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「よし、言い切った」
俺は井原先生から教えて貰った通りのことを言い終え、第三体育館の壇上から降りた。
何故なのか、俺相手なのに黄色い悲鳴が聞こえてくる。
こいつら、誰でも良いんだなぁと思ったのは内緒である。
俺が控え室に戻ると、一人の生徒が麦茶とぬれタオルをくれた。
「悪いな」
額の汗をぬぐってから顔を見ると、去年副担任をしていたクラスの佐々波朱雀だった。
いわゆるチワワ的な外見をしている。
「じ、実は僕、去年は、先生だから非公式的に作っていたんですが、狭山先生の旧親衛隊隊長で、現ファンクラブ代表です」
思わず麦茶を吹き出しそうになった。
本当にいたのか、俺の親衛隊!
「先生のお気持ちが聴けて、その上僕らのことを知っていただけていたことが嬉しくて、何を言ったらいいのか――」
「嫌、俺の方こそ……」
佐々波は、確か抱きたいランキング上位で、本人にも親衛隊があったはずだ。
それが、何で俺の?
そんな疑問はつきなかったが、ここでのやりとりで、園生菜摘への制裁が減るのであれば好都合だと思った。
「佐々波」
「なんでしょうか?」
「此処だけの話し、おまえに頼みがあるんだ」
すると頬を朱く染めて、コクリと美少年が頷いた。
「編入生への制裁行為は、俺のファンもしているって噂が立ってる、事実かは分からないし、お前らのことを疑いたくはない。だから、出来ることなら、編入生と仲良くしてやってもらえないか?」
「先生のご命令と在れば」
「命令じゃないよ、ただのお願い。お前がお茶を持ってきてくれたり気がきく生徒だから、だからこそ頼むんだ」
真っ赤になった佐々波は、何度も頷くと、控え室を出て行った。
これで何とかなればいいなぁと俺は思った。