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「なんだよ、サヤちゃん先生から、デェトのお誘い?」
職員室裏の非常口で、煙草をくわえ、携帯灰皿を手にしながら真澄先生にそう言われた。
「編入生が来てから、生徒会が大変なことになっていると聞きました」
「あー、菜摘な。あのモジャモジャ」
「仕事をしないと噂になっています」
「サヤ、お前、あの編入生に、生徒会に仕事しろって言うようにいっただろ?」
「まぁ……」
「それから真面目にやってるみたいだぞ」
煙を吐き出してからそう言った真澄先生は、空を見上げた。
「菜摘に構ってるのは相変わらずらしいけどな」
それは知っている。
何せ休み時間の度に、生徒会の誰かしらか、親衛隊持ちの生徒が、我がクラスにやってくるのだから。
「お前は、あの転校生の毒牙にかかってないのか?」
「毒牙って……園生君だって、編入したてで不安なんでしょうし」
「それを聴いて安心した。あんなモジャモジャにお前を持って行かれると思うと正直血管が切れそうだ」
「え――……っ」
気づくと俺の正面には、目を伏せた真澄先生の端正な顔があった。
!?
驚いて唇を開けると、舌を絡め取るように、貪られた。
呼吸困難になりそうで、肩を上下させていると、緩急をつけて口腔をなぶられる。
――上手い。
俺だって、昔いた彼女相手にはこういう濃厚なキスをしたことだってあるけれど、いざ口内をおかされると、吃驚だった。
っていうか、何で俺?
そのうちに膝が震え始めたので、俺は真澄先生の肩につかまった。
「いつもこうやって、生徒のことを誘ってると思ってる?」
「別にそんな風には――だけどこれは」
「何?」
「同意がなければしちゃ駄目なことだと思います。今後一切やめて下さい」
俺が乱れた息を整えながらそう言うと、虚を突かれたような顔を真澄先生がした。
それから喉で笑う。
「俺、本気になりそ」
なににだよ、と俺がげんなりしたのは内緒だ。