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「制裁行為は減ったが、今度は強姦被害が酷い」
不機嫌そうな風紀委員長に呼び出され、俺は頭痛を覚えた。
「永宮、それは俺のせいじゃないだろ」
「……どうだろうな、あの編入生がカツラと眼鏡を取ったのは、お前の演説の後だ。しかもお前の授業の時だけだぞ」
「見た目なんてピアス開けたり髪色染めたり、色々だろ」
「これだから無自覚は」
今、風紀委員室には、俺と永宮しかいない。
永宮は、唐突に俺のネクタイを引くと、唇を重ねてきた。
ポカンとした俺が小さく口を開くと、口腔を蹂躙された。
「……風紀を乱すな、風紀委員長」
そう言ったのは、精一杯の強がりだった。
「だったら隙を見せるな風紀委員顧問」
「大人をからかうな」
「からかう? どうして俺が、風紀委員会が、顧問をお前に指名したと思ってるんだ」
いつもの敬語がなくなっている。
ゾクリと背筋を危険信号が駆け上ってきた気がした。
「好きだ」
「え?」
「回答は待たない」
「嫌、そこは待とうよ」
なんだこれ、どういう状況だ、と思ったが、俺は慌てて風紀委員室を出て、自分の寮へと戻ることにした。
「風紀委員長×顧問萌え――!!」
そしてやはり、相談する相手を間違えた。
俺ってば、学習力能力がなさ過ぎる。
井原先生は、ティッシュで鼻を押さえながらこっちをガン見してくる。
「で、サヤちゃん先生は、どうするの? ホスト系真澄ちゃんと、王道編入生と、永宮風紀委員長」
「どうって……俺、ヘテロだし」
「でもキスして嫌じゃなかったんでしょ?」
「嫌も何も混乱しててそれどころじゃなかった」
「なるほどなるほど、皆まで言わせるな、体と心がついて行かなかった訳ね」
「そういうわけじゃ」
「そういうことなの」
よく分からなかったが俺はその日、ホスト教師と王道と風紀委員長がいかに萌えるかについて語られたのだった。