翌日からが大変だった。
何の不幸か俺のクラスになってしまった、園生菜摘は、クラスを見事に三分割したのである。
@園生に落とされ惚れた生徒
A園生に愛しい人を奪われ殺気だった生徒
B園生には我かんせずの生徒
これまではそこそこ上手くクラス経営が出来ていたと思っていた俺だが、一瞬で自信を無くした。
所詮教師になって二年の俺には、何も出来ない。
そんな無力感もある。
溜息をつきながら、定例会のため風紀委員室の扉を開けた。
「あ、狭山先生」
すると副委員長の月見里が短く息を飲み込んだ。
「どういうことですか、あ? 狭山先生?」
その上、いっそすがすがしいほど機嫌の悪い風紀委員長の永宮に睨まれた。
「……ええと、確認書類」
無言で俺の机の前にバサバサと、永宮が書類を置く。
「あのマリモのせいで、器物破損に喧嘩、制裁が連日起こって仕事をさばききるので一杯一杯なんですよ、こっちは」
「そ、うか……」
確かに器物損壊の現場は俺も見ているし、すぐに手が出る性格なんだろうとも思った。
しかし最後が引っかかった。
「……制裁?」
「生徒会の連中が、全員あのマリモに惚れてるらしくて仕事をしないんです」
「は?」
素顔を知っている副会長が一目惚れをしたんなら兎も角、何故――?
確かに整った顔立ちをしていたし、真っ直ぐそうな性格の生徒であるし、授業中は寝ているが、制裁を受けるとは……。
「次々に1〜3Sの生徒を籠絡しているんです」
月見里の補足に、俺は眉をひそめた。
「どうやって?」
「知るか」
風紀委員長様はご機嫌斜めなご様子で、書類を捲っている。
「どちらにしろこのままじゃ学園は混迷を極める事は必死。先生も担任なら、どうにかして下さい」
そんなこんなで、俺は風紀委員長の冷たい瞳には逆らえず、園生のお目付役をすることになった。