【5】黙示録の十二使徒


「で、榛名達三人は、自分達が持っていた箱に右手五本にはめる指輪が入ってて、お前らなんでも第九・七・十で榛名・副・若狭らしいから、政治・外交・医者でなんか合ってるし、その黙示録の使徒になりきってくれ」
「「「は!?」」」
「頼む、お願い!」

 逆にお願いしてもらいたい人物は死ぬほど多かった。なにせ平和な世界が訪れた場合は、未来の宰相・副宰相・御典医筆頭となる役職であり、失敗時も偽ゼスペリア側で悪の宰相・副宰相・医療従事者筆頭となれるらしい人々だからである。だが、その黙示録には指輪の話など出てこない。と、思っていたらゼクスが説明した。

「ちなみにその指輪は、華族文明滅亡時から、宰相とか首相とかの政府筆頭者と国王および配偶者を政治面・外交面・医療面で補佐する役職の人がつけていて、榛名の指輪に関しては最後の持ち主は完全にお前の実の祖先で、匂宮榛名家の当主だった。副のは英刻院の人で、これ副も生体血統鑑定だと英刻院家の人だし良いだろう、それで政宗のは政宗家じゃなくて、旧世界のエイネルシア侯爵家当主がつけていたんだけど、これもお前の祖先だから、お前には貴族と華族の血が流れているようだ。ちなみにエイネルシアは後のタイムクロックイーストヘブン家に結婚併合されたから、遡れば時東の親戚となる」
「「「……」」」
「それで、琉衣洲、悪いんだけど、今から伴侶補兼宰相代理になってくれ。使徒オーウェン礼拝堂内部のみでゼスペリア教会筆頭牧師に任命権がある。英刻院閣下が目を覚ましたら、判断は仰いでくれ」
「あ、ああ……」
「で、朝仁様は悪いんだけど、伴侶補兼王妃代理で静仁様のような存在になりきってくれ。お願いします」
「は、はい……」
「青殿下は未来の国王陛下一直線の皇太子様であると同時に使徒オーウェンじゃなくて、むしろ俺が使徒だから、的な、俺様でいてください」
「ど、努力を……」
「うん。じゃあ三人とも箱に入ってる外套を羽織ってくれ。それぞれが、宰相・王妃・国王への贈り物、次に使いやすい位置に、使徒オーウェンの花時計という聖遺物をつけてくれ。銀色なのに緑に光るエメラルドの葉っぱ付きで、ピンクのお花の模様のやつだ。それから使徒オーウェンの持っていたものそっくりだけど俺が復古した花王院総代数珠に美晴宮勾玉と英刻院完全黄金糸がついた、今回の黙示録バージョンの念珠も好きな場所につけてくれ。高砂に配布してもらったのとその数珠は俺からのもので聖遺物じゃない。かつこの美晴宮の虹枠で完全黄金でラインが横たて2本左右に入っていて、ギンガムチェックでゼガリア白金銀と花王院王家王冠が書いてあるやつも、俺から。しいていうなら使徒青殿下の十字架とか、そんな感じで適当に名づけてくれ。終わったら青殿下は王冠をかぶり、杖を持って、椅子を祭壇側に向けて座ってくれ。朝仁様はティアラ的なのを頭、銀の腕時計を逆の手首、それから杖をもって、さらに美晴宮家の紫のひざ掛け、それは天照大御神の遺物で、それを膝に乗せて、青殿下の横で椅子を逆にして座ってくれ。最後に琉衣洲には、なんだか十二使徒全員が、英刻院家最新直系あるいはいなければ当代宰相をとにかく黙示録時点で最重要保護指定者ゼスペリアの器レベルと知らしめ、黙示録の結末がどうなろうとも後始末はおそらく英刻院家の人間が頑張ることになるため全力で応援すると言って残した使徒全員の聖遺物の十字架、全部、第一使徒ランバルトの完全黄金への信頼とか第二使徒ヴェスゼストの完全黄金への信頼とかいう名前で使徒番号と使徒名称が違うだけだから、とにかくそれを全部身につけてくれた。ちゃんと長さが分かれているようだ」
「……後始末?」
「ほら、敵攻撃で国内が混乱したりしたら政治的におさめたり食料を配布してくださいってこと、かもなぁと思うし、榛名達三人が全力でそれを手伝うから大丈夫だそうだ。ぎゃくにあんまり無理せず、特に第九使徒の榛名にガンガン仕事を投げ渡し、ひたすら頑張ってくださいという夢を見た」
「……」
「ああ。あと、箱の最後の杖は、英刻院家当主の杖だ。英刻院閣下が、怪我をする三日前に俺の所に来て、なぜなのかヴェスゼストの赦祝と黙示録を読んでくれという初めての依頼をし、俺が読んだ後、もし今後自分に何かあったら、琉衣洲にこれを渡して第二十二代当主として、可能であれば使徒ゼスト・ルシフェリア・イリスの特別の三種類と黒色ローブの最新版だけ渡してどうにか助けてやってくれと言って帰って行かれたんだ。最下層にいる俺が渡せるわけがないという暇もないほど神速でお帰りになられてな……結果的に他も全部儀式をするから渡す形になってしまって申し訳ない。それとこう英刻院閣下は遺品風に言っていたけど、俺はすぐ治ると思ってる。だから、とりあえず持つだけ、な」
「――ああ。全力でゼスペリア十九世に武器を作らせ続けるのを依頼するのは俺の仕事で、そのための書類作成なのだろうから、いくらでも付き合う。ゼスペリアの医師の横で依頼書をゼスペリアの聖剣と相談しながら淡々と書き続けるから!」
「そんな決意はいらないからな! 次にこれが、使徒ランバルトの茜というカフスで、ランバルト・アメジストの防衛形態っていうすごくこれも珍しい聖遺物で、こっちは気象・災害・毒・完全ロステク兵器系統から全防御してくれるバリアが周囲に展開されるんだ。俺が猟犬の首飾りのモデルにしたりしたものもある。多分、どの宗教とか合わせても防衛兵器でいうなら一二を争うんだ。まさにゼスペリアの聖剣が武器ならば、こちらは盾であり、ゼスペリアの盾というか壁みたいなものだ。最後が使徒ヴェスゼストからの願いの十字架というこのヴェスゼスト紅玉のシンプルで小さいけど、最有事の場合、ゼスペリア十九世が許可を出したら、全ゼスペリア教聖職者を全員琉衣洲配下の政治家に置換して、全員で宗教院じゃなく貴族院・華族院・実務院・法務院・軍法院・特別三機関のことなんだろうけど万象院から広がった最高の学術機関・技能機関・医療関係機関を維持し、文明の復旧や修繕を行う事を可能にする、という、もう武力とか関係なしに全員で国の維持をし、かつ琉衣洲に従いますという絶対命令書であるようだ。逆らうとゼスペリア教追放じゃなくて、頭部破裂で死亡みたいで、さらに洗礼を一回でも受けた人間には、法律を守って正しく行動しないとぶち殺すぞというヴェスゼストの悪夢が襲いかかると古文書に書いてあったけど、それは翻訳して箱のそこに入っているから後で読んでくれ」
「……ゼスペリアの壁はありがたいし、ヴェスゼストの配慮も途中までは完璧だったが、後半が絶対王政だった……」
「ま、まぁ、琉衣洲が優しい指示の出し方をすればいいし、そういう事態が起きないようにしておけば大丈夫だろう。うん、よし、とりあえず、これで準備はそろった。ええと、後、この箱を――なぁ、高砂、猟犬だけにアイテム配布とかってできるのか?」
「できるというか、ここにいる人間は今、全員猟犬の配下だよ」
「あ、じゃあ全員にこっちの木箱の英刻院閣下受注物も配布してくれ。両方の箱の残りは、俺からのゼスペリア教会筆頭牧師による御礼の十字架は青殿下に、英刻院閣下の依頼物はとりあえず誰でも良いから猟犬が増えたら配布を頼む。祝詞が終わってからそっちのふた箱はしまってくれ。悪いけど他の箱は適当に亜空間の物置にでも入れておいてくれ。俺、倉庫に空きがない……」
「わかった」
「ありがとう! じゃあ今から、世間ではゼスペリア猊下しか読んではならないとされてきたけど実はゼスペリア教会筆頭牧師も読んでよかったけどなんか法律的に現時点ではゼスペリア猊下だったゼクス=ゼスペリア、ゼスペリア教会筆頭牧師による祝詞を始めます。アイテムを俺が配って位置を言った人以外は、うるさかったら遮断し、眺めたかったら眺めてください――後、各自、さっき俺が言った存在になりきってくれ。あ、レクスとユクスは琉衣洲と朝仁様の横の一歩後ろに立っててくれ」