【4】躾られる悪役……。(★)



眠い。体が泥のように重い。
俺が目を覚ましたのは、放課後を告げるチャイムがなったときだった。
丸一日サボってしまった。こんなのは人生初の体験である。
だが、だがーー……思い出して俺は飛び起きた。
もっと重要な初体験をしてしまった……。
痛む腰を抑えながら起き上がり、俺は俯く。なんということだ……。

「ようやく起きたのか?」

するとカーテンが開いた。見ればそこには、膝を組んでコーヒーを飲んでいるスピア様がいた。その姿を視界に入れただけで硬直した俺からは、声が出てこない。

「朝の続きをするぞ」
「お断りだ! よくも俺の前に顔を出せたものだな!」
「俺と常にともにいるように命じたはずだけどな?」
「っ、あ、そ、それは……」

困惑していると、カップを置いたスピア様が歩み寄ってきた。
そしてギシリと寝台に手をつく。その近い距離にどきりとした。
端正な顔立ちが、俺の真正面にある。まっすぐに覗き込まれると、すぐに頬が熱くなってきた。

「なんだ、そんな風に色っぽい顔もできるのか」
「は?」

恥ずかしさと怒り(?)がないまぜになり声を上げた瞬間、首筋を強く吸われた。

「ひゃ」
「痕。色白だから綺麗につくな」
「な、な、なんで」
「俺の嫁だっていう印だ」

馬鹿にするようにそう言って笑ったスピア様に、そのまま俺は押し倒された。
見上げる形となり、必死に胸板を押し返す。
俺は別段実技の成績は悪くない。だが、ここは魔術学園。肉体的な研鑽は最低限しかない。一方のスピア様は剣技だって学んでいる。力では太刀打ちできない。
だがそういうことではなくて、スピア様は良い香りがした。
スッキリとした甘い匂いだ。その上大好きなかんばせが俺に迫っているのだ。
クラクラしてきて、ただただ恥ずかしさだけが次第に浮き彫りになって行く。
俺の両手首を掴み寝台に縫い付けたまま、しばらくスピア様はこちらを見ていた。

「うあ、ひっ」

それから、耳の下をなめられて、俺は声を上げた。
体が硬直した時、耳朶を噛まれ、それから中へと舌が入ってくる。
ぴちゃぴちゃと水音が響いてきて、全身の意識がそこだけに集中した。
抵抗しようにも、手首を掴まれて動けないでいるうちに、徐々に思考がグラグラし出して、体の力が抜け始める。気持ち、いい。
それから首筋に沿って舐められた。

「どうして欲しい?」
「は、離せ! 離れろ!」
「違うな。よく考えろ、お貴族様。君主にはなんていうんだ?」
「お、恐れ多くも不埒な行為に及ぶのはおやめください!」
「不正解だ。もっとして欲しいって素直に言えよ。第一、もうこんなになってるぞ」

その言葉に気がつけば、俺の陰茎は立ち上がっていた。
ただ耳を嬲られただけなのに。

「感じやすいんだな」
「そんなことない! 普通だ!」
「普通の人間は耳を舐められただけでこうなるのか。知らなかったよ」
「あ、ああっ」

布越しに反応していた陰茎を撫でられて、俺の背がしなった。
すると体重をかけられ、身動きを封じられた。

「もう先をこんなに濡らしてる」
「っ」
「布越しでもわかるぞ」

こんな快楽に免疫などない俺の体は、確かにもう張り詰め、先走りの液をこぼし始めていた。その事実への羞恥と上げてしまいそうな声を、きつくはを噛んでごまかす。その時服を取り去られて、太ももを持ち上げられる。

「ひっ、あ、あ、だめだ、汚っ」

その時スピア様が、俺の後孔をほぐすように舐め始めた。
言い知れない感覚に目を見開く。襞に沿って舐められてから、中へと入ってくる。
思わず俺は両手で唇を覆い、キツく目を閉じる。
スピア様の陰茎に貫かれたのはその直後のことだった。

「ああ……うああ……あ、あ、あ」
「キツイ。もう少し緩めろよ」
「ひ、あ、ああっ、ぬ、抜いて」
「何をだ?」
「え?」
「お前の中には何が入ってるんだ?」

思わずスピア様を見ると、実に楽しそうに笑っていた。
そのまま動きが止まる。すると繋がっている部分から熱が全身に広がり始め、もどかしくなってきて俺は震えた。気づくと小刻みに俺の体は震え始め、ついには腰が自然と動きそうになった。

「言えよ」
「冗談じゃなーーーーあっ、あ、ああああ!」

スピア様を睨みつけた瞬間、激しく腰を揺さぶられた。
その刺激に俺は果てた。
そしてゆっくりと陰茎を引き抜かれる。
俺はぐったりと四肢を寝台に預けた。汗で髪がこめかみに張り付いている気がする。緩慢に瞬きをすると、唇を重ねられる。

「ん」

最初は唇を舐められ、啄ばむようなキスをされた。それから深々と貪られ、舌を追い詰められて行く。それから舌を引き摺り出されて甘噛みされた。

「これからはもっと乱れろよ」
「離せ、離してくれ、もう嫌だ!」
「君主の寵愛を受けられるんだ、光栄だろ?」
「そんなのお断りだ!」
「そう言う割りには随分と気持ち良さそうだったけどな」

それはーー……だって俺はスピア様のことが好きなのだから……反応しても仕方が無い気がする。それに他に経験なんてないけど、スピア様は上手い気がする。免疫がない俺には、手に負えない。

「さて、帰るぞ」
「ああ。俺も帰る……」
「お前は今日から俺の宮殿に住むんだからな」
「……へ?」
「当然だろう、側妃の身の安全だって確保しないとならないからな」
「いいや結構だ、第一そんな話なかったことにーー」
「君主の命が不服だと?」
「っ、そ、それはあの、恐れ多い話ですが……」
「それでいい。俺にはきちんと従えよ」

それから後処理をされ、俺は力の入らない体を叱咤して無理やり立ち上がった。
そして帰った先はーー結局宮殿だった。