3――SIDE海






山辺コーポレーションは、情報技術で最先端を行く大企業だ。
双子の兄に生まれた僕、山辺海は、小さい頃から跡取りとして、プログラミングやネットワークの知識を叩き込まれて育った。
半ば趣味になりつつあったそれらを生かして、学内のデータベースに侵入したりを繰り返す内に、いつしか僕は、”情報屋”になっていた。
誰にも正体は告げず、知る人ぞ知る情報屋になった。
誰もが知る情報屋も二人いる。
一人は、六十階建ての寮監を務めている相良彼方。
どちらかと言えば、単なる噂好きなのかも知れない女装癖のあるオカマだ。
カナちゃんと呼ばないと怒られる。
それで身長が190cmもあるのだから、女装も似合っていない。
もう一人は、報道委員会の写真担当の白瀬幸哉だ。
僕を知っているのは、この二人だけだろう。
だからといって僕は、彼らとなれ合うつもりは微塵もない。
あの二人でも、僕の通り名である”泡沫”という名と存在しか知らないはずだ。
知ること、知識欲を深めることが、僕にとっての何よりも大切な事柄。
だから隙あらば外へと出かけている陸の動向にも構わず、僕は学内のことだけを、いつも誰よりも知っていたかった。