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「――それで、それで?」
俺は相談相手を激しく間違ったと思いながら、鼻血を吹いている井原先生を見た。
しかたがないではないか、学内で一番仲が良くて、同室なのだから。
「まぁ要するに、生徒会親衛隊の制裁をどうするかって事と、俺と先生のファンクラブ的なものをどうにかしたいって事です」
「いやそこじゃなくて、真澄先生との話kwsk」
「アレは犬に噛まれたようなもんです」
「ホスト教師×美人ノン気受け!!」
「誰が美人ですか。俺はノン気ですけど」
「美味しく食べられちゃってよサヤちゃん。で、経過報告よろしくね☆」
「ぶっとばしていいですか? いいですよね」
「嫌マジな話しすると俺の親衛隊って言うかファンクラブは統率取れてるから。やばいのは狭山先生の所だよ」
「今日まで俺に親衛隊があったなんて知りませんでした」
「まぁ生徒と違って許可制じゃないからねぇ」
「なんで井原先生の所は統率が取れてるんですか?」
「みんな腐男子だからさ」
「フダンシ……俺の所は、何男子の集まりですか?」
「んー、受け攻め――タチネコ半々って所だね」
「何でこんな一般庶民の俺にそんなものが……」
「この学園進学は成績一択だけど、人気は顔が物を言うしねぇ」
「俺みたいな平凡……」
「無自覚美人受けktkr」
「何語ですか」
「御免御免ちょっと跳んでた」
「どうしたらいいと思いますか」
「え、俺の案で良いの?」
「全く俺には思いつかないんで、何かあるんなら是非」
「まず明日の昼休み、放送部行って、『俺のファンは全員参加! ファンクラブ放課後会議を行う! 第三体育館集合』って宣言しようか」
「……俺のファンなんているんでしょうか。しかも第三体育館って講堂の次に広いのに」
「いる。確実にいる。で、そこで放課後、こう宣言をする『俺は好きな奴がいるから、編入生に堕ちることはない。ただし担任として、風紀委員会の顧問として、現状は見過ごせない。編入生は友達が作りたくて迷走している。皆、見守ってやってくれ。以上! ただし制裁行為は禁止だ。破った奴は、風紀委員顧問として見過ごさない!』と言う。付け加えるなら、『少しでも俺のことを思ってくれる奴がいるんなら、頼む』だ!」
「ちょっと待って、今メモ取ってるから」
このようにして、俺は明日、放送室ジャックをすることに決まった。