【6】決別


 それから長らくアルト猊下は目を覚まさなかった。
 ――そして、目を覚まして、中絶の知らせを聞いた。

 以降、クライスとも決別し、一度も会うことはなく宗教院へと戻った。

 だがそちらでも法王猊下とは必要最低限の会話しかしなくなった。
 舞洲と、残っている一番下の弟がため息をつく毎日となった。

 十九世猊下の誕生が望まれていたこともあるのだが、人が変わったようになり、アルト猊下は沢山の相手と、言われた通りに関係を持った。が、生む側ではないし、婚姻にだけは同意しなかった。

 結果として、偶然にも全く同じ日の同じ時間に、戸籍上の長男と次男が生まれ、どちらを十九世とすべきなのか判断が割れていたら、すぐに三人目も生まれた。

 その後、四男と五男も数年後に生まれたが、アルト猊下は誰を後継者に指名することもなければ、いずれかの父親と結婚することもない。

 むしろ華族に嫁いで暗殺された弟の子供を可愛がっていた。甥である。華族敷地に二人いた甥の内――弟の方が、ゼスペリアの青を、複合色相ではあるが強く持っていたので、宗教院が引き取ったのだ。その子を一番可愛がっているのである。

 さらにその後、三男が産んですぐに亡くなったというのもあるのだろうが、最後の甥っ子についても溺愛していた。

 法王猊下の上から二番目の孫と一番下の孫を可愛がっているという形であるが、法王猊下は第二配偶者と第三配偶者の血を引くこの二名をあまり可愛がってはいない。

 この点で見るならば、法王猊下とアルト猊下は、愛する相手以外の子供を自分の血縁者と見做さないらしい部分はよく似ていた。