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昼食は学食で食べたいだとか言う編入生のどうでもいい話を聞きながら、俺たちは理事長室へとたどり着いた。
扉の外で、有里丘は待っているらしい。
だから俺が、園生を促した。
「なっちゃん会いたかったよぉ!!」
理事長が、扉が閉まった瞬間園生を抱きしめた。
「時雨さん、痛い」
「本当です、ある意味最悪に痛いです」
北斗さんのすごみのある視線で、理事長は我に返った様子だった。
「困ったことがあったら、狭山先生に相談するんだよ。狭山先生は風紀委員会の顧問もしているからね」
「わかった! ありがとうな、時雨さん!」
たまに親戚と会うとこんな感じなんだっけ、と思いながら、俺はその光景を見守っていた。
「くれぐれも菜摘をお願いするよ。狭山先生」
「承知しました」
そんなやりとりをして、俺は理事長室から出た。
それから扉の所で待機していた有里丘の前に立った。
編入生はまだ理事長室の中だ。
「悪い、俺一限から授業なんだが、中の話しが長引きそうなんだ。校舎案内を任せても良いか?」
「ええ」
そんなやりとりをしてから、俺は自分のクラスへと向かった。
編入生の本格的な授業への参加は明日からの予定なので、何も問題はない。
「よぉし、SHRをはじめるぞぉー。何かある奴いるかぁ?」
俺がいつもの通りに問いかけると、新聞部の長田が手を挙げた。
「編入生はいつ来るんですか?」
「ああ。もう広まってるのか。授業参加と自己紹介は明日だ」
「副会長とチューしてたって本当ですか?」
「なっ」
俺は思わず言葉に詰まった。
「そう言うのは、ほ、本人に聞け」
このようにしてSHRを終わらせ、俺は授業に入った。