう奴らにはガツンと強気で行っても問題ない。キレてもその内勝手に収まってるから放置で良いんだ」
「「ぶは」」
「それよりお前ら、スキルどうなったんだ?」
俺が聞くと、時東が階段を降りてきた。高砂も部屋から出たようで、上で扉の音がした。俺が灰皿を差し出すと、時東が火をつけ、すぐに高砂も合流した。
「俺はね、身につけたスキルを一通りチェックして終わった。今後はこの中の欲しいの全部カンストさせてから、鴉羽調整しつつ、後回しに決めたやつと他の職とかスキルをこれまで通りって感じ。調整したい欲求以外停滞してたから、久しぶりにやる気出た」
「そうか。良かった」
「俺も鴉羽がロードクロサイト色相という点以外は同じだ。ただ、後回しにしたものプラス生産になる。他の職とスキルは、今上げてないのと同じで、要不要検討中だ」
「なるほど」
「全部上げなかったら怒るとかある?」
「ぶは。あるわけないだろ。そんなの自由だ」
「良かった。ギルド基準で全部とか言われたら俺は死ぬ」
「あはは。じゃあさ、とりあえず、二人が被ってるのを一気に上げるか? 属性相性良い所で。それとも、パーティ組んだ方が上がりやすいのを別個で各職で上げるか? あ、でも、俺は暇で起きてるからまだずっといるけど、寝る?」
「俺は起きてるよ」
「俺も起きてる。ちなみに、効率良いのはどちらだ?」
「クリアしてなくても、高砂もアイリスは入れるんだよな?」
「うん」
「そしたら、右の地下廃棄都市遺跡に三人で行って、複合5個目と5段階で被ってるの全部一気に上げて、その後戻ってその街に入る所のダンジョン三階のボスをパーティ連戦で各職個別の複合4と4段階、特別スキルの被ってるのを上げると、俺の中では最速で強いのが手に入る気はする。何個被ってる? 逆に被ってなければ勿体無いから被らせたらどうだろう?」
「ある奴は全部身につけたし、欲しかったから全部上げたい。特に特別と四個目以上っていうのが、上げられるなら大至急。四段階以上も」
「俺も高砂と同じだ――ただ、あのダンジョンのボス自体が連戦できるなんて聞いたことがない。数時間かけて大人数でギリ倒して街到着というイメージなんだが、間違ってたって事で良いのか?」
「時東、俺もそう言うイメージしかないよ。三人パーティとか自殺願望を疑った。俺、一階で引き返したから、まず、攻略さえできてない。かつ地下遺跡に至っては、比較的最近、ルシフェリア&義兄弟の三人パーティが攻略失敗で全滅して諦めたって聞いたんだけど」
「それ俺も聞いた。あの三名がデスルとか何かと思ったら遺跡だったって話だろ。ゼクスがルシフェリアより強いとして、俺と高砂は完全に義兄弟より弱いが行けるのか?」
「俺はよくソロしてるから大丈夫。かつ、その三名は、俺と同じで暗殺者だけど、俺と違ってさしてソロ仕様じゃない。それだけだ。じゃあダンジョンを攻略して、ボスを一回倒して、到達イベントをして、今後も遊びに行きやすいように、街にギルド別荘を設置してから、地下でゴリゴリ上げよう。ダンジョンの方が弱いから、お前らから見て無理そうならそこで止めて良いし、不安だろうから、行きは俺がヤるから、お前ら装備系を倉庫で良い――というので、どうだろう?」
「お願いします」
「おう、頼む」
「うん。じゃあ、今、ダンジョン前直通ワープ送ったから、アイリスに集合で」
このようにして俺達は、一度ログアウトしてから、アイリスにログインした。現在は、夜の十時半だ。まだ寝ないと言われるとは思ったが、俺多分明日の朝十時くらいまで起きてるけどとは言えなかった……様子を見よう。みんな来たので、パーティーを申請した。なんだか楽しみである。そのまま、さっき送ったワープでダンジョン前に出た。鬱蒼とした森の中の塔である。だが、地下に進むのだ。
「倒しながら行くか? イベントクリア目的だから、とりあえず転移スキルで、カットして、三階まで入口階段のみで良いかなと思うけど」
「そうする」
「うん」
こうして、普通にやったらモンスター退治より移動に時間がかかる場所を10分くらいで通過して、ボスがいる部屋の扉の前に立った。俺は、首の口布を引き上げて、手袋を両手にはめた。戦闘装備である。二人がちょっと緊張した顔をした。まぁボス前だしな。