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1CのSHRは、中学からの持ち上がり組が全員のため、恙なく終了した。
良かった。
問題は――……
「今から……風紀委員室かぁ」
悪いことをした覚えは何もないが、気が重い。
教卓の上でトントンと資料を整理していると、井原先生がガラガラと勢いよく扉を開け入ってきた。
今日も白衣が似合っている生物教師である。
「さぁ! 狭山先生! いざ、萌えの聖地――じゃなくて風紀委員室へ!」
「はぁ……」
全く気が進まなかったが、井原先生に引っ張られる形で、俺は第三棟の最上階へと向かった。
通称向日葵館である。
此処には生徒会室と風紀委員室しかない。
二度ノックをし、緊張しながら俺は風紀委員室へと入った。
すると視線が集まってくる。
その生徒達は、全員キラキラしている容姿をしていて、正直目が痛かった。
どうしてこんな美形のるつぼに俺はいるんだろう。
「良かった、希望が通ったんですね」
風紀委員長の執務机から立ち上がった、切れ長の目をした風紀委員長に手を差し出された。
「2Sの永宮伊月です。風紀委員長をしています」
「よろしく永宮委員長。俺は――」
「知っています」
去年副担任をしていたので当然だろうなぁと思いながら頷いてみせる。
「こちらが副委員長の月見里透」
俺は頷いた。
月見里も、俺が副担任をしていたときの、1Sの生徒だからだ。
後はざっと風紀委員を紹介された。
まだ一年生の風紀委員は決まっていないため、二年生と三年生の残る生徒を紹介されたのである。
この学園は進学校なので、基本的に三年生は役職に就かないのだ。
その為、一年後半から二年前期までが任期となる。
俺は改めて、風紀委員長と副委員長を観察してみることにした。
風紀委員長は、黒い髪をお洒落に切りそろえていて、切れ長の瞳がどこか紫闇に見える。
副委員長は、地毛らしいうす茶色の髪をしていて、ネコ目だ。
どちらもキラキラしている。
人気投票で決まっただけあって、この二人にも親衛隊が出来そうなものだが、全ての生徒に公平であるために、風紀委員の生徒には親衛隊がいないのだそうだ。
風紀委員会の副顧問になったため、井原先生の親衛隊も解散して、現在はファンクラブになっているのだという。統率が取れている親衛隊よりも小さな、同志の集まりがファンクラブだ。教員も入ることが出来るらしい。まぁ俺は入らないけどさ。
そもそも親衛隊もファンクラブもない俺には関係ない。
というか、男同士の何が良いのか分からない。
「これからは毎週一度、月曜日に俺は来る。その時に何かあったら報告してくれ。それ以外の場合でも、放課後はあけておくから、困ったことがあればすぐに来てくれ」
「ありがとうございます、狭山先生」
委員長と事務的にそう会話をして、俺は何とかその場を乗り切った。